あらすじ
<第10回> <第11回>

<第10回> 「今夜告白します!」
 あたる(菅野美穂)は天羽(田辺誠一)のベッドで目ざめた。あわてたのは天羽のほう。「寝てないよな」「寝たよ」。からかうあたる。もちろん昨夜は何事もなかった。仕事で疲れきっていた天羽はさっさと寝てしまったのだ。 「じゃあ、このままエッチするか」。今度はあたるがあわてた。2人がベッドの中でじゃれあっていると、店のカギをあけて女が入ってきた。それが津田遙(森口瑶子)だった。「別になんにもないんですよ」。あたるがうろたえていると、遙がおかしそうに笑いだした。「あなたがあたるさんね。天羽くんにからかわれてたんでしょ」。どうやらあたるのことは天羽から聞いているようだ。遙はこのリサイクルショップのオーナーの娘。「私がこの支店を任されてたんだけど、父親の体調が悪くて、いまは本店を手伝っているの」。そこで天羽が支店の臨時店長を頼まれたというわけ。あたるが気になるのは2人の関係。遙は慣れた手つきで天羽の身のまわりの世話をしている。あたるの目には友達以上の親密さに見えた。 「天国から地獄に落とされたわけだ」。遙のことを話すと、さくら(片瀬那奈)はあたるをからかった。「まだ彼女かどうか分かんないだろ」。カヲル(押尾 学)の慰めにもあたるの表情は晴れない。「あの2人が微笑みあっていると、すごくイイ雰囲気なんだよね」。あたるはため息をもらした。

 その頃、店には伊倉(吹越 満)と洋子(山本未来)が連れだって姿を現わした。遙は身の上を語りはじめた。「私ね、シングルマザーなの」。離婚して、今年小学生になる良介(八木俊彦)という子供がいる。「ママは僕が守ってあげる、なんて言ってくれるの」「いいなあ、そういうのって」。洋子はうらやましそうだった。 「略奪愛しちゃえ」。さくらにけしかけられて、その気になったあたるだったが、いざ遙を前にすると気分はなえてしまう。2人の仲むつまじさに割りこむ隙はない。「じゃあ天羽くん、ちょっと借りるね」「どうぞどうぞ」。本店のセールの手伝いに、遙は天羽を連れていってしまった。1人残されたあたるは店番。「やっぱあの2人、つきあっていたんだあ」。あたるがブルーになっていると、菜々(有坂来瞳)が顔をのぞかせた。思いきって告白した相手にふられたという。「なんか今日の先輩はやさしいですね」。あたるは菜々のことが他人事と思えなかった。

 さくらと伊倉はカヲルを元気づけようと合コンを企画した。女性陣は洋子に頼んで、部下の沙耶(関野沙織)、ミドリ、トモコという顔ぶれ。男性陣は伊倉の部下の井上一馬(高岡蒼佑)、小林。たまたまバイト募集の貼り紙を見て、会場の居酒屋にやってきたあたるもメンバーに加えられてしまった。「お前、どうしてここに?」。まさか天羽と毎日顔をあわせるのがつらくて新しいバイトを探しているなんて、たとえカヲルにだって言えない。

 主役はカヲルのはずが、いつになく酔っぱらってしまった。「あたしたち、先に帰ってるから」。あたるはカヲルをおぶって店を出た。「このへんでいいか」。しばらくするとカヲルはしっかりと立った。酔っていたのはお芝居。洋子の部下と新しい恋なんて、そんな気分じゃない。2人が家に戻ってみると、さくらが血相をかえて伊倉に塩を投げつけていた。さくらの目を盗んで、伊倉がミドリとキスしていたらしい。「もう2度と私の前に現れないでっ!」。さくらは伊倉にマンションの合鍵をたたきつけた。「ハハハ、お騒がせしました」。相変わらず伊倉はこりてない。

 あたるが部屋でこたつ虫をしていると、天羽がやって来た。「遙のことだったら、お前が考えているような関係じゃないよ」。たしかに過去に5年ほどつきあった。しかし遙は別の男性と結婚して、子供にも恵まれたが離婚した。「お前とカヲルくんみたいな関係だよ」。そう言ってくれてもあたるは素直になれない。「そっちのことなんか、別になんとも思ってないよ」。あたるは強がってみせたが、健に逃げられたショックが尾をひいていた。「心のリハビリ、できてなかったんだよ」。あたるは苦しい胸の内をカヲルにだけ打ちあけた。

 洋子がカヲルの家の前で待っていた。さくらは敵意をむき出しにした。「なんで来んのよ。カヲルのことは終わったんでしょ」。洋子はぽつりとつぶやいた。「会いたかったのよ。好きになったんだから仕方ないでしょ」。せきを切ったように、洋子は涙まじりにカヲルに対する思いをまくしたてた。いつもクールな洋子がこんな情熱的な素顔をひめていたとは。カヲルはそんな洋子がたまらなく愛しく思えた。 「けっこう捨て身だったよね」「あそこまでやるとは思わなかったわ」。さくらとあたるも洋子の姿に心をゆさぶられた。「みっともなくていいか」。2人はうなずきあった。さくらは伊倉のマンションを訪ねた。合コンの時にキスしていたミドリと鉢合わせした。伊倉は冷たく言い放った。「もうお前にはあきたよ」。さくらはショックに打ちのめされた。

 あたるは天羽に自分の気持ちをぶつけた。「あなたを好きなこと、止められないの」「もういいよ」。2人はキスした。しかし体を離した天羽の目はどこか痛々しげだった。「けど俺、お前を受け止められないよ」。あたるは思わず叫んでいた。「なんでェ!」。──。

<第11回>「運を掴むのは誰だ」
 「あたしたちって、世界中で一番不幸な姉妹かもね」。こたつ虫になっていたあたる(菅野美穂)とさくら(片瀬那奈)は顔を見あわせて、ため息をついた。あたるは思いきって告白した天羽(田辺誠一)に、そしてさくらは女グセの直らない伊倉(吹越満)にフラれてしまった。「カヲル(押尾学)はうまくいってんだろうなー」。2人はまたため息をついた。

 洋子(山本未来)と再び一夜を共にしたカヲルだったが、けっして浮かれるような気分ではなかった。「どうして避妊しなかったの?」。洋子のシングルマザーの夢をかなえさせてやりたかった。カヲルは言葉を選んで答えた。「俺のことはいらなくても、俺は洋子さんと、もしできていたら子供もずっと見ていくつもりだから」。しかし洋子は冷静だった。「そんなの、きれいごとじゃない」。

 あたるとさくらが部屋で失恋パーティーをしていると、カヲルが帰ってきた。「天羽さんがお前のこと断った理由を知っているのか」。カヲルは天羽から聞きだしてくれた。天羽は遙(森口瑶子)の父親から遙の息子、良介(八木俊彦)の父親は天羽ではないかと言われたという。「あいつがパパ?」。あたるはぼう然となった。遙が良介をつれて店に現れた。居あわせたあたる、さくら、カヲルは思わず天羽と良介の顔を見くらべてしまった。良介は天羽によくなついている。他人の目には父と子に見える。遙はその場の空気に気づいた。「あなたたちにも聞いてほしいの。良介は天羽くんの子供じゃないわよ」。父親はあくまでも離婚した夫だという。「ウチの父の勘違いよ」「そっかあ」。天羽は納得したようだが、あたるたちは釈然としないものが残った。 「本当かなあ」「男には分かんねえもん」。あたるとカヲルは半信半疑。良介が天羽の子供でなければ、あたるは心おきなく天羽にアタックできる。さくらは「遙さんを信じてあげれば」と言うが、あたるの表情は晴れない。「女の勘っていうのかなあ。なんかひっかかるんだよね」。  さくらはコンビニでバイトを始めた。お弁当をさしだした客の顔を見たら伊倉だった。「新しいお相手のミドリさんは作ってくれないんだ」「ハハ。居つかれたらまいるだろ」。いつものように伊倉は空笑いをあげて帰っていった。さくらはその背中にいつもとは違う悲哀を感じた。

 天羽はリサイクル品の手入れをしながらも、ついぼんやりしている。「やっぱ自分の子供じゃないかって気になってんでしょ」。あたるも思いはおなじ。「こうなる前に、お前と1回でもエッチしとけば良かったな」。天羽ははぐらかした。「2人ってそんな関係だったんですか」。菜々(有坂来瞳)に続いて、さくらとカヲル、そして洋子と伊倉まで店に現れた。「今日はもう仕事になんないな。飲みますか」。 「俺たち初めてだよね」。伊倉はさっそく菜々にちょっかいを出している。あたるとさくらは洋子を問いつめた。「カヲルか、シングルマザーの夢か、どっちか選んでよ」「私は両方ほしいの」。カヲルはあ然として言葉にならない。「幸せの価値観なんて人それぞれだしなあ」。洋子をかばった天羽に、あたるがかみついた。「あなたは自分の幸せを探そうとしてないじゃない」。洋子が反論した。「知らないほうが幸せってこともあるわよ」。伊倉が同意した。「そうだな。俺たちなんか、知りすぎて別れちゃったんだもんな」。すかさずさくらが切り返した。「誰にも愛されないで、1人で死んでいくんだよ」。伊倉は黙りこんでしまった。  洋子がニューヨーク支社に転勤することになった。しかも早ければ明後日にも旅立つ。カヲルには寝耳に水の話。「本当ですか?」「もし子供ができていたとしても、あなたには一切迷惑かけないわ」。洋子のシングルマザーへの決意は固かった。「これが私の選んだ幸せなの」。カヲルはショックと自己嫌悪にうちのめされた。

 あたるは遙に直接たしかめた。「良介くん、本当に天羽さんの子供じゃないんですか?」。遙は笑って否定したが、あたるは信用しきれない。「ずっと隠しとおせるほど、器用じゃないわ。だからあなたはいつでも、天羽くんのもとに行っていいのよ」。 その一言で天羽にもう一度ぶつかる決心がついた。「俺にもその勇気くれっか」。 カヲルも最後にもう一度、洋子にぶつかるふんぎりがついた。「お前がいてくれて、ホント良かったよ」「あたしも」。2人は抱きあった。あたるたちの選択するしあわせは何処にあるのだろうか──。

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