前サッカー日本代表監督 フィリップ・トルシエ(前編)
インタビュー・文/李春成
「今の代表のおよそ80%が、私が代表監督時代に育てた世代で、私と共に4年間一緒に闘ってきた戦友たちです。当時の平均年齢は22〜24歳でしたが、今はさらに成長して、多くの経験と実績を積んできています。たとえば4年前の代表には、海外でプレーする選手がわずかふたりしかいませんでした。ところが、今の代表には約5倍の10人ほどいます。フットボーラーとしてピークに達した者も多く、そんな彼らが一致団結すれば、日本のグループリーグ突破の可能性は充分にあるでしょうね。だけどサッカーというゲームは、1+1=3になることがしばしばあります。理論的な裏づけができたとしても、理論的な結果が出るとはかぎりません。日本は間違いなくダークホースだと思いますが、あいにく私はクジ運が悪くてねぇ。外してばかりいるんですよ」
一斉に爆笑する記者たちに、彼は茶目っ気たっぷりの笑顔を見せるのだった。
パリっ子の彼がプロサッカー選手となったのは、21歳のときだった。現・日本代表監督のジーコとは違い、華やかなキャリアを残したわけではない。だが、ロサンゼルス五輪が開催された84年から指導者の道を歩み始め、その4年後に南アフリカ代表の監督に就任した。「白い呪術師」とも呼ばれた彼が日本サッカー協会からのオファーを受けたのは、その後のことである。ジーコのような「スーパースター」として迎え入れられたのではなく、コーチングの腕を買われての就任だ。「赤鬼」と「神様」、このふたりの代表監督は、まったく異なるスタート地点からチームを作り始めたわけである。
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