あらすじ
<第10回> <第11回> <第12回>

<第10回> 「プロポーズされちゃった」
 「あなたも弁護士さんなんですか?」。大介(ユースケ・サンタマリア)は事務所のエレベーター前で呼び止められた。ファッションデザイナーの小倉直也(マイケル富岡)。イタリアのメーカー、ボルツァーノとの業務提携を英子(川島なお美)が進めている。「相談なら長沢先生にすればいいでしょ」「それができないんだよ」。
 子供の認知と月百万円の養育費を請求されているという。相手は村上恵子(今井恵理)という女。1年前、小倉の出演したテレビ番組でアシスタントをしていた。収録が終わってからスタッフと飲みに行った中にいた。意気投合してカラオケでデュエットしたまでは覚えている。翌朝、小倉が事務所のソファで目覚めると下着姿だった。「よく覚えていないんだ」。小倉は自信なさげにつぶやいた。「それは大変ね」「ああっ!」。振り返ると英子が無表情で立っていた。彼女に相談できないのは当然だった。実はこの2人、仕事を通じて出会ってから、ひそかにつきあっていたのだ。有名人である小倉はマスコミに知られたくない。業務提携の話が水泡に帰す可能性もある。「お願いするわ。なんとかしてあげて」。最初は憤然としていた英子だったが、大介と洋一(いしだ壱成)に泣きついた。
 2人は問題の夜の小倉の足取りをたどることにした。カラオケ屋の受付嬢が覚えていた。「女の人と一緒に出ていきましたよ」。事務所周辺を巡回していた警備員が帰っていく恵子を目撃していた。その時刻から逆算すると2人が事務所内にいたのは20分あまりにすぎない。「これは微妙だな」。2人は関係をもったのか、それとも何事もなかったのか。「私と花村でどう?」。仕事が手につかない英子は大介と実地検証した。すると事務所にいられるのはわずか13分に縮まった。「2人がことに及ぶのは不可能です」。大介が自信たっぷりにこの結果を恵子にぶつけると、彼女はカラオケ屋から事務所へむかう別ルートの存在を伝えた。たしかにタクシーがその抜け道を 通っていれば、2人が事務所にいた時間は長くなる。「もう認知するしかないのかなあ」。小倉はすっかり弱気になったが、英子はひるまなかった。「裁判しましょう」。英子は小倉から結婚を申し込まれていた。「はっきりシロクロつけましょう」。大介も英子の決断に同意した。
 一方、恵子は弁護士の青木(六角精児)と共にマスコミを集めて記者会見を開いた。「あの男は責任もとらずに逃げるつもりなんです」。しかし子供のDNA鑑定については拒否した。「この子の一部を切り刻むなんて耐えられません」。そう言うなり恵子は泣きくずれた。
 弥生(水野美紀)のもとに小倉の秘密を知っているという匿名の電話がかかってきた。英子と大介が会いに行くと、植村遥子(土屋久美子)という女が現れた。「小倉さんは私のもの。なの行為をしているらしい。だから英子のことも知っていたし、問題の夜の一部始終もノートに分刻みで記録していた。「あの女、5分後には事務所から出てきたわ」。このノートの他の日の記録が本当なら、裁判で有力な証拠になる。ところがページをめくるうちに英子の表情が曇ってきた。小倉は手当たり次第に女を事務所に連れ込んでいたのであった・・・。

<第11回> 「OLを救え」
 大介(ユースケ・サンタマリア)をたずねて若い女性の3人組がキャピタル法律事務所にやって来た。「やあ、どうも」。山村佳恵(本多彩子)、根岸愛子(MIKI)、倉田素子(山口あゆみ)とは昨晩の合コンで会ったばかり。弟の孝介(仁科克基)に頼んで集まってもらい、洋一(いしだ壱成)も参加していたのだが、彼女たちはずっと浮かない表情だった。「昨晩はすみませんでした。私たち裁判をおこしたいんです」。
 3人はカイゼル物産という商社の同僚OLだった。彼女たちは時を同じくして上司から退職を勧告された。佳恵は会社のハガキを私用に使っていたのを咎められた。愛子はキャバクラでバイトしていたのがバレた。素子は持病の発作で休憩していたのを職務怠慢とみなされた。いづれも社則違反を理由に3人とも自ら退職届けを提出させられた。大介は英子(川島なお美)に相談した。「同じように辞めさせられた人、他にいないかしら」。人数が多いほど裁判は有利になる。「いるにはいるんですけど、 ちょっと問題が」。とにかく大介は3人と同時期に退職した河田裕美(奥菜恵)に 会ってみることにした。「風俗でバイトしていたのよ。クビになっても当然よね。」と陰口をたたく佳恵たちに気付いた裕美は「裁判なんかしたって会社に勝てるわけないでしょ。私がむかついているのは、会社よりもこいつらよ」。裕美と佳恵はつかみあいになった。
 事務所に戻った大介は倉本(佐戸井けん太)から佳恵たちの弁護を引き受けないようにと命じられた。キャピタル法律事務所ではカイゼル物産と顧問契約を結んだとい う。「今後は彼女たちと個人的な接触もさけてくれよ」。所長の葛西(中山 仁)からもクギを刺された。そのつもりでいたが、佳恵たちから頼られるとついつい相談に乗ってしまう。そんな矢先、素子が倒れた。病院にかけつけてみると、ベッドの傍らには裕美が付き添っていた。失業保険の出ない素子は無理してバイトを続けていた。
 「許せない。裁判しよう。弁護士の出番だね」。大介が戸惑っていると、隣りのベッドで患者と話していたスーツ姿の女が近寄ってきた。「何かお困りですか?」。その女、竹村百合子は弁護士だと名乗った。
 佳恵たちの弁護は百合子が引きうけることになった。しかし裕美だけは加わらなかった。「悔しくないのかな」。素子は首をかしげた。とりあえず大介は胸をなでおろした。実は孝介が就職活動の真っ最中。なんとカイゼル物産に内定が決まりかけていた。兄貴としては弟の足を引っ張るようなマネはしたくない。
 皮肉な巡りあわせで、英子がカイゼル物産側の弁護を担当することになった。「私は会社に和解を勧めるつもり。原告の女性たちも早く和解金をもらって次のことを始めたほうがいい」。佳恵たちに同情的だった洋一と弥生(水野美紀)は、それを聞いて安心した。「弁護士って口固いんだよね」。大介は裕美から原告に加わらない理由を打ち明けられた。「私、風俗なんかやってない」。裕美は妻子ある同僚の永井とつきあっていた。2人が秘密で借りていたマンションにたまたま風俗店が入っており、 裕美がバイトしていると誤解されたらしい。「本当のことバレたら、彼の立場がヤバくなるから。私が会社辞めるくらい、いいのよ」。裕美は永井のことを愛し、そして信じきっていた。
 女弁護士の百合子はとんだ食わせ者だった。佳恵たちが手渡した着手金百万円を持ったまま行方をくらましてしまった。病院でカモを探していたらしい。「裁判あきらめよう」「仕方ないわね」「会社相手に裁判するなんて、身のほど知らずだったのよ」。がっくりと肩を落とす3人を目の当たりにして、大介はつい叫んでしまった。
 「俺が君たちを弁護する!」。
 しかし事務所では大介の決断は一蹴された。「うちの方針に異論があるなら辞めてくれてけっこうだよ」「君に似合わない職場に誘って申し訳ないと思っていたんだ」。倉本と葛西に挑発されて、大介は引くに引けなくなった。「だったら辞めさせていただきます!」「ちょっと冷静になって!」。英子が制止するのを振り切って、 大介は事務所を飛び出していった。そして大介は個人事務所を立ちあげた・・・。

<第12回> 「大結末」
 大介(ユースケ・サンタマリア)は裕美(奥菜恵)が元恋人の永井(井田州彦)のパソコンから見つけた社内メールを証拠として法廷に提出した。それによるとカイゼル物産は規則違反を口実にして強引なリストラを進めていた。「それは証拠になりません」。洋一(いしだ壱成)も社内メールを証拠提出した。日付と時刻は大介サイドのメールとまったく同じ。しかし内容はただの社内親睦会の告知。リストラの文字などどこにも出てこない。「これはカイゼル物産から正規の手続きで入手したものです。どちらの信用性が高いかは明らかです」。黙りこんでしまった大介を佳恵(本多彩子)と愛子(MIKI)が不安そうに見つめた。
 「人の就職をダメにしといて、いい気なもんだよ」。大介がマンションに帰ると、弟の孝介(仁科克基)から嫌味を言われた。カイゼル物産から内定取り消しの通知が届いたという。大介が裕美たちの弁護を担当しているからだ。
 例のメールによると、リストラを指示したA35号という人事部の文書があるらしい。「向こうが出さない気なら、ちょうだいするしかない」。大介と裕美はカイゼル物産本社に潜入した。裁判の打ち合わせに来ていた英子(川島なお美)と洋一にあやうく出くわしそうになった。
 A35号の文書はファイルから消えていた。この文書の存在には英子たちも注目していた。「その文書、見せていただけますか?」。しかし高岡専務(北村総一朗)と秘書の永井は首を横に振った。「企業経営には陰の部分が必ずあるんです」。
 その夜、洋一は屋台でヤケ酒をあおった。「もう止めましょうよ、あんな会社の弁護」。しかし、洋一はこの裁判に勝ったら、大介を呼び戻してくれるよう葛西所長(中山仁)に頼んでいたのだ。
 裕美は永井から呼び出された。ヨリを戻したいという。「俺は来年、重役になる。高岡専務は俺のあやつり人形だ」。リストラ計画の発案者も永井だった。「次の公判でそっちが出してくるネタを教えてくれたら、会社に復帰させてやるよ」「私にスパイしろって言うの!」。もちろん裕美は言下に断った。
 大介が裕美を慰めているとケータイが鳴った。弥生(水野美紀)からだった。「聞いたのよ、A35号って文書は」。大介はあわててさえぎった。「俺たちは敵味方なんだぞ。守秘義務があるだろ」。弥生の気持ちはうれしかったが、大介は弁護士としての良心を捨てる気にはなれなかった。
 弥生はまだA35号の文書がどこかにあると知らせてくれようとしたのではないか。
 「あいつ、風呂場に仕事関係の書類を隠していたの。もしかしたら」。裕美は永井のマンションを訪れた。「私、意地張ってたわ」。永井はあっさり裕美の嘘にひっかかった。「シャワー浴びてくるから」。裕美は洗面台の裏からカイゼル物産の封筒を見つけた。中身はA35号文書だ。労働組合とのつながりの弱い女子社員を自己都合退職に追いこむこと。「これで裁判に勝てるね」。裕美はケータイで大介に知らせた。
 大介はマンションの火災警報機を押した。「火事だ!」。混乱に乗じて裕美はまんまと部屋から抜け出した。
 しかし好事魔多し。夜道を走ってきた2人は数人のチンピラとぶつかった。その拍子に封筒は川の中に。追いかけてきた永井は鼻先でせせら笑った。流れていった封筒はもう見えなかった。
 裁判当日がきた。洋一は急きょ永井に証言を要請した。予想外の展開に永井は戸惑いつつも証人席に立った。洋一は永井にA35号文書の存在について問いただした。
 「そんなものは存在しません」。法廷で嘘をつけば偽証罪だ。「安心しました。終わります」。洋一はあっさりと引き下がった。大介の反対尋問が始まった。「永井さん、あなたは何も隠していないと言いましたね」。大介はカバンから1通のファイルを取り出した。「まさか?」。高岡専務と永井の顔に緊張の色がはしった。「じゃあ、こんなことを書いた文書なんかないとおっしゃるのですね」。大介はリストラ計 画の概要を読み上げていった。永井は思わず叫んでいた。「バカな!あの書類は川に沈んだはずだ!」・・・・・・。


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