不毛地帯
- 第一話 -
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陸軍士官学校を首席で卒業し、第二次大戦中は軍の最高統帥機関である大本営の参謀として作戦立案にあたっていた壹岐正(唐沢寿明)は、終戦を受け入れず、日ソ中立条約を破って侵攻してきたソ連軍に対する徹底抗戦を主張する関東軍を説得するため、停戦命令書を携えて満州に向かった。
そこで、関東軍の幕僚・谷川正治(橋爪功)らとともにソ連軍に拘束された壹岐は、戦犯としてソ連の軍事裁判にかけられ、強制労働25年の刑を宣告されると、一度送られたら二度と生きて帰ることはできないといわれたシベリア極北の流刑地ラゾに送られてしまう。

生死の境をさまよう過酷な強制労働を11年もの長きに渡って耐え抜いた壹岐は、昭和31年に帰国する。それからの2年間、壹岐は、強制労働によってむしばまれた体の回復と、シベリアから一緒に帰国した部下たちの就職の世話に専念した。その間は、妻の佳子(和久井映見)が大阪府庁民生課で働きながら家計を支えていた。

そんなある日、壹岐のもとに、士官学校時代からの親友で、防衛庁の空将補である川又伊佐雄(柳葉敏郎)がやってくる。川又は、この国を守るために一緒に働いてほしい、と壹岐を防衛庁に誘った。しかし壹岐は、自らが関わった作戦により、多くの兵士や民間人を死なせてしまった責任から、もう国防に関わる資格はない、と答えて川又の誘いを断った。

壹岐は、部下たちの就職が片付いたのを機に、かねてから誘われていた近畿商事への就職を決意する。近畿商事は繊維を中心に扱う商社だが、経済の発展を見越して、重工業化・国際化を推進しようとしていた。社長の大門一三(原田芳雄)に会った壹岐は、軍人時代のコネや肩書きを一切利用しないことを条件に、近畿商事に入社し、社長室嘱託として繊維部で働き始める。それを知った壹岐の長女・直子(多部未華子)は大喜びだった。母・佳子の苦労する姿をずっと見続けてきた直子は、二度と戦争には関わらないでほしいと願い、壹岐が防衛庁で働くことにも強く反対していたのだ。

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