放送内容詳細 阿地川盤嶽(役所広司)は、源助(梨本謙次郎)とおりん(広岡由里子)という宿場町の近くの農民夫婦と知り合いになる。空腹そうな盤嶽を見た夫婦が、畑での昼食に誘ったのがきっかけで、野良仕事を手伝うようになった。汗をかいて作物を作り、それを食べる。雨の日には寝転んで雨の音を聞く。そんな生活が盤嶽には理想に思えた。 源助夫婦の家に滞在するうちに、お蝶(桃井かおり)という不思議な女が宿場やその周辺の農民たちから、「生き神様」とあがめられていることが分かってきた。お蝶の家には「正直庵」の額がかかり、悩みを持った住民が訪れる。久左衛門(國村隼)という、鼻の下にどじょうヒゲをたくわえた男が「お告げ」を伝えるとともに、お守りのお札を与えている。お札は一枚二百文する。 お札を作るのはお蝶。「お告げ」の中味を久左衛門に耳打ちするのもお蝶である。源助とおりんは夫婦になって五年間子供が出来なかったが、お札を貰うようになってから子宝に恵まれた。それ以来、おりんはお蝶を神様のように思っている。 源助が屋根から落ちて足と腰を痛めた。それを知ったお蝶が、怪我を治すというお札を売りにくる。盤嶽はそんなお蝶に、「人の弱みにつけこんでお札を売るとは」と言う。お蝶は、「盤嶽さんは強いからいいが、弱い人には神様との間を仲立ちする人が必要」と譲らない。 生糸問屋の清兵衛(石橋蓮司)の娘・お糸(田中規子)は、身の上相談をきかっけに、久左衛門に夢中になっている。清兵衛はそこに目をつけて、お糸と久左衛門を一緒にさせて、お告げとお札の商売を自分で仕切り、街道筋の善男善女から金を巻き上げようとたくらんでいた。お蝶と久左衛門とは愛人関係にある。しかし久左衛門は、若いお糸と通じてからは、何でも自分に指図するお蝶がうとましくなっていた。 源助はお札よりも薬で怪我を治そうと思い、盤嶽に膏薬を買ってきて欲しいと言う。薬屋の前で盤嶽を見たお蝶は、「源助さんは信心が足りないから治らない」と言う。そして盤嶽にも、「お札を貰えば仕官の道が開ける。近いうちに幸運が訪れる」と言うのだ。 その直後、盤嶽は道で百五十両もの大金を拾う。すぐに落とし主が出てきたが、岡部藩勘定方、花房寅之助(芦屋小雁)と名乗る武士は、「公用金を江戸に届ける途中だ。後日訪ねて来れば、この礼に仕官の世話をする」と言った。どこかでその言葉に期待してしまう盤嶽である。 清兵衛が久左衛門に、お糸と一緒になって「お告げ商売」をするように持ち掛ける。ただしお蝶と別れるだけでは駄目で、「始末しないと」と言うのだ。久左衛門は応じた。 「正直庵」に信者が集まっている。久左衛門が熱にうなされながら、「神のお告げだ」と言い、「この中に災いをもたらす者がいる」とお蝶のことをじっと見る。迷信というものは恐ろしい。これまでお蝶を神のように思っていた宿場や近在の人間が、お蝶に石を投げ、後を追いかける。その裏で、清兵衛たちがいろいろと画策してもいるが。 久左衛門がこれまで貯めた金を持って、お糸と姿をくらました。追い詰められたお蝶は初めて、自分が人をだましてきた報いが来たのだと悟る。それでも、「自分には久左衛門が必要、連れ戻してほしい」と盤嶽に頼むのだ。 盤嶽が活躍して清兵衛一家の悪だくみは失敗する。不思議なことに、お蝶を殺そうとまでした久左衛門が、またお蝶と旅に出る。「男と女とは何だ」と考え込む盤嶽である。 岡部藩主に花房寅之助を訪ねた盤嶽は、寅之助が公金を横領して逃亡中なことを知る。また騙されて、それでも旅を続ける盤嶽である。 閉じる もっと見る 出演者 阿地川盤嶽・・・役所広司お蝶・・・・・・・・・・桃井かおり清兵衛・・・・・・・・石橋蓮司久左衛門・・・・・・國村隼源助・・・・・・・・・・梨本謙次郎おりん・・・・・・・・広岡由里子花房寅之助・・・芦屋小雁 スタッフ 企画 能村庸一 西岡善信原作 白井喬二<山中貞雄シナリオ集より>脚本 中村努音楽 谷川賢作プロデュ-サ- 遠藤龍之介 保原賢一郎 西村維樹監督 田中幹人制作 フジテレビ 映像京都