・76年モントリオール五輪を経験している知将は、難しい闘い方を強いられるこのシリーズに、いったい何を求めているのだろうか。勝利に優る経験か。新しい武器の発見か。それとも、個々の選手たちの新たな役割でも探そうというのか。今から28年前、最後まで猫田勝敏の控えセッターだった男が、軽く流すように言う。「このチームはまだ1年半足らずしかたってないんやけど、いままでの全日本とはちがうチームになるでしょう。アテネだけでなく、その先まで誇りをもって臨める世界レベルのチームになると思ってますから。とにかく肝心なのは、技術云々よりも“人間力”ですよ。僕だってそうだった。24〜25歳で何度も日本一になってたのに、猫田さんにはずっと勝てなかった。セッターというポジションは“人間力”や“信頼”がモノをいうからです。今はアテネの準備段階なので、勝敗はともかく、将来性を考えた熱のあるバレーを展開していきたいと思ってます。まぁ、見ててくださいよ」体育館にキュッ、キュッという摩擦音が響く。練習前に必ず行なうランニングの先頭は、常に吉原知子のポジションだ。チームの精神的支柱である彼女の存在なくしては、「自主性」を前面に出そうとしてきた柳本の指導は挫折していたかもしれない。
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