三谷幸喜

今回の「アクロイド殺し」を原作に選ばれた理由を教えて下さい。
『オリエント急行殺人事件』が放送された直後から、また勝呂武尊が主人公でクリスティ原作をやるのであれば、『アクロイド殺し』を題材にしたいと思っていました。その理由は、普通のミステリーでは、犯人が分かった瞬間に、それ以外の人物への興味が薄れてしまいがちなんですが、脚本家としては、犯人以外の人物にもきちんと人生やドラマがあって、意味のある登場人物でなければいけない。『オリエント急行殺人事件』もそうでしたが、『アクロイド殺し』も登場人物全員にもきちんとした物語があるので、脚本家の“書きたい”という思いをかき立てる作品だと思ったからです。
原作とドラマの違いはありますか?
「学生の頃からアガサ・クリスティーが大好きで、自分が脚本家としてクリスティの原作を手がけることになるとは、本当に幸せな機会をいただいたと思っています。今回、原作を脚本家として読み直したときに、本当によくできていると改めて感じ、これは変に脚色したりしてはいけないものなんだと思いました。
『オリエント急行殺人事件』のときも、第一夜は、ほぼ原作通りにさせていただきました。変にいじったりカットしたりするとどんどん全体の構成が崩れていくので、今回もクリスティーがやろうとしていたことからずれてこないように可能な限り原作通りにしました。
(原作を)読み込んでいくと、『クリスティさん、ここは矛盾してません?』と思う箇所もあったりしたので(笑)、そこは僕の方で、より精度を高める作業をしました。3時間のドラマの中で殺人事件は1回しか起きませんが、内容が面白ければ成立するんだということを改めて示したかったんです。どうやって犯人をあぶり出していくのか?という推理を楽しんでいただければと思います。
野村萬斎さんをはじめとするキャスティングについてのご感想は?
キャストをみて犯人がわかる風にはしたくないということをプロデューサーにはお願いしました。たぶん、今回のキャストに国生さゆりさんがいたら絶対国生さんが犯人ですよね。石野真子さんも犯人役をやることが多いから怪しいですけど、そういう感じの人は1人もいないと思います(笑)このメンバーの中に犯人らしい人が一人もいないラインナップになっていて、全員にきちんと容疑がかかる より楽しんでいただけるキャストがそろったと思います。
萬斎さんと大泉さんは、昔、僕が脚本・演出をした『ベッジ・パードン』という舞台の時、いいコンビネーションだと思ったので、柴医師役には大泉さんがいいな・・・と思い、心の中で念じたりして、少しずつキャスティングされるように誘導しました(笑)また、ちょうど大河ドラマ『真田丸』が終わりそうなタイミングでのキャスティングだったので、スタッフの中に『真田丸』ファンの方がいらっしゃったんだと思いますけど、ものすごく"真田丸感"のあるキャスティングになりましたね(笑)そんな中でも斉藤由貴さんに関しては希望した記憶があります。大泉さんの姉、原作でいうキャロラインは、ひょっとしたらクリスティの全作品の中で最も印象深い登場人物のような気がしています。詮索好きでちょっとおっちょこちょいで、どこか悲しげなものがあり、母性もあるというこのキャラクターを誰が演じるかで、だいぶこの作品イメージが変わってくるので、僕の中では斉藤由貴さんのイメージが強かったんです。
視聴者の方へメッセージをお願いします
とてもいい作品になったと思います。最初プロデューサーに『横溝正史の金田一シリーズの未発表のものが発掘されて、映像化されるみたいな感じのものになればいいな』と伝えしました。物語の舞台を、日本のどの年代に置き換えるかを考えた時に、一番しっくりきたのは『犬神家の一族』や『八つ墓村』といった戦後すぐの農村だったので、設定に関しては、わりとうまくいったと思います。ミステリーとしてもすごく骨格がしっかりしていて、映像的にもとてもきれいな画が撮れていると思いますし、他のテレビドラマと比べてもゴージャスなものになったと思います。クリスティ作品には、まだまだやりたいものがあり、あと50作くらいはできる気がしています(笑)ぜひシリーズ化していきたいと思います!
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野村萬斎私立探偵・勝呂武尊

回を重ねる充実感と言いますか、再び勝呂武尊を演じることができて、とてもうれしくもあり、やりがいもありました。前回の『オリエント急行殺人事件』の時より、人間味の増した勝呂になったのではないかと思います。しかも今回はバディ役として大泉洋さん演じる柴医師と一緒に謎に迫ることになります。大泉さんとはテレビドラマでは初共演で、彼のセリフの量もかなり多かったのですが、いつもにこやかに明るく撮影現場を盛り上げてくれました。撮影の中で、洋くんと一緒にあぜ道を自転車で走るシーンがあり、偶然、勝呂が自転車から転げ落ちるシーンの倒れ方がチャップリンみたいになったところが、とてもおもしろかったです。10人の容疑者に対して、全員のアリバイを整理し、見破っていく駆け引きも見どころとなっています。複雑に絡み合ったアリバイを見事に解いていく勝呂武尊をぜひお楽しみに!

大泉 洋村の医者・柴平祐

(台本を読んでみて)文句なく面白かったですね。原作を知らずに三谷さんの台本から読んだので、ストーリーの面白さに興奮しながら読みました。三谷さん脚本による個性豊かなキャラクターたちがとにかく魅力的でしたね。(今回の役は)誠実で優しくて、周りの人間からも信頼されていて、それでいて、どこかコミカルのところもある人だったので、周りからなぜか好かれる癒しの男を意識して演じました。萬斎さんとは、舞台で共演させていただき、どんな役をやっても強力な印象を残すお芝居が大好きだったのでとてもうれしかったです。撮影中は、ずっと聞いてるとドンドン勝呂のキャラのとりこになり、最高に楽しい毎日でした。そんな勝呂と柴との掛け合いも見どころの一つだと思います。予測のつかないストーリーと三谷さんならではの豪華な俳優陣、濃いキャラクターをどうぞお楽しみにしていて下さい。

向井理黒井戸氏の義子・兵藤春夫

兵藤春夫は気が小さく、苦労知らずで行き当たりばったりのどうしようもない男ですが、人間臭くてどこか憎めないやつでもあります。個性あふれる登場人物が多く登場し、物語を彩り、かつ闇に引き込んでゆく。そして、華麗に謎を解決してゆく爽快感のある作品です。最後の最後まで、気を抜かずにご覧下さい。

松岡茉優黒井戸氏の姪・黒井戸花子

敬愛する先輩方とご一緒出来たこと‬‪、すてきなスタッフの方々とお仕事出来たこと‬、‬‬‬ 勉強になりました。‬大泉洋さん演じる柴先生のちょっと気になる娘、花子を演じさせて頂きます。野村萬斎さん演じる奇妙な探偵・勝呂に振り回されるのは大変心地よい時間でした。

秋元才加黒井戸家の女中・本多明日香

最初に台本を読ませていただいた時、面白くてワクワクしながら、最後まで一気に読み進めてしまいました。今回、すてきなキャストの方々とご一緒出来て、とてもうれしく思っております。本多明日香という役は、メイドという職業なので、自分なりに抑えつつ控え目な女性に見える様に演じました。犯人は誰なのか、複雑に絡みあう人間模様。皆さん、是非楽しみにしていて下さい。

和田正人復員服の男

私の演じる役は極めて重要な容疑者の一人です。明らかに怪しいです。疑われても仕方ない。誰が見てもそんな印象です。ストーリーを追っていく中で、加害者なのか?被害者なのか?と、そんなところにある種の面白みを感じる人物です。真犯人は誰なのか。歴史に名を刻む推理劇をどうぞ最後まで楽しんでください。

寺脇康文黒井戸家の秘書・冷泉茂一

三谷さんとは映画や舞台でご一緒させて頂いていますが、映像作品としては映画「ザ・マジックアワー」以来、約10年ぶりです。今回の作品も同様、三谷さんの台本は、“ギャグ”ではなく“コメディ”要素が詰まった、そこはかとないおもしろさがあると思います。演じている側は真面目ですが、お客さんは芝居をおもしろがってくれる。おもしろい本はリアルに演じたほうがおもしろさの本質が伝わると思うので、今回もそれを心がけました。僕が演じる黒井戸の秘書・冷泉は、探偵小説が大好きで、ミーハーな男。自分が仕えている黒井戸が殺されましたが、“自分の推理が少しでも役に立てば・・・”と事件の推理に加わろうとします。でも彼がふざけているのではなくあくまでも大真面目にやっている・・・ということを三谷さんともお話ししました。推理を楽しむことを大前提にしながら、それぞれの人間関係やキャラクターのおもしろさが際立つ、“三谷版推理小説”を是非楽しんで下さい。

藤井隆黒井戸家の執事・袴田次郎

撮影初日、セットに入った時に“事件”が起こりそうな予感にあふれてて、とても楽しかったです。執事の袴田役をやらせていただいております。色んな場面を目撃している袴田をどうぞよろしくお願いします。

今井朋彦黒井戸氏の旧友・蘭堂吾郎

蘭堂吾郎。作家といいながら書いているのかいないのか。誰とどのくらい仲が良いのか悪いのか。今回の事件同様、謎の多い人物でございます。つかみどころのない役柄を楽しみながら演じました。事件のまわりをフワリとただよう蘭堂にご注目下さい。

吉田羊未亡人・唐津佐奈子

私の死をきっかけに始まる今回の事件。故人ではありますが、語り手たちによる在りし日の私から、その人生を想像していただけるとうれしいです。大泉さんを想定した三谷さんの「当て書き」がこれまた楽しい!最後までご一緒に推理を楽しんでください。 

浅野和之弁護士・鱧瀬

三谷さんの作品は、役に対してヒントがあって、いつもおもしろいアプローチを仕掛けてくるという印象があります。今回の役どころについては、はじめ90歳くらいのイメージをもって現場に入ったのですが、かなりの年齢設定を上げ過ぎたようで、結局現場では、70歳くらいのイメージで演じました(笑)今回はワンシーンに集中し、凝縮したお芝居をお楽しみいただければと思います。

佐藤二朗警部・袖丈幸四郎

この作品で僕が演じたのは地元の袖丈警部。初参加となる三谷さんの脚本にわずかでも彩りを加えられればと思い演じました。共演者も、いずれもハートとテクニックを持った方々ばかり。大袈裟でなく一緒に芝居をするのが夢のように楽しい時間でした。「歴史に残る」と言われる壮烈なトリックを存分にご堪能下さい。

草刈民代黒井戸氏の義妹・黒井戸満つる

いつか三谷幸喜監督の作品に参加させていただきたいと思っておりましたので、 お話をいただき、とてもうれしかったです。私演じます“満つる”さん、ちょっと変わった人です。このような役柄は演じたことがありません!でも、楽しかった〜。皆さまに楽しんでいただけたら幸いです。

余貴美子黒井戸家の女中頭・来仙恒子

原作ではエリザベス・ラッセル、三谷さんの脚本では来仙恒子。黒井戸家の女中頭が役どころです。黒井戸家という薄気味悪い空間の中で、偽りの関係が見破られていく推理は、サスペンスがありワクワクします。初めて参加した三谷作品ですが、台詞の一つ一つが怪しく、魅力的なキャラクターになったと思います。

斉藤由貴柴医師の姉・柴カナ

私の役、カナという女性は大泉さんが演じる医師の姉です。関係ない立ち位置ですが、生まれ持って好奇心旺盛な性格のために、あちこちに出没して首をつっこみ、動物的なまでのカンで(笑)謎の鍵となる情報を探り当てたりします。明るく、かわいらしく、ちょっとずうずうしくKY(死語)なキャラクターで、弟を困らせますが、実は大きな秘密を抱える役どころで、演じていてとてもやりがいがありました。三谷さんからの手紙をもらったような気分にさせられる台本ばかりで、すばらしい仕事でした。舞台みたいな気分でした。

遠藤憲一村の名士・黒井戸禄助

三谷作品4作目、改めて展開のすばらしさと言葉のおもしろさを感じました。自分はいろんな役の方と接する役でしたので、毎日とても楽しく撮影できました。ロケもセットもレトロな雰囲気があって面白いですよ。
  • 渡辺恒也プロデューサー(フジテレビ編成部)

  • 3年の時を経て、名探偵・勝呂武尊が帰ってくることになりました。しかも今回はミステリー通なら知らない人はいない名作、「アクロイド殺し」を原作として、三谷幸喜さんが満を持してのスペシャルドラマ化となります。原作となる「アクロイド殺し」は、その小説をはじめて読んだ時に、予想外の真相とその衝撃的なトリックに文字通り目を疑ったのを覚えています。原作を未読の方は、なるべくリアルタイムでこの衝撃を味わっていただきたいと思います。もちろん、「できることなら記憶を消してもう一度読みたい!」という原作既読の方にとっても、三谷さんならではのユーモラスな人物像と事件推理へのアプローチが光る実写化によって、新鮮に楽しんでもらえる作品になっています。野村萬斎さんをはじめ、大泉洋さんら三谷作品の常連とも言える豪華キャストによる推理劇は、一時も目を離すことができない極上のエンターテインメントに仕上がっています!今春放送の『黒井戸殺し』に、是非ご期待ください!