前サッカー日本代表監督 フィリップ・トルシエ(前編)
インタビュー・文/李春成
だが、ドイツへ向けて邁進する神様のチームの基盤を築いたのは、紛れもなくこの男だ。当初の契約にはなかったU-20日本代表監督を兼任し、'00年のシドニー五輪でもタクトを振った。ホスト国は地区予選が免除される。そのおかげで得た4年間という時間を、彼は日本サッカー底上げのために心血を注いできた。物事とは、有効な「過程」があってこそ、良質な「結果」を伴うものだ。4年前の若い世代に「組織」を叩き込んだからこそ、次の監督は「自由」を選手たちに求めることができるのだ。
日韓共催W杯の翌年の夏には、カタール代表の監督に就任し、日本で残した手法と同じように若い世代の発掘に腐心した。'04年11月にはリーグ・アン(フランス1部リーグ)のマルセイユを率いたが、「UEFA杯」の出場権を逃し、半年で解任されてしまう。その後はナイジェリア代表、モロッコ代表と、各国トップチームの指揮官を経験しながら、現在に至っている。世界を渡り歩いてきたことによって得た豊富な経験と知識は、『ジャンクSPORTS』でもさっそく披露されている。
だが、記者たちは、そんなフランス人から、どうしてもW杯について聞きたい。「優勝予想を教えてください」という質問が、間髪入れずに飛んできた。
「ほかの代表監督たちから話を聞くと、やはり"ブラジルが頭ひとつ抜けてる"という答えが返ってきますね。先日のイタリア戦で負けてしまい、クリンスマン監督に対する批判が高まってますが、ホスト国のドイツにも優勝のチャンスはおおいにあるでしょう。私は昨年11月のフランスとドイツの親善試合を観戦してるんですが、ドイツが素晴らしいパフォーマンスを見せています。本番までまだ時間があるので、ちょうどいいタイミングで仕上げてくるんじゃないかと睨んでいます。この2ヶ国の対抗馬を挙げるとすれば、チェコだと思います。最近のチェコには勢いがあるし、彼らがグループ予選を突破した場合、決勝トーナメントで当たるだろうと思われる顔ぶれを見ても、チェコには充分、勝機があると思います。そしてもうひとつ驚かせる存在となりそうなのが、アメリカでしょうね」
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