F1 スーパースター列伝Vol.1
文・山口正己
さて、シューマッハのミスは枚挙に暇がない。実は、成功した数の方がたまたま失敗より多いというだけの話だが、チャレンジングな人物に失敗は付き物なのだ。例えば1998年11月に鈴鹿サーキットで行なわれた日本GPは、タイトルのかかった大事なレースだった。
ポールポジションを奪ったシューマッハは、スターティンググリッドに向かうフォーメーションラップをいつもよりハイペースで走っていた。ポイントを激しく争うマクラーレンのミカ・ハッキネンは予選2位。そのハッキネンをけん制しようとしたのかもしれないが、はやる気持ちを抑えきれないようにも見えた。
しかし、あまりに早くグリッドに着きすぎた。逆にゆっくりとグリッドに着くハッキネン。シューマッハは基本的なことをすっかり忘れていたのだ。
F1マシンは泳いでいないと呼吸ができないマグロと同じなのだ。つまり、走ってラジエターに空気を当てていないとオーバーヒートしてしまう。シューマッハのフェラーリはグリッドで白煙を吹き上げていた。初歩的というにはあまりに初歩的なミスだった。
新しいところでは、今年のモナコで、予選中にスピンして、結果としてアロンソのアタックを阻害し、そのカドで予選タイム剥奪の処罰を受けている。そこまでして勝ちたいのか、という声も聞こえた。そのとおりだ。シューマッハはそこまでしても勝ちたいのだ。だから、何でもやる。
1997年には、やはりタイトルを争っていたジャック・ヴィルヌーブと接触、故意の行為だったと判定され、シリーズ順位を剥奪されている。
[前へ|次へ]
△もどる
□スポーツTOP
0.フジテレビTOP
(C)フジテレビジョン