あらすじ
<第4回> <第5回> <第6回>

<第4回> 「泥棒出現!くずと呼ばないで」
 ある朝、そこには柳沢家の様子を伺う不審な目が−。幸弘(小日向文世)、華子(三浦透子)らを送り出していた奈津子(戸田恵子)はそれには気付くことはなく、正子(松原智恵子)も、手塩にかけた桔梗が咲いたことに喜んでいたと思ったら、隣町に格安のびんちょうまぐろがあるからといそいそと出掛けていった。誰も怪しい視線に気付く様子はなかった。
 さて、正子は途中、出掛けに郵便屋さん(酒井敏也)が届けてくれたいつ子(川原亜矢子)宛てのはがきを途中二人が住むアパートに立ち寄り雅史(山口智充)へと託した。が、そのいつ子の幼馴染みの藤村からのはがきを読んでしまった雅史の表情は一変してしまう。そこには、こうしたためられていたのだ・・・“やっと約束を果たす時がきたね。あの思い出の場所で会える日を楽しみにしています”。「昔近所に住んでて、よくうちに遊びきてたわー。ポエムを書くのが好きな子で、いつ子は楽しそうに聞いてたわ」。正子のくれた藤村くん情報を聞いてさらに不安を募らせ、雅史は自然といつ子を探しはじめていた、約束って何?藤村って一体・・・・・・本当のことが知りたくて。
 “銭箱を引き出しても空っぽなり・・・小箪笥の引き出しまで残りなく探せども何もなし・・・”。その頃ヒロミツ(佐藤隆太)は、校庭で世津子(国仲涼子)が使っているテキストを朗読していた。読んでいるのは十辺舎一九の『盗人』。少しでも世津子のことを知りたいからというのがその理由。そして、ひとしきり読んだところで、今度は周辺から世津子に接近するため?柳沢家へと向かうのだった。風邪で休んでいる良則(松本幸四郎)を見舞うために。
 「あなたはどちら様ですか?なぜここにいるのですか?」。その時良則は、ベッドに半身を起こし自室に立った見知らぬ男(宮迫博之)と対峙していた。朝から柳沢家を伺っていた不審な男だ。
 男は、咄嗟に正子の通う習字教室の教師で榎本だと名乗った。良則は、それと分かると不在の妻に変わり榎本の話し相手をしようと考えた。話題は本。良則は、榎本が書棚に手を掛けているところを見て、そうとう書物には造詣が深いと見て取ったのだ。慌てる自称・榎本・・・の泥棒。だが今更、金になりそうな書物を物色していたのだと開き直ることもできない。そうこうしていると、「いつ子〜」いつ子を探し求める雅史が柳沢家に現れた。さらに世津子がヒロミツと共に帰ってきた。
 そして世津子が本を借りるため良則の部屋へと入ってきた・・・。

<第5回> 「初恋に魅せられて」
 柳沢家の一室を占める本の山の中。良則(松本幸四郎)はその一番下にある本を取ろうと悪戦苦闘していた。だが、良則があらかた本を掘り起こしたその場所に、なんと久し振りにピアノが出現したのだ。それは、正子(松原智恵子)が嫁入りの時持ってきた思い出のピアノ。そして、これを見た良則は、調律をしてもらって正子に再び弾いてもらおうと思いたった。
 登校する道すがら馴染みの本屋で『パッヘルベルのカノン』の楽譜も購入した。「本日我が家でコンサートがあるんですよ」。嬉しくって守衛(ト字たかお)さんに挨拶がてらこんなことを言ったりして・・・だが、その後いろいろ調べた結果、調律するよりも新しいピアノを購入した方が経済的であると確信。良則は、即刻電話で正子を呼び出すと、楽器店に向かった。
 その頃、柳沢家を一人の品のいい御婦人が訪ねていた。彼女の名前は田丸要(ジュディ・オング)。応対に出た世津子(国仲涼子)には見覚えがないのだが、その婦人は世津子を見て「あらっみよ子さん?遊びにいらしてくれたの?今日は忙しいの。ピアノのお稽古もあるし、家庭教師の先生も来るし」と親し気に言う。この人誰?私を誰かと勘違いしている?戸惑う世津子。そして要は、その後も、奈津子(戸田恵子)を「ひなさん」、帰ってきた正子をお手伝いの「トメ」と呼ぶなど、家族たちを混乱に落とし入れるのだった。そのうち、要の調子に合わせ話しを聞いていた世津子らは、要が田丸物産の未亡人であることに気付く。幸弘(小日向文世)にも確認をとった。
 しかし、喪服を着ているところをみると夫の告別式会場から抜けてきたようだ。やがて正子は、その昔良則が、あるお屋敷で家庭教師をしていたことを思いだした。では、「好きな人がいるけど親の決めた成り金と結婚しなければならないの・・・」。世津子の服に着がえ、「このドレス、先生に見てもらいたいの」と恥じらいながら要が話すその相手とは、良則のことなのか!?そうこうしているうち、柳沢家に良則が戻ってきた。
 一方、田丸家告別式会場では、突如姿を消した喪主の行方を弁護士らが懸命に探していた。

<第6回> 「嘘つき学生の純情と年上の女」
 ある日、軽音楽部の部室でヒロミツ(佐藤隆太)が、かなり個性的だけど超お気に入りのギターを弾いていると、男子学生がきて言った。「かっこいいギターだね。それ今からバイトすればクリスマスまでに買えるかな? 病院にいる小学生の甥っ子にプレゼントしたいんだ」。
 ・・・そんなことがあった数日後、中古楽器店のウインドーにはヒロミツのお気に入りだったギターが並んでいた。「なんで・・・甥っ子にあげるというのは嘘だったのか・・・?」病気の甥っ子をかわいそうに思い、同情したヒロミツの好意は無残にも打ち砕かれてしまったのだ。
 だが、ヒロミツを騙したこの男、学内でも評判の嘘つきで、北海道出身ということから“男爵”(要潤)とあだなされていた。
 「この嘘つき野郎!」。良則(松本幸四郎)は、構内でヒロミツが男爵に向って浴びせた罵声に敏感に反応していた。というのも、前日の食事の席で、幸弘(小日向文世)が出したなぞななぞによって、彼の中での研究テーマが“嘘”になっていたのだ。それは・・・『本当のことしか言わない正直村と嘘しか言わない嘘つき村がある。そこへ正直村を目指してやってある人が来るが、岐路に立っていたどちらの村の人か分からない人に何と聞けば正直村に行けるでしようか?』というものだった。
 学食にも足を踏み入れて男爵に密着しての、良則の徹底した“嘘研究”が始まった。そのおかげで学食のパートの女性(磯野貴理子)に叱られたりもしたのだが・・・。見事に騙されたうえに良則の関心が男爵にいってしまいおもしろくないヒロミツ。世津子(国仲涼子)は、そんな三人の様子に呆れるばかり。
 一方、柳沢家でも華子(三浦透子)の可愛がっていた金魚のひめちゃんが死んでしまったことでついてしまった嘘がとんでもない事態を招いていた。
 幸弘は「大きくなって飼えなくなったので、いつ子(川原亜矢子)へあげた」と華子に言ったのだ。さらに、いつ子は金魚を見にきた華子に「雅史(山口智充)の工房にいるよ」と言ったという。奈津子(戸田恵子)は一つの嘘からはじまった事態をいかに収拾をつけたものかと頭を抱えてしまった。
 この時華子は、みんなの言う通りだとそこにいるはずという場所、つまり良則の大学の研究室に、連れてきてくれた男爵と共にいた。そして、おじいちゃんを連れてくるという男爵に、「ひめちゃんも連れてきて下さい」とお願いをした。すると男爵は、「・・・僕のうちにもクロという金魚がいたことがあるんだ・・・」と話しはじめたのだ。そこへ戻ってきた良則も廊下で男爵の話にそっと耳を傾ける。
 数々の作り話をして、人を騙してきて、ついさっきも、“傘をかしてくれた慎ましい暮らしをする女性に恋をしたんです”という作り話を聞かされたばかりの・・・そんなほら吹き男爵が、わずか6歳の少女にどんな話を聞かせようというのか・・・良則はじっと聞き入ってみた・・・。


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