フジテレビジュツ博
開催レポート #4
第1回:2019年2月22日(金)・23日(土) 開催
フジテレビジュツ博 特別講演
『コンフィデンスマンJP』
演出と美術のお仕事
2019年2月23日 16:00~ マルチシアター

- 司会
- 奥寺 健 (フジテレビアナウンサー)
- パネラー
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- 田中 亮 監督
- 2003年入社 編成制作局 第一制作室
- 最近の作品:『ラスト・シンデレラ』『医龍4』『コードブルー THE THIRD SEASON』
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- デザイナー
- 1991年入社 美術制作局 美術制作センター
- 最近の作品:『マスカレードホテル (映画)』『翔んで埼玉 (映画)』『犬神家の一族』
奥寺アナ今回は大変珍しい詐欺師が主役というドラマですが、
最初にどんな感じでドラマの世界観が作られていくのか話を聞いていきたいと思います。
監督、このドラマでは、キャラクターの設定はどんな感じで進めていったんですか?
田中監督詐欺師の設定という、今まで見たこともやったこともないドラマなので、
まず、何を着ているかが主人公の性格を表すと思うのですが、私服でいうとハイブランドとファストファッションを混ぜて着ていることにしました。今回の見どころは詐欺師としてどんな変装をして騙していくかというリアリティーだったり、笑える遊びだったりなので、色んな物を着ていただいて、こういうものを着る人ということでキャラクターが見えてきたところがあります。
それから長澤さんはカツラが似合うので、被りこなしていただいた感じです。
奥寺アナメイクや小道具はいかがでしたか?
田中監督ばっちりのメイクで長澤さんの美しさを見せたり。アフロのかつらは長澤さん被りたいと言ったんですよね。
でも、被れるシーンが台本のどこにもなかったんですよ。ないけど、「エイここだ!」みたいなことで何の脈絡もなく被せることになりましたね(笑)。
奥寺アナどこで被っていたんですか?
田中監督偽の土器作りのシーンで被りました。音楽も、レキシさんというアフロヘアのミュージシャンの曲が流れてたりします。
奥寺アナアジトのセットにも触れていきたいと思います。これはホテルがベースになっているということなんですよね?
デザイナーそうです。スイートルームという設定だったんですが、台本を読んで、最初はバブリーなスイートルームをイメージしたんですけれども、やり過ぎず、セットが出過ぎない方がいいかなということで、ちょっとシンプルな白いセットにして、そこにどうやってダー子の部屋を融合させるか。高級なところにちょっと駄菓子屋的な世界を融合させるのが今回のテーマでした。

ダー子のアジト(打ち合わせ用図面)
奥寺アナそれには結構なプロセスがあったわけですよね?
デザイナーそうですね何度も打ち合わせを重ねてここにたどり着けた感じですね。
第一案はバブリーな円形の、屋上の上にある現実離れしたようなデザインにしたんですけれど、さすがにこれだとやり過ぎだというので、赤くメモを書いてるんですが、これは結構話し合ったメモの図面なんですよ。
奥寺アナ赤が入って、次にどんなものが上がってきたかというと?

ダー子のアジト(ラフスケッチ)
デザイナーその次はスケッチに入るんですけれども、監督から「造り付けのソファーがいいな」というのがありまして、それをきっかけにダー子の部屋とうまく境界線を作って、ダー子がそこを飛び降りたり寝転がったりとかちょっと行儀の悪いダー子を演出できる段差を作ってみたという感じです。で、汚いものは全部そこ(ダー子の部屋)に収納されていて、出てるものはリチャードが片付けて、と言う設定があったりしました。
田中監督最初の図面では、人を騙してここで札束をばら撒いていたら、すごく嫌な人に見えるんじゃないか、どこか温かみや愛すべきところがあったほうがいいなと。
それで次のスケッチを見せていただいた時に、これなら人間味も温かみもあるし、どこか掴みどころがなくて、愛せるんじゃないかな、というキャラクターがこの段階で見えてきた感じです。

決定パース図・平面図・道具帳・壁紙・床材
奥寺アナそうですか、そして次の段階は?
デザイナー平面図を仕上げて、決定パースを描いて、実際に寸法を指定して、床材を考えて壁紙を選んだりします。
田中監督ここまでくると、美術用の製作図面は私も見たことないですが、信頼関係でよろしくお願いしますという感じです。どういう実物セットができるか楽しみに待ってる段階です。
このセットに初めて演者さんが入ってきた時の反応は、僕らもちょっとドキドキしながら中で待ってるんですけれども、セットを見た長澤さんはじめ、全員大興奮でめちゃくちゃ喜んでました。

リビングセット(スイートルーム)
デザイナーダー子が入って初めて完成するので、衣裳を見て、セットの色を抑えめにして良かったなとか、思いました。
奥寺アナ派手に動いたりするのは監督が注文を出すんですか?
田中監督大まかに説明した後は、演者さんが自由に動いて、僕が思っている以上の動きをしてくれたりするんですけれども、細かく言わなくても導けるようなセットができているから大丈夫な感じです。
奥寺アナまた小物も細かいですよね。思い入れとしてはどんなところがありますか?

ダー子の部屋
田中監督漫画の上に野球盤だったり、テレビの隣にスーファミがあったり、昔懐かしのアイテムとかを楽しんでもらえたらいいなと、僕らのちょっとした企みがこんなところにもあったりしますね。
デザイナーこれは女性の美術スタッフがほとんど飾ったんですよ。なので僕が想像していないような色の綺麗さだったりとか、可愛いものが並んでいて僕もびっくりしたというか、想像以上に可愛くなりました。ぬいぐるみも活躍していました。

奥寺アナ皆さんは24Fの展示に行かれました?この実物のセットが展示されていますのでぜひご覧になってください。
そしてこれは「ゴンドーフ」と書かれいるんですね?
田中監督これは映画の『スティング』でポールニューマンが演じた役名がゴンドーフで、詐欺師のドラマとして、『スティング』から影響を受けているので、そのオマージュといいますか、インスパイアされた元を忍び込ませています。そんなところも視聴者の方に気づいてもらえたら嬉しいです。
デザイナーこういうのも一つ一つ装飾さんが作っていきます。
奥寺アナすばらしいですね。いくつかシーンも見ていきましょう。

デザイナーこれは「段差を使ってソファーを乗り越えて部屋を行き来してる」というのをどうしてもやりたかったので。
セットの中でダー子が自然にやっていたので良かったなと思いました。
田中監督セットをどう生かすかも演出の中での競い合いという部分もありますね。

空港荷物チェックセット&飛行機外観及び機内セット
奥寺アナこれは空港ですね?
田中監督飛行機の中も架空の航空会社として作り込み、スケールの大きいドラマっていうのを表現しました。
飛行機のドアもセットで作ってもらって、実際の大きさとは違うんですけれども、このくらいの大きさだったら許されるのかなと、どこまでがリアルで、コミカルにできるかなんて話をデザイナーとしながら、ですね。

田中監督これは遺跡発掘現場シーンです。これはすごく寒い中、寒すぎて、その中でこのハイテンションでしたね。
奥寺アナポイントはこのポーチですか?
田中監督土偶のポーチなんですけども、これは衣裳部からの強い提案があって出来た、素晴らしいシーンです。この頃には全スタッフが何か面白いことをねじ込めないかと、現場のみんないい空気になってましたね。

奥寺アナそして、監督が一番好きなシーンですが…。
田中監督これはお金を騙し取った後のシーンで札束ドミノをやったのですが、僕がなんで気に入っているかというと、他で見ない映像ですし、お金でこういう風に遊ぶというのが、ダー子のキャラクターをすごく示しているんじゃないか、規格外のダー子と、お札を時間かけて並べたスタッフの努力がカットに現れているので、一番好きなシーンです。
観客からの質問土偶ポーチとかフェルメールの絵とか、昔の話で出た道具が、別の話でチラッと映っていたりしたのは、
監督が考えるんですか?
田中監督そうですね、基本は監督とか助監督が考えるんですけれども、それをカメラマンがこう写そうとか、
みんなで作り上げていった感じですね。
デザイナー作った美術としては嬉しいですよね。もう一回使ってもらえる(笑)。
奥寺アナこのドラマは他の作品に比べて手間がかかっている方なんでしょうか?
デザイナー1話完結ものでこのくらいの規模だと毎回新規ロケ、新規セットがあったし、しかもロケが厳しい冬だったりして、
結構大変なイメージがありました。
奥寺アナその美術によって監督が乗ってきて、役者さんが乗ってきて、スタッフみんなが乗ってきて、新しいものが生まれていくという、そういうところが特に興味深いです。
田中監督そうですね。ドラマの世界観として、札束がばらまかれるようなゴージャスでスケール感のあるドラマなので、
そこは美術の作る物がしっかり説得力を出してくれたなぁと思います。
デザイナー今回は、監督とデザイナーがしっかり世界観について話ができたと思いますので、そうやって話せば話すほど
面白いドラマになると、すごく実感したドラマでした。
奥寺アナ『コンフィデンスマンJP』が映画化されるということなんですが、この映画の見どころを教えていただけますか。
田中監督日本を飛び出して、香港を舞台に連続ドラマのスケールをはるかに超える大規模な撮影をしています。
超豪華ゲスト揃いで、相手を騙し通せるのか、観客の皆さんも騙すことができるのかを楽しみにしていただきたいなと思います。
2019年5月17日公開です。
奥寺アナ皆さん是非見ていただきたいと思います。今日はありがとうございました。