前サッカー日本代表監督 フィリップ・トルシエ(後編)
インタビュー・文/李春成

[Q]スウェーデン戦(02年5月25日。1-1でドロー)の前に最終メンバーから外した久保竜彦についてはいかがですか。

[A]久保は私が大好きな選手でしたねぇ。フィジカルも優れていたし、日本のどのフォワードよりもヘディングが巧かった。私はそんな彼に大きな期待を寄せていたんですが、ひとつだけ問題がありました。
ご存知のように、私がW杯で主に起用した選手は、ユースとオリンピックを通じて育った選手であって、久保に関しては、そこに当てはまらない世代の選手だったんですね。当時、彼といつも話していたことは、私のシステムの根本はコミュニケーションにあるということでした。試合中にも練習中にも大きな声を出し、ほかの選手と声をかけ合ってボールを積極的に要求するということです。
ところが彼は、コミュニケーション不足という問題を抱えていました。それは彼の性格だから、仕方ありません。それでも久保には、もっと外に対して何かをアピールしていってほしかった。そんな私の要求に対して、彼が最後まで応えることができなかったのが残念でした。
ただ今の彼は、大人としてすごく成長したと思いますよね。先日もたまたまテレビのインタビューに答えているシーンを観たんですが、私が指揮をとっていた時代には一言か二言ぐらいしか答えることができなかった彼が、そのとき指折り数えたら、言葉が4つぐらいあったんですよ(笑)。
冗談はともかく、久保はジーコジャパンにとって、とても大切な武器だと思いますよ。ほかの選手にはない、天性の、ナチュラルな才能をもっています。ですから相手にとっては、彼の次のプレーが非常に予測しにくいんじゃないでしょうか。

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