FUJITV Inside Story〜フジテレビで働く人〜

山川 愉生

“最強のジェネラリストになりたい!”
FOD・TVerなどの
デジタル配信を支える
技術局・山川 愉生さんに聞く…
ビジネス面もさらに意識した
技術局の役割、
技術担当として
大切にしていることとは?

Vol.10

山川 愉生Yui Yamakawa

フジテレビで働く人の仕事への取り組みや思いをシリーズで描く『FUJITV Inside Story』。
第10弾は、テレビ局の放送・配信を支える技術局で、デジタルメディア技術部に所属する山川 愉生さん。入社5年目の若手で、FODやTVerの配信情報の管理システムの構築など、IT業務に携わっている。メディアの多様化時代における技術局の役割、制作側と仕事を進める上で大切にしていること、また今後の目標などについて聞いた――。
(2023年11月2日掲載)

“FODやTVerのユーザー体験が
もっとリッチになることを目標に”…
独自のチャレンジで
業務の効率化にも貢献

テレビ局の技術局と言えば、カメラマンやマスターなどの仕事が頭に浮かびますが?
そうですね。技術局は主に3つの部門に分かれていて、カメラや照明、音声などの制作技術といわれる部門と、マスターや回線などフジテレビの放送を守る放送技術の部門、そして現在、僕が所属している、ウェブや配信の技術を扱っているIT部門があります。
山川 愉生
山川さんは、所属部署でどんな業務に携わっているのですか?
僕が所属しているデジタルメディア技術部は、これまで配信技術を担っていた部署とウェブ周りの技術を扱っていた部署がこの夏に合併して新設された部署で、FODやTVer、ウェブサイトなどのコンテンツに関する施策を、社内を横断する形で管轄しています。その中で僕は、主にコンテンツと広告の配信という二つの仕事を任されています。
例えばFODやTVerに関して、具体的にどのような作業に携わっているのですか?
FODやTVerは、フジテレビが持っている配信コンテンツを視聴できる場所としてサービス提供されていますが、そのコンテンツの情報管理が主な仕事の一つです。例えば、タイトルやサムネイル画像、配信の時期、本編の映像ファイルなどといった配信コンテンツの大元となるデータを管理するシステムを日々、メンテナンスし、改修も加えています。配信のトレンドは移り変わりが激しいので、不足している要素があった場合には、必要なデータをプラスして、FODやTVerのユーザー体験がさらに豊かになることを目標に、仕事を進めています。
山川 愉生

渾身のプレゼンに上司らから“笑顔”で厳しい突っ込みも・・・

山川さんがこれまでに手応えを感じた取り組みを教えて下さい。
僕が携わっているもう一つの大きな業務が広告に関するシステム管理・開発です。ご存じの通りFODは、有料会員の場合、広告は全く再生されないことが多いのですが、無料会員の方だったり、TVerを利用される方がコンテンツを視聴する際は基本的に広告がついています。その広告をどこに出すのか、誰に対して出すのかなどの情報を技術担当として管理しているのですが、その業務を効率化させるDXシステムを開発しました。
具体的にどのように業務を効率化したのですか?
広告を配信する場合、広告代理店側からこの広告をいつからいつまで、どれくらいの量を配信してくださいなどといった発注が放送局に来ます。これまで僕らはその発注の内容を広告サーバーに一つ一つ手動で入力をしていたのですが、その作業のほとんどを自動化して、広告代理店からの発注をそのまま広告サーバーに登録できるシステムを開発したんです。結果、業務量をおよそ半分に減らすことができ、すごく達成感がありました。
山川 愉生
そのシステムはフジテレビ独自のものですか?
そうなんです。フジテレビ独自のシステムで、今年10月には、フジ系列の放送局にもそのシステムを導入してもらえたんです。自分が作ったものがフジテレビだけじゃなくて、系列局の業務効率化のお役にも立てて、「やったな!」という感じです(笑)。
他にはどのようなものがありますか。
僕は、動画広告の配信戦略チームにも所属しているのですが、その関連で僕が主導して開発したシステムが先日、リリースされました。TVerでフジテレビの動画を視聴していると、「この番組をご存じですか」とのアンケートフォームが出てくるというもので、その結果を「番組宣伝」の効果検証として利用することができます。基礎技術の勉強から実際の開発まで精力的に取り組みましたし、多くの方にアンケートに回答してもらえたので、個人的にかなりの手応えを感じました。また、ニュースサイト「FNNプライムオンライン」が月間1億ページビューを達成したり、配信で年間AVODの3冠(再生数、ユニークブラウザ数、総視聴時間)に輝いたり、FODの会員数も100万人を超えたり…と、入社してからこれまでに携わってきたプロジェクトが軒並み記録を樹立したのは、すごく嬉しかったですね。さまざまな部署が一丸となって団結して成し遂げた成果ですし、微力ながらもそこに僕も関わることができたのは、とても感慨深いものがありました。
山川 愉生

「フジテレビのコンテンツを世界中に」
の目標に向け、
大切にしたいことは・・・
「小さなことの積み重ね」と
「わかりやすい言葉」

山川さんが技術担当として心掛けていることはどんなことですか。
やはりテレビ局で働く上で、視聴者により良いコンテンツを届けることは当然の使命だと思っています。その実現に向けて技術担当としては、いろんなシステムの改良等を図っていますが、その際には、将来どれぐらいの効果やメリットがあるのかを、しっかりと見据えた上で実施していくことをいつも心掛けていますね。やはり日々の一つ一つの業務は「あの人がこう言っているものを作って渡す」とか、本当に地味で小さいものも少なくないんです。でも、新たなシステムを導入するといった「大きな目標」を達成するには、そうした「小さなことの積み重ね」が大切だと思っていますので、日々の業務を淡々とこなすのではなく、「この業務が積み重なることで視聴者の満足度が上がる」とか「これくらいの価値を生むんだ」という「将来のあるべき姿」をしっかりと意識することが必要だと思っています。さらに、僕ら技術側から「こうした方がいいと思います」と積極的に提案することも必要ですし、 こうした「より良いサービスを目指す」という目標を忘れることなく、柔軟な考え方で仕事に取り組むよういつも心掛けています。
山川 愉生
また、技術担当として、一緒に仕事を進める方々と円滑なコミュニケーションを図ることも、もちろんとても大切なことだと実感しています。IT分野、特に広告技術周辺は専門用語が本当に多くて、初めは僕も馴染むのにとても苦労しました。そんな経験もあるので、周りとコミュニケーションを取る中で、できる限り噛み砕いてわかりやすく説明するよう心掛けています。聞き馴染みのない専門用語を連発して、「訳がわからない」と思われては、チームのためにならないんです。逆にみなさんの理解が深まるようお手伝いできれば、組織全体の技術力の向上にもつながっていくと思っています。
では、現在のお仕事のどんな点にやりがいを感じていますか?
さまざまな視聴者の方と向き合えることは、すごく刺激的なことと感じています。以前携わっていたニュースサイトの開発や現在の広告配信の業務では、自分がちょっと何か手を加えたものが、すぐに多くの方々の目に触れるところに影響を及ぼしていく様子が手に取るようにわかるんです。そうした「自分の働き」がすぐにサービスに反映されるのは、「Webや配信ならでは」という面もあると思いますので、やりがいを感じると同時に、だからこそ慎重かつ大胆にこれからも仕事に取り組んでいきたいと肝に銘じています。
山川 愉生
逆に、仕事を進める上で大変なこと、苦労していることは?
毎日、苦労の連続ですが(笑)、やはり技術担当として、次々と登場する新たな技術を日頃の業務に十分に反映させるには、そうした技術を愚直に勉強し、しっかりと自分のものとすることが必要です。またそうした新たな技術を実務的に活かすには、現在の業務だけではなく、これまで携わってきた業務に関する記憶を全て掘り起こしてクロスさせないといけないので、そうした点は結構大変ですね。また、技術の最新情報は海外から得ることも多く、海外の方と密にコミュニケーションを取る必要も少なからずあるので、他の部署も同じかもしれませんが、「常に頭を使わなくてはならない状況に置かれている」ことが最も苦労している点と感じています(笑)。
山川 愉生

2022年4月 米・ラスベガスで開催された技術関連の大型イベントを視察

では、配信事業の今後についてどのように捉えていますか?
ご存知の通り、現在、さまざまな動画配信サービスが国外から黒船のごとく日本市場に入ってきています。だから、技術担当としても、視線を国内だけではなく国外にもしっかりと向けて、グローバルな観点からいろいろな技術を取り入れていきたいと考えています。そしてフジテレビのコンテンツには面白いものがたくさんあるので、著作権など色々課題はあると思いますが、世界中の人が見に来てくれるようなプラットフォームを作っていきたいですね。その場合、競合相手には、海外の企業も明確に想定されるので、そうした相手としっかりと渡り合っていくためにも、海外配信のトレンドに常に敏感でありたいと思っています。
山川 愉生

マイナス15度の
雪山スマホ中継でも達成感!
基本姿勢は「貪欲に広く深く!」・・・
技術担当として“ビジネス最前線に”

次に入社までの経緯についてお聞きしたいのですが、山川さんは大学などでIT関連について学んできたのですか?
全くそんなことはなくて、現在、携わっている「配信」「Web」などの分野は、大学の時には、ほとんど触れていません。プログラミングの必修授業はありましたが、成績は全然振るわなくて…。だから、そうした分野には僕は向いていないと思っていましたが、入社してから「自分が興味あるものを深掘りする手段として、ITは本当に楽しい」ことに気付いたんです。今ではノリノリでプログラムを書いています(笑)。だからITの楽しさには「もっと早く気が付けば良かった」と思っていますね。
山川 愉生
どんな理由でテレビ局を志望したのですか?
まず、多くの人に影響を与える仕事がしたいという思いがありました。また、僕の両親が大のテレビ好きだったこともあり、僕も小さい頃から他のことはそっちのけでテレビばかり見ていました(笑)。その時、いつも見ていた『笑う犬の冒険』の印象が強く残っていて、今からすると、フジテレビを目指す上での原体験がそこにあったんだなと思っています。 あと、テレビ局は地上波に加え、配信やイベントも手掛けていて、業務内容が幅広いですし、いろんなことに挑戦したいと考えていた僕としては、テレビ局に入ればさまざまな経験ができるのは、と思って志望した感じですね。
ではこれまで、どんな業務を担当してきたのですか?
入社後すぐにIT部門に配属されたのですが、この5年程、ホントにいろんなことをやらせてもらいました。フィギュアスケートの中継現場でCGをつける作業に携わることもできましたし、社屋のフロアに張り巡らされているいろんな種類のケーブルを新しく付設した作業も思い出深いです。埃まみれのカーペットをビリビリ剥がして、床の下へ潜ってケーブルを替えたりとか…(笑)。普通の会社だと、そこまでいろんなことを任されることはなかなかないと思うので、すごく楽しかったですね。
先日インタビューした社会貢献推進局の小津さんの北海道でのオンライン中継にも携わったと聞きました。
山川 愉生

極寒の中でのLANケーブル設置作業

そうですね。配信のテクニカルディレクターという立場だったのですが、この中継はできるだけ“エコ”でやろうという方針に則って、カメラもスタッフのスマホを使うなど、限られた機材で臨みました。ただ、現場はマイナス15℃の極寒で、スマホもバッテリーが落ちてしまうなどのトラブルに見舞われる中での中継は、ホントに痺れましたが、その分、達成感もひとしおでしたね。あと、事前の準備として、積雪が何十センチもある場所に200メートル程のLANケーブルを引く必要があったのですが、あまりの寒さにケーブルがカチカチに固まってしまって、無理に力を加えるとケーブルも折れて断線する危険があるので、慎重に慎重を重ねて作業を進めたことも強く印象に残っています。
山川 愉生

配信の無事を見守る表情は真剣そのもの

入社してからずっと、楽しみながらいろんな仕事に携わっている印象ですね?
そうですね。現在の職場でも、「自分で仕事を持ってきて、自分で仕事を展開する」といった「自由な雰囲気」を感じています。下から上に対して「あれをやりたい」「これをやりたい」と提案できる雰囲気を。だから若手でも、本人のチャレンジ意欲次第で、新たなシステム導入やサービス提供といった“大きな仕事”にも深く携われるチャンスがあると思っています。
そうした「前向きな姿勢」も技術担当にとって必要な資質の一つですよね?
やはり、どんな部署でもそうだと思うのですが、「好奇心旺盛」な人が望まれると思います。今や、技術局員だけがITに明るいなんてことはありません。だから技術局員としての意義、矜恃を見せるには、新しいシステムの簡単なプロトタイプを自分で開発できるくらいのエンジニアスキルがあるとか、あるいは、新たな技術が登場したら、すぐにどっぷりと浸かるくらいに勉強して自分のものとするとか、そうした技術的な知識・理解力に裏打ちされた「積極的な姿勢」は、とても大切だと思っています。
山川 愉生
では、山川さんが現在の仕事を進めるにあたって、特に大切にしていることは、どんなことですか?
視聴者の立場としての気持ちを忘れたくないと思っています。僕もFODやTVerを普段からよく見ていますが、「技術担当として直接関わっている」言わば「裏事情まで熟知している」との視点で、どうしても見てしまいがちなんです。でも、そうした自分の視点だけではなくて、スマホ初心者のおじいちゃんになった気持ちでとか、デジタルネイティブな小学生目線だとどういう気持ちで見るんだろうとか、いろんな視点を自分の中で再現してFODなどのサービスに向き合えば、「僕らには使いやすいけど、他の方にはそうでもない」といったことも認識できると思うので、そうした姿勢は忘れたくないと思っていますね。
山川 愉生
最後に山川さんの今後の目標を教えてください。
入社当初から思っているのは“最強のジェネラリストになりたい”ということです。スペシャリストに対するジェネラリストという意味で、本当に幅広いことをやる人のことを指して言っているのですが、「広く浅く」ではなくて、「貪欲に広く深く」様々な分野に精通した人材になりたいと、思っています。今は配信の技術や広告などを担当していますが、今後は番組の制作や営業、そしてビジネスサイドの方面にも深く関わって、理解を深めていきたいですし、技術だけではなく、ビジネスの最前線みたいな分野でも経験を積んでいきたいですね。
そして、そうした経験を通じて得たものをうまく掛け合わせていけば、新たな面白い「提案」もできるのでは、と思っています。僕は好奇心が強い方だと思いますし、いろんな分野の仕事に手を広げて、自分の「ノウハウ」として溜めていって、将来に活かす…そんな存在になれたら、と思っています。
山川 愉生

聞き馴染みのない専門分野の話題についても、聞き手に“優しい”言葉を選びながら、和やかにわかりやすく話してくれた山川さん。その柔和な印象の一方で、自らが携わる仕事について“熱く”語る姿には、頼もしさ・芯の強さも感じられた。目標は「最強のジェネラリスト」。メディア多様化のこの時代、持ち前のビジネスセンスも発揮しながら、これからもさまざまな取り組みを技術面から陰に陽に支える日々が続くことになりそうだ。

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