あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「理想の結婚式」
 ある晴れたよき日の教会、新郎・大森トオル(ユースケ・サンタマリア)はイライラと新婦・葉子(西田尚美)を待っていた。すでに結婚式の開始時間は過ぎている。横には、後輩のカメラマン・鳴海柊平(妻夫木聡)が心配そうに見守る。携帯に電話を掛けても留守電。隣の部屋の新婦控え室からは「葉子ちゃん、逃げたね」と唖然とする話が聞こえて来て、トオルの不安はいや増す。そこへ、やっと新婦が登場した。歓声を上げるトオル側親戚一同。ようやく式が始まった。
 オルガンの響き渡る礼拝堂を進むトオルと葉子。が、葉子の表情は固い。愛の宣誓が牧師の指示で始まる。「愛し続けることを誓いますか?」「誓います」とトオル。だが、葉子は「ち、ち・・・・・・違います!」。そこに颯爽と健治(マイケル富岡)登場。「葉子!」「ケンちゃん!」。二人は手を取り合って外に飛び出し、車に乗って去ってしまった。トオルは結婚式で花嫁に逃げられたのだった。
 その1年後。トオルは、経理部で電卓だけは得意の経理マンとして、それなりに頑張っていた。その時、柿沼課長(山西惇)に呼び出された。柿沼はトオルに辞令を差し出した。「社長!?」会社名は「スウィートブライダル」社。「ウエディングプランナーの会社だそうだ」と柿沼はどうでもよさそうに言う。とにかく怪訝なトオルである。
 数日後、レストランで結婚披露宴が開かれている。加奈子(飯島直子)は、くるみ(伊藤歩)に指示を出し、スピーチを行う予定の新郎の友人「大塚」を探していた。果歩(今井陽子)はシンガーのケア、美咲(木村佳乃)、なな(木内晶子)は花嫁の世話で大忙しである。彼女たちは「スウィートブライダル」の社員であった。
 そんな最中、トオルがその場にやって来た。酔った出席者が、間違えてトオルを「大塚」と呼ぶ。くるみはトオルをステージに上げ、マイクを突きつけた。お調子者のトオル、そのままスピーチし、結局、二次会まで付き合うのだった。
 翌日、トオルは加奈子たちを前に、着任の挨拶を行っていた。誰も聞いてなどいない。昨日の記録ビデオでは、トオルが大はしゃぎ。途中なのに出入りの花屋・小此木純(阿部寛)が入ってきて勝手にコーヒーまで飲んでいる。このいい加減な雰囲気に、トオルは宣言した。
 「結婚式はビジネスだ。会社である以上、利益第一!」
 その直後なのに、加奈子は安い仕事を取っている。由美(奥貫薫)はバツイチ子連れの35歳。亮輔(川岡大次郎)は大卒直後の23歳。亮輔の父親の反対で資金の援助は受けれない。予算は「10万円」。加奈子は「大丈夫」と引き受けてしまう。加奈子は止めようとするトオルを引っ張り出し「お金のある人ばかりじゃないの。お金かけたくない人がオリジナル結婚式を挙げるのよ!」と突き放す。
 その夜、加奈子たちは、トオルを肴に飲み食いしている。「あんな負け犬顔!」。そのころ、トオルは自宅で妹の亜紀(石橋けい)や父・雄三(志賀廣太郎)、母・敏子(銀粉蝶)に「花嫁にトンズラされた人がどうして結婚相談所に・・・・・・会社にも捨てられたか・・・・・・」と肴にされているのだった。
 翌日、トオルは本社の柿沼に「復職」を願い出るのだったが、「僕が飛ばしたの。君がいると僕の運も減りそうで。戻りたきゃ、業績上げて。嫌なら辞めれば」と相手にしてもらえない。
 トオルは「スイート」社に戻って、加奈子に前日のチープ婚の予算を引き上げるように迫るが、加奈子は「捨て犬の負け犬は席についてろ」と相手にしない。
 加奈子たちは、チープ婚のカメラマンを探している。トオルは「尊敬」を集めようと、カメラマンの柊平を思い出し、やらせようと試みる。しょうがなく「スイート」社にやって来た柊平はすでに有名なカメラマン。「なんで、俺が。俺帰るよ」。うんざり顔のスタッフ。
 そんな夜、美咲は、老舗の菓子屋の若主人・浜谷つとむ(温水洋一)とデートをしていた。蒲生響子(高橋ひとみ)が先生を務める精神科医院で落ち込む心を診てもらった帰りのトオルがそれを目撃する。
 そんな午後、純がトオルのところへやって来た。「加奈子さんは、1年前まで教会のオルガニスト。そこでたくさんの結婚式を見てこの仕事に転向したんだ。本人はバツイチ子持ちだがね」と純は教えてくれる。トオルは、加奈子があのチープ婚のカップルに肩入れする理由が読めた気がした。
 そのころ、加奈子は思い出していた。一年前に目撃した映画「卒業」のようなカップル。そこに残された男・・・・・・「あの時の、あの男!」。トオルの過去を思い出した加奈子の携帯が鳴る。
 「結婚の資金を出してもらうために亮輔さんの父親に会って来る。」と言い放ち、トオルは電話を切った。慌てる加奈子も亮輔の父親の会社に急いだ。
 トオルが到着した時、丁度、亮輔が由美を紹介し、式の出席を願っているところだった。父・紀之(佐々木勝彦)は大層な剣幕で、結婚に反対している。そこへ加奈子も到着する。
 「そこをパーっとお祝いしましょうよ」と軽く出てくるトオル。紀之、無視し「現実に負けたらお終いなんだ」と言い切る。
 が、それを聞いたトオルは、突然態度が変わった。「負けた人間だって人生は続くんだ。一体どこで負けが決まるんだ」と食って掛かる。紀之はさらに興奮し「子供抱えて困った女が若い男をたぶらかしているだけだ。お前は勘当だ」
 加奈子はトオルに対して怒った。
 「あんたが怒らせたのよ!」
 トオルは静かに言った。
 「結婚に失敗したあんたがやれてるんだ。誰にでも出来る。自分に重ねて入れ込んでるんだ」
 その言葉に異議を唱えた美咲の方に向かってトオルは続けた。
 「大口叩いてる割には冴えない奴と付き合ってるのもいるし。みんな屈折しているよ」
 だが、加奈子も返した。
 「花嫁に逃げられたからひねくれてんのよ。あの時オルガン弾いてたのは私よ。あんな情けない男を見たことない。あんたには無理よ」
 がっくり下を向くトオルだった。
 その帰り、トオルは公園で一人サッカーボールで遊ぶ少年・拓(神木隆之介)を見つける。つい遊ぼうとするが、サッカーボールすらうまく蹴れない。どん底まで落ち込むトオル。少年の姿は消えていた。
 「スウィート」社にトオルは出勤しなくなっていた。行き先は「ハローワーク」。横を見ると明日、結婚式の亮輔がいる。と、その時、亮輔の携帯が鳴る。加奈子からである。
 「由美さんが結婚やめると言って来ました」
 亮輔とトオルは「スウィート」社に急いだ。スタッフはトオルの姿に驚いたが、とにかく、由美を探すことにした。由美は娘の早希を連れて、公園にいた。「彼の負担になりたくない」と由美。だが、早希は「パパ」と亮輔に飛びつく。「俺を信じろ」と亮輔。3人はもはや離れられないのだった。
 「スウィート」のスタッフは仕事に戻った。だが、トオルは行き場がない。深夜になってそっと社の中を覗く。中ではスタッフが衣装などを用意している。  加奈子が言う。「結婚て恋愛を続けることより大変なの。だからスタートは祝福しよう。て、自分が失敗したからそう思うのね」。純もトオルもそれを聞いていた。  翌朝、トオルは再び紀之のもとを訪れた。
 「由美さんは一度身を引こうとしました。でも、亮輔君は離さなかった。大切だからでしょう。あなたもそうなんですよね。亮輔君はあなたを尊敬し、人生を見習っているんです。あなたが育てたんですから」
 そのころ、亮輔と由美のカップルは「式場」である菜の花畑へ着いた。バージンロードも祭壇もあり牧師もいる。迎える由美の両親。式が始まったが紀之がいないことが寂しげである。
 そこへ車が止まった。降りてくるのはトオル。そして紀之である。
 「親父!」
 紀之は無言で由美に頭を下げるのだった。菜の花畑の結婚式は晴れやかに進んだのだった。
 翌日、社長業に戻ったトオルが売り上げに文句を付けていると柊平がやって来た。
 「俺、専属カメラマンやるよ」・・。

<第2回> 「もと彼」
 大森トオル(ユースケ・サンタマリア)の後輩・柊平(妻夫木聡)がカメラマンを引き受けてくれ、スウィートブライダル社はちょっとした騒ぎになった。純(阿部寛)は、加奈子(飯島直子)が柊平になびくのではないか、と気をもむ。その加奈子はトオルの存在が相変わらずうっとうしくて仕様がない。言い争いの続く二人である。当の柊平は、挙式予定表の「藤波千鶴」という名前を見て暗い眼をするのだった。
 そんな折、本社の課長・柿沼(山西惇)からトオル宛に電話があった。「結婚することになった。嫌なのだが、子会社と言うことで、お前のところで式を挙げる。日曜日に下見に行く」と言う。その日は「三田村貴史・金子あずみ」の式である。トオルは本社にいいところを見せるチャンスと意気込んだ。
 その貴史(川端竜太)とあずみ(遠山景織子)が打ち合わせに来た。あずみは派手な内容がお好み。貴史は、すべてに生返事で、隙を見て加奈子をくどく始末。加奈子と美咲(木村佳乃)・くるみ(伊藤歩)は貴史に対して不信感を抱く。
 そんな夜、トオルはいつもの公園で拓少年(神木隆之介)とサッカーを楽しんだ。母親がいつも遅いし日曜日も仕事なので、一人で遊ぶのだ。それでも「ママが大好き」という拓少年に、トオルは感心するのだった。
 拓少年が家に帰る。そこには加奈子と美咲がいる。拓は加奈子の息子だった。
 「誰と遊んでたの?」
 「ロスタイムの男って言ってた」
首をかしげる二人。
 「ね、ママ、今度の日曜も結婚式?」と拓が尋ねる。
 「うん。どうして」と加奈子。
 「頑張ってね」。笑顔を作る拓だが、その日は試合だったのだ。
 「スィートブライダル」で貴史とあずみの式の余興劇の練習が始まっていた。死ぬの生きるのと大げさである。横の美咲がそのドラマの台詞のような言葉を発した。相手は、不倫の仲の浜谷つとむ(温水洋一)である。つとむは「明日の晩、大事な話があるから空けて」と言う。
 翌日、貴史とあずみがギフト選びにやって来た。相変わらず貴史はふてくされたまま。見かねた加奈子が、それとなく注意すると貴史が言った。
 「あいつが裏切ったんだ。浮気したんだよ。世間体があるから式をやるんだ」
 と、あずみも「式だけ挙げて入籍はしません」とあっけらかんと言う。唖然とする加奈子である。
 が、加奈子と美咲は、マリッジブルーのあずみの気持ちも分かると話し始める。本当にこの男でいいのかと思い始めると、後腐れない男と会いたくなるのだという。それを聞いたトオルは、柿沼の方が大事だから、ちゃんと式は成功させろと二人に迫る。ところが加奈子と美咲の方が上手。「じゃ逆らうな」とコーヒーをサーブさせるのであった。
 トオル、柊平、純が車に乗って移動していると、公園で拓が練習している。3人が降りると、日曜の試合に出られそうだと言う。応援に行くと約束するトオルだった。
 柊平が初めて撮った披露宴の写真が出来上がった。加奈子と美咲がぼろくそにけなす。有名であろうがなかろうが、加奈子たちにとっては、披露宴の写真ならでは、というのがあるのだ。ウンザリした柊平は、千鶴(内山理名)の会社に出かけた。
 「びっくりした。スウィートブライダル社に柊ちゃんがいるんだもん」
 「待てなかったのか、俺のこと」
 「あの人は才能ないけど、寂しい時に側にいてくれるの。ごめん」
 柊平は去って行く千鶴を見送るしかなかった。
 一方、トオルは「蒲生メンタルクリニック」へ響子(高橋ひとみ)のカウンセリングを受けに行った。「日曜が怖い・・・・・・」。が、騒々しい受診者たちのせいで、トオルの悩みは一向に解決しないのだった。
 また、つとむに呼び出された美咲は、つとむからのプロポーズを受けていた。「慰謝料払えば別れられる」
 「別に結婚したくないの」
 話は平行線のまま、美咲が車から降りると、そこには拓がいる。その晩、拓は、加奈子に翌日の日曜の試合のことをやっと切り出せた。加奈子も仕事を終えてすぐ応援に行くと宣言するのだった。
 明けた日曜。貴史とあずみの結婚式が始まった。加奈子の観察眼では、どうも二人の気持ちは互いに残っているようである。偽りの式はスムーズに進むかのように見えた。だが、柊平の後ろでトオルが「保険」の写真を撮っているのを柊平に見つかり、柊平は怒って出て行く。さらに、お色直しになって、あずみが控え室に閉じ籠もってしまった。美咲が説得する時間稼ぎに、余興で用意した寸劇をトオルと加奈子でやる羽目になった。アドリブで行うその寸劇の台詞を聞いて、貴史とあずみは心を開いた。二人は式場に戻って来た。まるで演出のようなハッピーエンド。だが、トオルと加奈子は時計を見た。「あ、まずい」。二人は後片付けを放り出し、タクシーでサッカー場へ急いだ。
 すでに試合は終わり、拓が一人でベンチに座っている。そこへトオルが到着。「一緒に帰ろう」。と、そこへ加奈子も着いた。それを見て驚くトオル。だがその瞬間、拓は「ママなんか嫌いだ」と走り去ってしまうのだった。

<第3回> 「29歳」
 加奈子(飯島直子)の息子・拓(神木隆之介)のサッカーの試合に、加奈子もトオル(ユースケ・サンタマリア)も遅れてしまったため、拓に謝るすき焼き会が加奈子の部屋で開かれた。そこには同居人の美咲(木村佳乃)も純(阿部寛)も同席した。と、拓が、トオルを「パパに」して「両親」揃って遊園地に行きたい、と言い出す。加奈子、トオル、それに純も「絶対だめ」と拒絶するが、美咲が「いいんじゃないの」と鶴の一声。犬猿の仲の「夫婦」による遊園地行きが決まった。
 トオルの元直属課長・柿沼(山西惇)は、玲子(池津祥子)との結婚式に関して、怒って辞めた柊平(妻夫木聡)に写真を頼めなど無理難題を吹っかける。本社に戻りたいトオルはいい返事ばかりするが、加奈子はそこが苛立たしい。
 くるみ(伊藤歩)は仕方がなく柊平を説得に出かける。てっきり断られるだろうと思っていたが、柊平は「先輩のためなら」と引き受ける。それどころか、「田口さん(省吾)のことを、好きなら落とすように」と暗にけしかけるのだった。
 トオルはいつものように、響子(高橋ひとみ)のセラピーに出かけた。そこには、美咲の不倫相手・つとむ(温水洋一)が出席していた。仮面夫婦、不倫・・・・・・と悩みを打ち明けている。つい口を出しそうになって響子に怒られるトオルだった。
 加奈子、トオル、拓の3人による「一日家族」の遊園地行きの日が来た。加奈子とトオルは、拓のご機嫌を取ろうと、一所懸命幸せな夫婦を無理に演じている。ともかく、拓は楽しそうである。
 二人が休みを取っているこの日、スウィートブライダルに「ダイエットしてマーメイドドレス着て、20代の内にあこがれのガーデンウエディングを挙げたい」という29歳11カ月半の恵美(揚田あき)がやって来た。「あと2週間!」。美咲は大慌てで会場を探し始める。
 千鶴(内山理名)と省吾(東根作寿英)も現れた。省吾は、写真は柊平に撮ってもらいたい、と言う。元恋人の千鶴は複雑な気持ちになる。
 そんな折、柿沼まで怒鳴り込んで来た。携帯で連絡を受けたトオルと加奈子は、拓が怒るのも承知の上、遊園地を切り上げて、社に向かう。柿沼は、細かい式の連絡を会社にファックスしたのが気に入らないと怒っているのだ。「?」となるトオル。どうも社内に切れていない女がいるようである。
 純が車に乗っていると、平日なのに拓が歩いている。呼び止めると「名古屋に行きたいから連れてって」と言い出す。取りあえず乗せて、純はパーキングエリアから加奈子に連絡した。名古屋には加奈子と別れた夫、拓の父親がいるのだ。加奈子はちょっと考えて「好きにさせて」と純に伝えるのだった。
 省吾と千鶴の式のリハーサルが始まった。省吾が説明を聞いている間に、千鶴のもとへ柊平がやって来た。「今でもお前が好きだ。やり直そう」と柊平。困惑する千鶴だった。
 そのころ、純と拓は名古屋の父親のマンションに到着した。拓は、父に見せようと描いて来た親子3人の絵を握り締めていた。が、扉の前で立ちすくみ、渡せないまま、純の車に戻って来るのだった。
 柿沼と玲子の写真撮影も行われていた。相変わらず柿沼は横柄で、疲れた休ませろ、スタジオを延長しろ、ブライダルの仕事なんかママゴトだと、あらゆる因縁をつけてくる。さすがのトオルも聞き捨てならないと、拳を握り締めて柿沼に迫った。と、加奈子が二人の間に割り込んできた。にっこり微笑んだ加奈子、振り向きざまに柿沼にパンチを食らわせ言った。「ガーデンウエディングのキャンセル出たよ!」
 その会場は恵美に回った。トオルは、本社へ帰還する夢が遠ざかったものの、何かうれしい。
 ところが、なんとその日は土砂降り。絶望する恵美だったが、しばらくして薄日が差してきた。
 「やれる」
 加奈子たちは芝生にたまった水を雑巾で吸い取り始めた。そこへ拓が現れた。純が母親の仕事振りを見せようと連れてきたのだ。服が汚れるのも構わず、人の幸せのために身を粉にする母親を見て、拓はうれしくなり、手伝い始めた。
 恵美の披露宴は、加奈子たちの奮闘で美しい庭で執り行われた。だが、恵美が投げ上げたブライダルブーケは、なんと美咲が受け取ってしまった!


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