不毛地帯
- 第一話 -
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そんな折、壹岐のもとに、秋津千里(小雪)という女性から手紙が届く。千里は、大陸鉄道司令官だった秋津紀武(中村敦夫)の娘だった。壹岐と秋津は、シベリア抑留中に、ソ連側の証人として東京裁判に出廷させられようとしていた。ソ連側は、壹岐や秋津に、天皇に戦争責任があったと証言させようとしたのだ。だが秋津は、それを断固拒否し、裁判の前夜、自ら命を断っていた。
壹岐は、父の話が聞きたいという千里の願いを受け、彼女が住む京都を訪れる。千里は、父が大事にしていた青磁の香炉にみせられ、陶芸の道に進んだのだという。そこで壹岐は、千里の兄・清輝(佐々木蔵之介)が、ルソン島で多くの部下を死なせてしまった責任に苦しみ、仏門に入って厳しい修行を続けていると知って衝撃を受ける。

そのころ、国内の有力商社各社は、防衛庁の第2次防FX=次期主力戦闘機の受注をめぐって水面下で激しい戦いを繰り広げていた。航空機部を置く近畿商事東京支社の支社長・里井達也(岸部一徳)は、劣勢を跳ね返すための切り札として、川又ら防衛庁の空幕中枢部と強いパイプを持つ壹岐が必要だと大門に進言する。

大門に同行し、東京支社を見学した壹岐は、その晩、谷川の自宅を訪ねる。壹岐正同様、生きて日本に戻ることができた谷川は、シベリアからの帰還者を支えるための組織を作り、就職の世話や、遺骨、遺品等を遺族に届ける活動に残りの人生をささげようと決意していた。

あくる日、東京支社の鉄鋼部を訪れた壹岐は、そこで兵頭信一良(竹野内豊)と出会う。兵頭は、陸軍士官学校の出身だった。その晩、兵頭は、壹岐をクラブ『ル・ボア』に連れていく。近畿商事でやりたい仕事を実現させるためには壹岐が必要だった、と喜ぶ兵頭。兵頭は、その計画が何であるかは口にしなかったが、それは会社にとって、そして日本の将来にとって必要なことだと壹岐に告げる。そこにやってきたのは、『ル・ボア』経営者の娘で、ピアノを弾きながら歌を歌っていた浜中紅子(天海祐希)だ。紅子は、生真面目な壹岐に何故か興味を持ったようすだった。

大阪に戻った壹岐は、大門から、アメリカ出張に同行するよう命じられる。新体制を整えたアメリカ近畿商事のお披露目パーティーがあるのだという。慣れない商社の仕事に戸惑っていた壹岐は、英語が得意ではないということもあってその話を断ろうとした。すると大門は、敗戦の原因は、壹岐たちのような作戦参謀が敵であるアメリカを知らなかったことだと言い放ち、経済戦争においてアメリカは最大の敵にも味方にもなる、と続けて壹岐を黙らせた。

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