数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!
歌子の部屋
vol.24
対談企画 ゲスト:小塚崇彦さん
高度なスケーティングスキルでジュニア時代より活躍し、2016年に現役引退された小塚崇彦さんにお話を伺いました。
世界屈指のスケーティング技術

歌私は崇ちゃんが現役時代いつも、なんであんなに上手なスケーティングが出来るのかなと感心していました。他の人と違うエッジをつけているんじゃないかと思うくらい(笑)。その技術はどこでどう培ったと思いますか?
小(佐藤)信夫先生に教えてもらったこともたくさんありますが、最初は父のスケーティングを真似していたことですかね。そこが一番大きいと思います。
歌幼いころから身近で見てこられたんですものね。
小そうですね。あとは滑っているときの感覚を僕はすごく大事にしてきました。自分の中でいつも言っているのですが「一歩抜ける」という感覚があるんです。シューっと抜けるように滑っている感覚なのですが、その感覚になるまで滑ると、あーこれだって感じになるんですよね。
歌その感覚が、スケートの理想なのかもしれませんね。それができる人は中々いませんけれど…。
小それと信夫先生に言われたのが、トゥに引っかからないように意識するということですね。「トゥに引っかかるということは、車でいうとアクセルを踏みながらサイドブレーキを引いているようなものだよ。」と教えていただきました。だからスケーティングの時もターンの時もなるべくトゥに引っかからないように気を付けてきました。
最近は色々なところでスケート教室をさせていただいていまして、そこで子供たちに言っているのは、なるべく足の指を力まないようにするということですね。指先に力が入ってしまうとどうしてもトゥに引っかかってしまうんです。ですので、靴の中の指の状態を具体的に教えています。
歌私もコンパルソリーをしていたのでよく分かります。それにしても崇ちゃんのスケートは、まったくストレスがない滑りですよね。例えばターンの時に、スピードがある中でトップの選手たちであっても、どうしても横滑りしてしまうのに、まったくそれがない。これができるのは崇ちゃんとパトリック(・チャン)くらいしか知りません。
小ありがとうございます。ターンはちゃんと意識してやっていましたね。周りの方に上手だと言われることで、逆にちゃんとやらないといけないという意識になりました。
歌そうだったんですね!
小はい。今思えば良いことだったと思いますが、実はプレッシャーに感じていました。
歌試合の時に、一番意識していたのはどんなところですか?
小自分がよく滑れているかどうかというところですね。よく滑れていると自分の体と氷が一体化しているような感覚になるんです。小さいころは母が試合によく付いてきてくれていたのですが、母に自分がよく滑れていたかを毎回確認していました。母が「よく滑れていたよ。」という時は、実際に良い結果が出ていました。
歌お母様がよく滑れているか滑れていないかを基準に見ていたことは、すごく重要なことだったんですね。
小母にはよくアドバイスをもらいました。例えば緊張などでよく滑れていない時は「もっと思い切って滑ってみたら。」と言われたりしましたし、すごく力になりましたね。よく滑れている時は振り切っているというか、気持ち的にも萎縮せずにやれている時なんですよ。
歌私の場合も、大輔に対してジャンプをミスしたことで怒ったことがないんです。自分のフルパワーでミスをしたらしょうがないというのがありましたし、それよりも滑りきらないというか、中途半端な滑りしかできなかった時には注意をしましたね。
小そうですよね。自分がちゃんとやらないで終わってしまったら、どうしても後悔が残りますし、飛び越えて失敗したらある意味スッキリしますよね。ゴルフのパターと一緒です。カップまでの距離が足りない場合は絶対に入らないけれど、しっかり打ってカップを越える分には入る可能性がありますから。
歌わかりやすい表現ですね(笑)。さすが!
ゴルフにはまっていらっしゃるんですよね(笑)この前、大輔をゴルフに誘ったと聞きました。大輔は普段ゴルフをやらないのですが…。
小そうなんですよ!この前一緒に行ってきました。カルロス(・アビラ・デ・ボルバ トレーナー)と大ちゃんと昔一緒に行った時以来です。
歌カルロス!ポルトガルでのトレーニングの思い出もありますよね。
小アゾレス諸島ですね!アメリカ大陸からもヨーロッパからも同じくらいの距離にある島です。
歌あの時、階段の上り下りだとか、砂浜を走ったり、重いボールを持って腹筋したりのサーキットトレーニングをしましたよね。そこで崇ちゃんの持久系の体力は本当にすごいと思いました!他のことは、一年早く始めていた大輔が一番強かったのですが、持久走は全くついていけてなかったですから。
小体力だけは自信がありましたね。気合でむりやり押し通すというか…。筋肉量的には大ちゃんの方が断然あるのですが、持久力的なところは昔からありましたね。
歌そうですよね。いくらトレーニングしても全然疲れてないんじゃないかって思いましたよ!
小実は疲れていたんですが、でも気合でした!意外とむちゃくちゃが利く方なので…(笑)。
歌むちゃくちゃが利いてもあんなには走れないですよ!
- 長光歌子(ながみつ うたこ)