F1 スーパースター列伝Vol.2
文・山口正己

ボクシングでは、クリンチしている間にレバーブローを打つのが常套手段だ。誰も汚いとは言わない。テニスでは相手がいないコートに向かってボールを打ち返そうとする。それを誰もズルイとは言わない。日本の武士道からみたらセコイ手であっても、勝つための手段として、時にはそうした"技"が先手必勝になる。アロンソは、そう解釈し、もっと早くタイムを出せなかった自分に対して、言い訳をさせなかった。それが悔しかったのだ。

スペインは闘牛の国として知られる。マタドールは牛に背中を見せない。勇猛果敢に立ち向かってこそマタドールだ。アロンソにはその血が流れている。
スペインGPは、アロンソのお陰でいまや大入り満員だ。しかし、数年前まで2輪の人気は絶大だったが、F1GPがヘレスで行なわれていた1990年までは、F1GPの観客席には閑古鳥が鳴いていた。スタンドの客着数より、パドックの人数の方が多いのではないか、というジョークが飛ぶほどだった。
しかし、1990年第中盤から、スペインが経済的に豊かになるのに並行してF1人気が上昇した。今年は国王もスペインGPの会場に顔を出した。そもそも、マクラーレンが用意した2人乗りのF1"マクラーレン・タクシー"にも乗っている。今やF1は、もうひとつの闘牛のように、スペインに定着している。

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