「大成洞」(テソンドン)はまさに朝鮮半島の「縮図」に他ならない。村は朝鮮戦争では最大の激戦地となった。そして休戦後は対北朝鮮の「宣伝村」として、村人には誰もが羨むような高収入を保証された。だが、その代償として支払ったものも大きかった。

北朝鮮兵士による村人の拉致。
密かに作られた地下トンネルを通じて侵入する特殊部隊による数々のテロ。
北の宣伝村からも流される、大音量で互いの優位性を連呼する「宣伝放送」。
いまだ多く残る地雷原と、夜間外出禁止などの厳しい生活規制。

取材で次々と明らかにされるテソンドンの隠された歴史。長老格の村人はこういった。
「ある時、北朝鮮の若者が境界線を越えて村に逃げ込んできた。まもなく北朝鮮の兵士たちが、若者を追って村に侵入、家探しを始めた。村にはその若者を匿うところもなく、やがて公民館に隠れていた青年は捕らえられ連行されていった。その途中…私はこの眼で見ていたんだが…北の兵士が「裏切り者」と叫びながら、ナイフで若者の腹や背中を何度も刺していたんだ」

生々しい証言の数々…しかし、衝撃を感じたのは我々だけではなかった。この村の出身者であるはずのミンジもまた強いショックを隠せないでいた。
彼女は、この村が負ったそんな「宿命」と、これまで向き合うことなく生きてきたのだ。

[前へ|次へ]

もどる

(C)フジテレビジョン