前サッカー日本代表監督 フィリップ・トルシエ(前編)
インタビュー・文/李春成
[Q]現在ヨーロッパで主流となっているのは4-3-3システムです。長身のセンターフォワードは、昔とは比べものにならないぐらい足もとが巧くなっています。そして、彼の両脇にシャドーストライカーを二人置くという、非常に攻撃的なシステムが最新モードになっています。今回のワールドカップに、そうした傾向が反映されると思いますか。
[A]たしかに今のサッカーの最先端は4-3-3システムです。あなたが指摘する通り、長身フォワードの隣にシャドーストライカーやスピードのある選手を並べ、アタッキング・フェイズ(=攻撃状態)に入ったとたん、多いときには4人の選手がゴールへ向かって一気に攻め上がる。
ただ戦術的な発達が現在の4-3-3システムを生んだのではなく、それは選手たちが急激な進化を遂げた結果だと思います。ディフェンダーもミッドフィルダーも、彼らのもっている技術はかつてとは比較できないほど素晴らしく、またフィジカル的にも格段に強くなっています。その結果、さらにスピーディに、そしてより長い時間攻め続けることができるようになっています。
つまり、現在の4-3-3システムは人間の成長が生んだ産物なんですね。個々の力が飛躍的に上がったことで、超攻撃的なサッカーができるようになったわけです。しかも最近のヨーロッパでは、弱小国とか弱小チームがほとんど存在しない。"強豪ではない"とされる代表チームでも、すべての選手が他国の高いレベルのリーグでプレーしているため、どの選手も1試合を通じて高いパフォーマンスのサッカーができるようになっているんです。
昔は得点チャンス4〜6回で1点が入るという統計がありましたが、最近の分析では、それが3回で1点にまでハネ上がっています。得点チャンスに対するゴール率のパーセンテージを上げたのは、選手個々の精度が上がった結果でしょう。
[前へ|次へ]
△もどる
□スポーツTOP
0.フジテレビTOP
(C)フジテレビジョン