<第7回> <第8回> <第9回>
<第7回>
朝の喫茶店。真子(大竹しのぶ)親子を目撃してしまった神宮寺(中井貴一)。真子の息子の名前は祥(反田孝幸)。祥が去る様を訝し気に見ていた神宮寺に真子は気付いた。
大学に行き、さっき見た光景の衝撃も収まらぬまま真子を問いつめる神宮寺。やはり祥は神宮寺の息子だった。17年前に一夜を共にした時に出来た子供だったのだ。真子は言う。若いうちに子供を生み、育てたかったがための確信犯であること。その相手には神宮寺が相応しかったこと。そして神宮寺は何の責任を感じる必要がないこと。真子の話を愕然と聞くしかない神宮寺。
一方美咲は、神宮寺と過ごした一晩のことを思い、神宮寺の気持ちを信じようとしていた。
そんな美咲の思いをよそに、神宮寺は真子との間に生まれた息子のことで激しく苦悶していた。だが神宮寺がそんな状況になっているとは知らず、美咲は神宮寺のマンションを訪ねてしまう。ドアスコープから美咲の姿を覗く神宮寺。だが神宮寺は固い表情をしたままその場を動けない。寂しそうに去る美咲…。そして美咲が去ったのを確認すると、つぶやく神宮寺。
「…私のどこに…愛する資格がある…」
翌日、神宮寺は再び真子に説明を迫った。そして子供の気持ちを考えたことがあるのかとも。すると真子は言った。
「自分のトラウマと一緒にしないでよ」「ウチは、キミの家族とは違う」
それでも神宮寺は負けじと言い返す。自分勝手な理屈だけでセックスをして子供を生んだ真子にはわからないことがあると。そんな神宮寺に真子は、17年前のあの夜、自分は神宮寺を愛していたからセックスをした、だが神宮寺の心の傷は想像以上に深かったため、身を引くことにしたのだと言い返した。黙るしかない神宮寺。
同じ頃、美咲は医師に、癌の再発の恐れがある旨を伝えられ、激しく動揺していた。
かたや神宮寺は美咲とのこれまで、そして幼少時の忌わしい記憶、真子の言葉をかわるがわる思い出し、すっかりすさんでしまった。
美咲は、一生癌の再発に恐れながら生きねばならない自分には、結婚や出産などの平凡な幸せは諦めなければならないのかと呆然。思わず神宮寺の家の電話番号をプッシュしてしまう。だが、荒れている神宮寺は電話に出ない…。やはり恋などしてはいけないのだと思い、涙を滲ませる美咲。
翌日、慎太郎(つんく)に癌のことを打ち明けた美咲は、そういうことは自分でなく神宮寺に話せと言われる。
「逃げんなよ、怖がんなよ美咲…信じろよ、あいつのこと。あいつを好きになった自分のことをさ」
慎太郎の言葉で神宮寺の元を再び尋ねる決意を固めた美咲。
だがマンションを訪問した美咲に、神宮寺は信じられない冷たさで接するのだった。
「あの夜のことは忘れて欲しい」「私には私の人生がある、生き方がある…そこに入り込まないでくれ」
そう言うや、ドアを引く神宮寺。無情に閉まるドアに愕然とする美咲…。
<第8回>
息子に会いたいと真子(大竹しのぶ)に申し出た神宮寺(中井貴一)だが、真子には、初めて心から惚れた女である美咲(稲森いずみ)を幸せに出来ないような男を父親として会わせるわけにはいかないとつっぱねられてしまう。
数日後、真子が美咲のバイト先に現れた。神宮寺と息子のことを正直に話す真子。最近大学に姿を見せない美咲に、真子は、子供の父親として揺れている神宮寺だが、そんな神宮寺とちゃんと向き合ってみてはと提案する。だが、真子の言葉も届かず、美咲はもう自分は神宮寺に必要とされていないと呟く…。
同じ頃、真子の息子・祥(反田孝幸)が神宮寺に会いに、大学を訪れていた。真子の知らないところで会うのはフェアじゃないと言って祥を追い返す神宮寺。冷たいと言う祥に神宮寺は、真子の許可をとって近いうちに会おうと言うのだった。
その日の夕方、東洋軒に今度は蘭蘭(ビビアン・スー)が現れた。今度こそ神宮寺と父との写真を渡して欲しいと言う蘭蘭。蘭蘭はてっきり美咲と神宮寺が恋人同士になったものと勘違いしているのだ。困惑しながらも拙い言葉で神宮寺との今の関係を話し、蘭蘭の頼みを断る美咲。
そして翌日。神宮寺の教授室を訪れた慎太郎(つんく)は、美咲とのことは遊びだったのかと怒りの形相で詰め寄った。そこに今度は姉を邪険にされ怒りでいっぱいの丈二(吉沢悠)が飛び込んできた。が、丈二を止めた慎太郎が神宮寺の頬を拳で殴った…! 止めに入った蘭蘭。美咲と神宮寺の間には二人にしかわからない事情があるのだと…。
かたや美咲は、癌再発の危険性を医師から言われ、再び落ち込んでいた。そんな美咲の元に安東(川岡大次郎)から電話が入った。講演の話は具体的になってきていると言う。問題を抱え過ぎて壊れそうな美咲は、もうちょっと返事は待って欲しいと安東に告げるのだった。
明くる日、神宮寺は再び真子に、息子に会わせて欲しいと依頼。神宮寺は「血のつながりから逃げるような、自分の父親のような真似はしたくない」と言う。
そんな神宮寺に真子は息子と会わせるかわりにひとつだけ条件をつけた。美咲と向き合い、美咲を愛しているという事実をちゃんと受け止めること…。
そして数日後、とある河原の土手で会った神宮寺と祥。たどたどしいながらも、なんとか言葉を探し、自分と自分の父親の話も告白する神宮寺。第一印象は冷たい感じがしたと言う祥。だが「たとえどんな親でも心底恨むことって出来るのかな」とも祥は言う。そして、「逆境の心理学」には愛が詰まっていたとも…。「そう言われたのは2度目だ。君と同じことを言ってくれた人がもうひとりいる」と答える神宮寺…。
一方、講演のことを慎太郎に相談していた美咲は、前向きに検討してみてはと慎太郎に諭される。神宮寺とのことで立ち止まっていてはいけないと慎太郎は言うのだ。 そんな慎太郎に美咲は、神宮寺には子供がいるのだと告げる。それを聞いた慎太郎は美咲を強引に引っ張り…。
<第9回>
真子(大竹しのぶ)と神宮寺(中井貴一)は、二人の間に子供がいることが大学にバレ、正式に入籍するか、どちらかが大学を辞めるように学部長に言われてしまう。
その頃、癌再発の恐れはないと診断された美咲(稲森いずみ)は、慎太郎(つんく)の家への引っ越しの準備を着々と進めていた。
なんとか神宮寺と美咲の仲を取り持ちたい蘭蘭(ビビアン・スー)は、いつものプールで木曜の1時に二人が落ち合うようとりはからう。
神宮寺がプールで会いたがっていると美咲に告げる蘭蘭。だが、その日は引っ越しの日。プールには行かないと言い切る美咲…。
数日後、神宮寺は真子に、大学の件を片付けようと電話で提案する。神宮寺は、何かを決意したかのように、その手で今度は美咲の家に電話をする。だが美咲の電話は引っ越しの真っ最中で、留守電になっていた。それでもメッセージを残す神宮寺。
「1時にプールで待っている」
だが、美咲は留守電のランプが点滅しているのに気付かない…。
どんどんダンボールを片付ける美咲。その時、ふと神宮寺が自分に会いたがっているという、蘭蘭の言葉を思い出す。たまらず部屋を飛び出し、プールに向かう美咲。
一方、大学の件を片付け、美咲の待つプールへ向かおうとしていた神宮寺と教授室に居合わせた真子の元に電話が入る。祥(反田孝幸)が車にはねられたというのだ。病院へ駆け付ける神宮寺と真子。
そんなこととは知らず、待ちぼうけを食った美咲は、やはり神宮寺が自分に会いたがるはずなどないのだと諦め、部屋に戻った。
美咲が帰った後でプールに駆け付けた神宮寺は、美咲がすでに待っていないことを確認すると、プールから飛び出して道を走り出した。
道を走っていた神宮寺は、信号待ちで止まっていたトラックの中に慎太郎と談笑する美咲の姿を目撃してしまう。二人を見送る神宮寺…。
その夜、真子から祥が無事だったことを電話で聞いた神宮寺は、真子に美咲の話をする。今日は美咲にとって、慎太郎というパートナーと新しい生活を始める日だったのだと…その口調は、穏やかだった。
数日後、講演を控えた美咲は、安東(川岡大次郎)から激励の言葉を受けた。大学のみんなに講演のチラシを配っていた安東は、チラシを神宮寺にも手渡した。チラシを見て驚く神宮寺。
そして講演当日。美咲は勇気を振り絞って、これまで克服してきたことを訴えた。自分の辛さを話せたのは、弟と、長いつきあいになる友人の慎太郎の二人だけだったと。
そんな美咲の姿を講演会場の片隅でじっと見つめる神宮寺は…。