<第10回> <第11回> <第12回>


<第10回>
 なずな(木村佳乃)から別れを告げられた宗一郎(反町隆史)。
 久我(椎名桔平)の海外赴任を聞かされた夏樹(江角マキコ)。
二人きりで飲もうと相談がまとまっていたその夜、冬美(石田ゆり子)春子(西田尚美)が相ついで帰って来た。「ま、よかった。二人きりになったらやばかったかも」と言う宗一郎を思わず見やる夏樹で…。
 その日の夜遅く、久我から電話があった。最初に出た宗一郎は、「女の人安心させるのが男の役目と言ったでしょ」と、夏樹を置いてきぼりにしてしまっていいのかと久我を責めた。
 しかし、夏樹は日本を出発する日を久我から聞くと、あっさりと電話を切ってしまった。そして「すがってもしょうがない」明るく言った。
 その頃なずなは、北海道に帰ることをやめ、東京に残る決心をしていた。
 大学で勉強した栄養学を生かし、自分の意志で就職をしたいと思ったのだ。
 偶然本屋でなずなと会い、このことを聞いた小林(伊藤英明)は、なずなを励ますと、持っていた写真の袋を取りだし、なずなに渡してくれた。
 中には、宗一郎が撮ったなずなの写真。そしてなずなが撮った宗一郎の写真が入っていた。じっとその写真を見つめるなずな。
 数日後、久我が日本を発つ日がやってきた。
 店内のカレンダーを見つめるだけの夏樹は見送りに行く気配を見せない。
 その時だった、冬美が突然やってきて夏樹を強引に空港に連れてきたのだ。
 空港では、医師仲間と妻子に囲まれ見送られる久我の姿があった。
 側に行って直接さよならを言えない夏樹に、冬美はポスターの裏にメッセージを書いて見せるように言った。
“夢かなっておめでとう!ガンバッテ”。久我は笑顔でこのことばを受けとり、機上の人になった。
 その夜、帰宅した宗一郎は冬美に対し思わず声をあらげていた。
久我を見送った後、「一人になりたい」といった夏樹をなぜひとりきりにしてしまったのかと冬美を責めたのだ。
 「こんな時にひとりになれる奴じゃないだろう」。
 本気で夏樹を心配する宗一郎は、あわてて家を飛びだして行った。 
 しばらく思いつく所を探し回り、宗一郎はようやく公園で夏樹を見つけた。
 家にも帰りたくなかった。誰がいるとこは辛かった…。それでも夏樹は、こうして探しに来てくれた宗一郎をみると安心したように涙を見せ、肩にもたれかかった。「帰ろう」宗一郎は夏樹の肩を優しく抱き寄せて言った。
 「女友達が埋められる寂しさと男の人が埋められる寂しさは違うのね。本当の寂しさは男が救うのかもしれない…」。
 宗一郎との口論の後、遠藤の元に来ていた冬美は、ポツリとつぶやいた。
 そして、この言葉どおり夏樹は今しっかりと宗一郎の優しさに抱かれようとしていた…。

<第11回>
 夏樹(江角マキコ)と冬美(石田ゆり子)が春子(西田尚美)の家を出て行く日が近付いてきた。2、3日仕事で北海道に行かなければならない宗一郎(反町隆史)は、帰って来た時、夏樹はもうこの家にはいないかもしれないと思うと、やはり複雑な思いにかられた。
 だが、数日後宗一郎が帰宅してみると、居間からは、以前と同様夏樹、冬美らの元気な笑い声が響いてきた。聞けば夏樹は明日が引っ越しで、今夜はその門出を祝っての食事会だという。そして、もう一つ。遠藤(加藤晴彦)も加わっての今夜の集まりには、冬美の結婚を祝う意味も込められてという。
「え…?」驚く宗一郎は、その時はじめて、冬美のお腹には遠藤の子が宿り、遠藤は一時は堕胎を決意した冬美を思いとどまらせプロポーズしたことを聞かされたのだった。
 夕食後、荷物をまとめ終わった夏樹は思い切って宗一郎の部屋を訪ねた。
 「挨拶しとくかと思って…」照れた表情で立つ夏樹を部屋に招き入れ、宗一郎はお土産と称してミニチュアの東京タワーを渡した。
 すっぽりと手のひらに収まるその東京タワーは、いつもここから一緒に眺めた人差し指サイズの東京タワー。
 翌朝、夏樹は思い出の東京タワーを持って春子の家を出て行った。
 その頃、なずな(木村佳乃)は、仕事が見つかるまでとファーストフードでのバイトを始めていた。なずなを偶然店の前で見掛けた小林(伊藤英明)は、東京を離れられないのは宗一郎がいるからではと言い「素直になった方がいいよ」と優しく言うのだった。
 ある日、フリーとしての仕事も安定してきた宗一郎におもいがけない話しが持ち掛けられた。以前夏樹と話したいろんなものの後ろ姿を撮る『ドゥ・デリテール』という企画が新雑誌に取り上げられることになったのだ。
 誰よりも夏樹にそのことを伝えたいと思った宗一郎は、躊躇していた夏樹への電話を思い切ってしてみることに。
 久し振りに交わす会話は仕事のこと、引っ越しの朝なぜ起こしてくれなかったのかという済んでしまった恨み事……でも。東京タワー、ラジオから聞こえるスピッツの曲と離れていても共有するものは同じで、二人はしあわせな時間を過ごしたのだった。
 数日後、春子の家に帰国した久我(椎名桔平)がやってきた。
 冬美は、引っ越して間もないころ届いた夏樹宛のエアメールのことを知っていて、久我が夏樹にプロポーズし、その返事を聞くために来たのだと察したが、その時プロポーズの話しをはじめて聞いた宗一郎は…。

<第12回>
 久我(椎名桔平)と会うことになっている前夜、夏樹(江角マキコ)は宗一郎(反町隆史)を呼び出した。本当に会いたいと思ったから…。
 でも宗一郎は、夏樹が久我のプロポーズを断わらず、自分の気持ちにも整理を付けかねていることに気付くと「俺になにをしろっていうの?結婚前の一夜のアバンチュールでも付き合えって?」と茶化すように言った。思わず宗一郎の頬を叩く夏樹。結局二人は気まずいままその夜は別れてしまう。 翌日。夏樹は久我と会い、考えがまとまっていないことを正直に打ち明け、話せる時がきたらもう一度会うと約束したのだった。
 その頃宗一郎は、冬美(石田ゆり子)と会い、夏樹の気持ちをはかりかねていることを話した。夏樹は一度関係してしまったことで、相手に対する責任を感じてしまっているのではと思っていたのだ。
 冬美は、人のことを先に考え本心を言わない似た者同志と宗一郎と夏樹のことを指摘しつつ、自分が夏樹の本心を聞いてみることを約束してくれた。
 その夜、春子(西田尚美)と夏樹のマンションを訪ねた冬美は、早速夏樹に聞いていた。「久我さんと宗一郎どっちが好きなの?」。
 夏樹は二人とも好きだと言った。そしてさらに一歩進んで「どっちとやっていきたい?」と尋ねられ、「前にいて手を差し延べてくれるのが久我さん。後ろにいてずっとそこにいてれるのが宗一郎。私は前にいて手を差し延べて欲しいんだと思う」と言ったのだった。
 でも、二人とも傷つけたくない…それが夏樹の本心だった。
 ある日、宗一郎は『オーバータイム』に夏樹を呼び出した。
 先にいた夏樹を見つけた宗一郎は挨拶もそこそこに夏樹の部屋へ行こうという。そして、はじめて入った夏樹の新居で、いきなり夏樹を抱こうとしたのだ。「やめようよ。こんなの…」驚いて宗一郎から離れる夏樹。
 だが、宗一郎は「そのつもりで部屋に入れたれたんでしょ」というと、久我とよりを戻す前に、そしてなずな(木村佳乃)とよりを戻そうと思うからと、これで最後にしようとまで言った。さらに、これまでは可愛そうだと思ったから優しくしただけと夏樹が耳を疑うようなことを口にしたのだ。
 夏樹の部屋を出た宗一郎はなずなの働くファーストフードの店に向かっていた。久し振りに向き合う宗一郎となずな。
 今度は、なずなが宗一郎を励ます番。なずなは、「楓くんの力にはなかなかなれそうにないな」ともどかしそうに言い、会いに来てくれて嬉しかったこと「あの頃は本当に楽しくて、いい恋をしていたと思う」と宗一郎に伝えた。
 数日後。夏樹は久我の病院を訪ねた。久我は病院近くのグラウンドで子供たちとサッカーに興じていた。はじめてみるいきいきとした久我の姿。
 久我に会って答えを決めようと思っていた夏樹は「結婚したいと思いました」とその時はっきりと言った。でも、どうしても隠しておきたくないと、久我が去った寂しさと悲しさで、宗一郎と関係したことも打ち明けた。
 「話してくれたということは、僕とやっていくことはできないということだろうか…」聞かされた久我は戸惑いながら言った。返答できない夏樹。
 でもそんな夏樹に久我はもう一度言った「乗り越えられないかな二人で。もう手放したくないんだ。一生一緒にいたいんだ」。
 冬美と遠藤(加藤晴彦)は、結婚式の打ち合わせに夏樹の部屋にやって来たときに、久我とのことを聞かされた。
 でも夏樹は、どうしても宗一郎が急にあんなことをいったのか分からないと言う。そんな夏樹に遠藤は思わず言った。「あなたが、一緒にやっていきたいのは久我さんだと言ったからでしょ」と。
 それは夏樹が冬美に聞かれて話したこと。それを宗一郎に話したことをはじめて知る夏樹…。「何でそんなこと言ったのよ!」夏樹は冬美を激しく責めていた。


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