Y:古田さんは球界の知恵袋みたいな人ですけど、その能力のひとつに投手陣を育てることが上手いということが挙げられると思います。若手を育て、中堅を再生させる。どんな術を使っているんですか。
F:術?術と言うほどのものじゃないですけど、相手に対する興味ですかね。自分の受けた感想や見た感想、あるいは僕はバッターでもあるので、練習中にバッターボックスに立った時に感じたことなどは、本人達にしっかり伝えるようにはしていますよ。一番困るのは、自分は速球勝負の本格派だと信じ込んでいるやつ。確かに高校レベルでは速球勝負で三振も取れたかもしれないけど、プロの世界では打ち返されるんです。でも、速球で三振を取る快感を忘れられなくて、それを軸に頑張りたいという投手は意外と多い。もちろん、即戦力といわれて入団してくる投手もいるけど、そんな選手でもさらにワンランク、ツーランク上を目指していかないとプロの世界では通用しないんです。実は、そういう選手ほどバッターにとっては美味しいんですよ。プロにとっては大した球でもないのに、本人は自信満々に投げてくるから打者は配球が読みやすいし、打ちやすい。一発勝負だったら取り敢えず、自分の持てる能力をすべて出して勝つというのもあるかもしれないけど、年間140試合の中で何度も対戦するじゃないですか。2順目からは餌食になりやすい。だから、選手の伸びしろの部分を間違わないようにアドバイスしてあげることが大切になってくる。140kmを投げていた人が145km、150kmを目指す方法もあるけど、140kmでアバウトなコントロールだったものがさらに細かいコントロールをできるようになるとか、あまり試したことのない変化球を操れるようになるとか、方法はいくらでもある。基本的には打者の狙い球を外すことじゃないですかね。打者がこんなことを考えているだろうから違う球でいくというような。結局、長く生き残れる投手は、自分の中に作戦というか奥義みたいなものを持っている人なんです。
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