YOSHII:で、監督も辞め、新日鉄も退職したんですね。何も無くなって見えてきたものは?
YOSHIDA:まずは、自分の人生にけじめをつけたかったんです。これまでの肩書きをすべて捨て、そこからまたスタートだと。でも、辞めてしまった後、突きつけられた現実に愕然としました。実業団に属していない限りは試合にエントリーも出来ない。しかもプロ活動をしている場合は、今の規定で柔道選手として認められないんです。今や、野球やサッカー選手が、僕らには信じられないような年棒でプレイしているのに、僕らは世界チャンピオンになっても経済活動は出来ないんですから。だから、柔道選手が現役を引退すると、選択肢はすごく限られたものになってしまう。僕らは小さい頃から、時間の大半を柔道に費やし、お金をつぎ込んで、身体を犠牲にして、エネルギーのほとんどを競技にかけてきた。でも、トップアスリートになった時にふと「これが終わってしまったら何が残るのだろう」と考える。あるいはトップアスリートにならなくとも、その競技に人生のすべてを注ぎ込んできた人は、現役を終わると何も残らないのが、柔道界を含めた日本アマチュアスポーツ界の現状じゃないですか。それではあまりにも淋しいし、僕らが掴んだ経験、知恵、知識を社会に何も還元できなくなる。
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