前サッカー日本代表監督 フィリップ・トルシエ(前編)
インタビュー・文/李春成
[Q]日本は「決定力不足」と言われ続けていますが、もうひとつ弱点を挙げるとすれば、両サイドのスペシャリストが枯渇しています。あなたが日本代表監督だったときも、この問題には相当苦労されたのではないですか。
[A]これについては、以前から考える私の持論があります。1対1の局面になったとき、ロナウジーニョのように格の差を見せつけることのできる選手は、現代サッカーにはそうそういないということです。たとえばウィングの選手でも、常にひとりで突破できるような選手はほとんどいません。
でもモダンサッカーは特定の個人に任せるのではなく、洗練されたシステマティックな組織で点を奪います。だからストライカーやフォワードが点をとるというステレオタイプな考え方は、もう時代遅れだと私は思うんですね。このことについては私が代表監督時代、日本のメディアに何度も繰り返して説明してきたことなんですけど、なかなか理解してもらえませんでした。
最近のサッカーを観ても、たとえばセットプレーから点をとるとき、まずは組織がベースとなっています。フォワードはたまたま一番前にいるだけであって、中盤の選手が点をとっても、1点は1点なんです。ピッチに立つすべての選手が機能的に動くことにより、ポジションをズラしてできたスペースにウィンガーが飛び込む。それはウィンガーひとりの努力ではなく、チームがスペースを作ってくれたから飛び込めるわけです。
ただ、あえて選手個人について踏み込めば、中山(雅史)……、ゴンのようなオーラをもった選手が現在の代表にいないのは、非常に残念ですね。彼は存在感だけで、チームになんらかのプラスアルファをもたらすことのできる数少ない日本人プレーヤーです。その意味で私は高原(直泰)にも期待していたんですけど、ケガの問題を抱えていました。それが原因で前回大会の最終メンバーから外れてしまいましたが、彼はフォワードとして本当に凄い才能をもってました。トップクラスと呼ぶにふさわしいストライカーになれると、私は今でもそう思っています。
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