「前から語学の勉強をしたいと思ってて、急なんだけど、2月の末に行くことになったの」
言葉に詰まった。まさか急にそんな展開になるなんて、三日前の夢のお告げにもなかったからだ。
「ほんとに。ちょっとびっくりしたよ。でも、よかったじゃない」
かたつむりのように閉じてしまいそうな口からやっとのことで押し出してみた台詞はこれが限界だった。
側を行き交う幸せがこぼれ落ちそうなカップルたちにまぎれ、半放心状態でA子を送っていた僕は、残り少ない時間を大切にしなきゃいけないということになんとか気がついた。
「もう少しだけ時間いいかな」
「うん、まだすこしなら大丈夫だよ」
僕らは「バレンタイン&ホワイトデーキャンペーンSweet Lover's Days 2005」を開催している『東京ジョイポリス』へ足を向けた。ハートをモチーフにした館内装飾が、訪れるカップルを迎えていた。3Fから4Fへと昇るエスカレータには華麗な装飾が施され、恋人たちのモニュメント『Lover's Heart』に変身を遂げていた。
「きれーい」
「すごいね。室内なのに外にいるみたいだね」
イルミネーションを立体フレームにして記念撮影しているカップルもたくさんいた。それから僕らは人気のアイスクリームショップ『ディッピンドッツアイスクリーム』に差し掛かる。
「あれ食べてみない?」
「おいしそう」
バレンタインからホワイトデーまでの期間限定で、『ショコラローズ』というフレーバーが登場していたのだ。チョコとストロベリーがブレンドされ、絶妙にスイートな味わい。
「おいしー」
「・・・ごめんね。急に留学するなんて言って」
「ううん、いいよ。どんなに長くても僕は待ってるよ」
「・・・ありがとう」
東京ジョイポリスを出た僕らはゆりかもめに揺られ、ちょっぴりビターなお台場のバレンタインデートを終えた。
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