99人の壁を突破!路線図マニアのライターが100万円を獲得するまでの長い一日

Muscatライターがグランドスラム達成

8月15日に放送された『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』。自分の「得意ジャンル」に関する早押しクイズに5問正解できたら、賞金100万円をゲットできるクイズ番組です。ただし、他の99名の参加者がブロッカーとなり、100万円を阻止してきます。1問ごとに25人、50人……と増えていく「壁」を早押しで制し、見事100万円を獲得できるチャレンジャーは現れるのか……。






……はい、私です。ジャンル「路線図」でグランドスラムを達成した、40番です……。

実はMuscatのライターとして、元々『99人の壁』を取材する予定でした。その一方で、出場者募集のお知らせを見て自ら応募したところ、書類選考→オーディションと通過してしまったんです。

完全ヤラセ無しの、ガチの出場に編集部もビックリ。さらに収録後には、MC・佐藤二朗さんへの取材も予定されています。長い一日になりそう……という予感がありました。

出場者100人が揃う控え室は……

『99人の壁』の収録が行われたのは7月28日のこと。この日、関東には台風が近づいていました。交通機関の乱れを恐れ、集合時間の30分前にフジテレビ湾岸スタジオに着くと、既に多くの出場者の姿が。受付で「40番」の札をもらい、控え室で収録開始を待ちます。

筆者が出場するのは「無差別級」ブロック。控え室に集まってくる100人は、性別も年齢もバラバラ。これから戦う者同士、さぞや殺伐とした空気に……と思いきや、とても和やかな雰囲気でした。クイズ番組の常連さんやクイズサークルの方々が、まるで同窓会のように知り合いを見つけては話し込み、笑い声も飛び交っています。

今や「視聴者参加のクイズ番組」は限られており、ましてや出場者100人という大規模なものはそうそうない状況。クイズの猛者たちにとっても、『99人の壁』はひとつの「お祭り」なのかもしれません。

一方、クイズはもっぱらテレビで見るだけの筆者。初めてのクイズ番組……どころか、初めての地上波テレビ出演。緊張が解けないまま、ジャンルの予習をしていました……。筆者の選択したジャンルは「路線図」でした。

新婚旅行で行ったロンドンで地下鉄路線図に魅せられて以来、古今東西の路線図が気になってしまい、気がつけば路線図マニアになっていた筆者。こんなニッチなジャンルはないかもしれない……でもクイズは初めてだし、1問でもブロックとかできたらいいな……と、この時は考えていました。

「トーマス」のあの子が隣に

控え室で1時間ほど待機したのち、いよいよスタジオへ移動。前回までの地下闘技場のような雰囲気から一変し、今回は赤をベースにした華やかなセット。ペットボトルの水が1人1本配られ、それぞれ自分の回答席に着きます。

隣の39番の子に「緊張するよね……」と声をかけたところ「いえ、全く」という意外な返事。なんと前回「きかんしゃトーマス」で破れたサカキ君でした……! 今回はリベンジに来たんですよ!と燃えています。さらに隣の38番には「難読駅名」で能町みね子さんが参戦。41番「かき氷」、37番「猫」の方々とも一緒にお話するうちに、お互いに緊張もほぐれてきました。

今回、セットで大きく変わったのは、回答者席にジャンルが表示されたこと。100人の個性的なジャンルを眺めているだけでも楽しいうえ、「あのジャンルならブロックできそう……」「あの人が前に出てくれれば……」と考えてしまいます。サカキ君はサンリオキャラクターも詳しいらしく、「サンリオ」「ポムポムプリン」の方に念を送っていました。

収録前にはルール説明も兼ねて、スタッフの方がデモンストレーションを実施。実際にジャンル「ドラえもん」で早押しを行うと、なんと4問目でサカキ君がブロック! スタジオが盛り上がったところで、いよいよ収録がはじまります……!

収録スタート。「壁」からの景色

無人のセンターステージが真っ赤な緞帳で囲まれ、収録がスタート。合図と共にパッと緞帳が下りると、中にポーズを取った佐藤二朗さん! この日、初めて目の前に現れたMCに沸く出場者たちを「やかましい!!」と一喝します。

1人目のチャレンジャーをクジで決め、クイズがスタート。「西洋絵画」「馬」「宇宙」「シンガポール」「タイ」「茶道具」「アゲハ蝶」と、チャレンジが続きますが……全くブロックできません……。

一瞬「あれかも?」と思っても、「間違えたらチャレンジャー5人分参加不可」というペナルティーが頭をよぎり、どうしても勝負をためらってしまいます。そうでなくてもハイレベルな戦いが続き、とても割り込むことができません。

では楽しくなかったのか、というと「とても楽しかった!」が正直な気持ちです。

一般的に、参加者が多いクイズ番組は「最初の問題で参加者が半分に」などと人数を絞り、最後の一人を決めがち。しかし、『99人の壁』は壁の人数がどんどん増えるため、最後まで自分の出番が残っている可能性があります。マニアックな問題を答える回答者には感嘆の声をあげ、「立ち上がれ東の壁!」のコールに毎回ワクワクしながら立ち上がる。常に「参加している」という気持ちにさせてくれました。

4問目・5問目まで到達するチャレンジャーがかなりいましたが、100万円獲得者は現れません。収録時間も2時間近くなり、そろそろ終了かという空気が出てきたころでした。チャレンジャーが誤答し、次のチャレンジャーを決めることに。佐藤二朗さんがクジの箱からボールを引き、番号を読み上げます。

「40番!」

……僕の番号です。

「路線図」でセンターステージに……!

思わず立ち上がり、オロオロとセンターステージへ。音声さんにマイクを付けてもらいながら、「40番、井上マサキさんですね」という佐藤さんの声に「はい」と答え……現実感が全然ありません。目の前には佐藤二朗さん、カンペを出すスタッフの方、何台ものテレビカメラ……さっきまでテレビを見ていたはずなのに、急にテレビの中に入ってしまったよう。

センターステージに立つと、先ほどまで座っていた席が「直立の壁」に見えました。もちろん回答席は階段状に出来ているのですが、角度が急なため、下から見上げると文字通り「壁」なんです。四方を壁で囲まれ、99人に見下ろされる……緊張しないわけがありません。既に口の中はカラカラ。手はじっとりと汗で湿り、視線も定まらない……。

ですが、佐藤さんからの「どうして路線図を?」などの質問に答えていくうち、徐々に場に慣れてきました。トークの時間があって本当によかったと思います。ちょっと調子に乗って著作の宣伝ができるくらい、気持ちがほぐれました(「余計なことをするな!」と佐藤さんに体当たりされましたが、それも嬉しかったです)

いよいよ出題です。「立ち上がれ北の壁!」と25人が立ち上がり第1問。「この路線図はどの都道府県を走る地下鉄でしょう?」。モニターに見覚えのある路線図が出たので、ボタンを押した……のですが、「地下鉄……?」とパニックになってしまいました。

スタジオでは、映像クイズはボタンを押すとモニターが切り替わってしまいます。ボタンを押してから考えることを防ぐためです。さっき映っていたのは、仙台空港アクセス線が掲載している宮城県の近郊路線図……のように見えました。でも、宮城県の「地下鉄」は南北線と東西線の2本しかなく、路線の数が合いません。

ということは、さっきのは宮城県じゃない別の地下鉄……? でも、もうモニターーは切り替わって確かめられず、記憶の中の路線図は札幌、東京、横浜、名古屋、大阪、京都、神戸、福岡の各地下鉄……とも違う気がします。それでも宮城以外の何かを答えないと負けになってしまうと、やぶれかぶれで「大阪」と答えてしまい、不正解に……。

終わった……と思いつつ、正解を確認。やはり宮城県の近郊路線図で、地上の路線が含まれています。だからわからなかったんです、と伝えると、審議に入り……「もう一回」とカンペが。まさかのリマッチでした。本当は「地下鉄」に惑わされず「宮城県」と答えられたら格好良かったのですが……(しかも僕は宮城県出身なんです……)

仕切り直して再び1問目、イラストが表す都市を答える問題。魚の形をしたその路線図は、今度こそ「大阪」のものでした。

増えていく壁・壁・壁。そして……

2問目の壁は50人。出題された映像クイズは「この路線図の都市はどこ?」。ここも「ブエノスアイレス」で正解に。出場者を決めるオーディションでは「だいたいの都市の路線図はわかります」と、うそぶいたものの、まさか南米から出題されるとは。「これは番組側も本気だ……」と、ちょっと震えました。

3問目の壁は75人。背中側の25人が立ち上がります。Toshlさんの姿が見えましたが、この辺になると壁の方々が怖くて直視できません。モニターを凝視したり、視線を落としたり、視界に「壁」が入らないようにしていたと思います。3問目の早押しクイズは「都営地下鉄の路線図をデザインしたデザイナー」を問うもの。正解は大西幹治さん。以前、取材でご本人にお会いしたことがあるので、正解できてホッとしました。

いよいよ4問目。東の壁が立ち上がり、壁は99人に。「難読駅名」の能町みね子さんのほか、「鉄道」「新幹線」など鉄道ジャンルの回答者が揃いました。ここが正念場。牧原さんの「超難問早押しクイズです」の声に身構え、「1931年……」と読み出したところで……ピンと来ました。1931年は新たなデザインのロンドン地下鉄路線図が生まれた年。それまで地図をベースとして描かれていた路線図が、初めてシンプルな直線でデザインされたんです。後の路線図に多大な影響を残すこのデザインを行ったのは、当時ロンドン地下鉄の職員だった電気技師の……「ハリー・ベック」。

壁が99人いるので、いつ押されてしまうかわかりません。いま思えば他にも回答の選択肢はあったはずですが、焦りからかなり早めにボタンを押してしまいました。果たして……一瞬の静寂ののちに、正解を伝える音。驚愕しながら握手を求めてくる佐藤さんと、がっちり握手。手の甲がとてもぶ厚いなぁ、と感じたのを覚えています。

「ここまで来たぞ!」よりも「どうしよう」の気持ちが強いまま、「次、正解したらグランドスラムです!」と最終問題に。効果音と共に照明が落とされ、緊張感はピーク。佐藤さんの「クイズ!99人の壁」と同時に静まりかえるスタジオ。牧原さんの「映像問題です」の声でモニターを見つめます。

「この路線図はどこの都市のものでしょう?」

パッと映ったところで、ボタンを押しました。……ランプが僕についています。

ボタンを押すと同時にモニターの映像が切り替わりました。さっきモニターに出た映像は、確かにあそこの路線図のはず。でも早く答えないと、頭から映像がこぼれ落ちてしまいそう。はやる気持ちを抑えつつ、「答えをどうぞ」と問われてから「パリ」と答えました。静寂。そして……正解音。

ドッ!とスタジオが沸きました。さっきまで緊張感を煽られていた四方の壁から、割れんばかりの拍手と歓声が降ってきます。「Toshlさんに続いて3人目!」の声を聞くも、気持ちはずっとフワフワしたままで、東西南北の壁に頭を下げていました。スタッフからジュラルミンケースを渡された佐藤さんが「いちおう言わせてね」と僕にことわりを入れ、「これで打ち上げ行くぞー!」とさらに盛り上げます。

テレビを見ていたはずが、テレビの中に入ってしまった。夢と現実の境目に目の焦点が合わないまま、手渡されるジュラルミンケース。100万円……獲ってしまった……!

「100万返しなさい!」

筆者のターンで「無差別級」の収録が終了。時間的に本当に最後だったようです。Muscat編集部に連絡しようと思い、スマホのロックを外そうとしますが、指紋認証が全然外れません。手がずっと汗をかいていて、何度やっても指紋を認識してくれないんです(このあとフジテレビを出るまでずっとこうでした)

他の出場者のみなさんからは「おめでとうございます!」と祝福していただきました。小学生の子からは「2万円ください!」とまで言われるほど。後からわかったのですが、ブロッカーのなかにはジャンル「パリ」の方がいたそうです。ちょっと判断が遅かったら、5問目でブロックされていたかもしれません。盛り上げるポイントをあちこちに仕掛けている、番組側の企みに改めて驚かされます。

……さて、僕の本来の仕事は、収録後の佐藤二朗さんの取材です。

続いて「平成の日本人編」が始まり、全ての収録が終わったのは21時ごろ。他の媒体の記者に混じって会見場で待っていると、何も知らない佐藤二朗さんが入ってきました。「よろしくお願いします」と挨拶して、筆者と目が合いました。

――今日はよろしくお願いします。

佐藤さん:
「ちょっと待って!……えっちょっと待って!?……そうかライターさんでしたよね……」

――お気づきですか?

佐藤さん:
「お気づきですよ当たり前ですよ!(笑) そうか、いやぁよかったですね今日」

――ありがとうございます!

佐藤さん:
「いやいや素晴らしい。こちらこそお礼を言いたいです、盛り上げていただいて助かりましたよ。え、今日はここで取材することも最初から決まっていて……?」

――そうなんです。最初に取材は決まってたんですけど、個人的に応募したら通ってしまって、こんなことに……

佐藤さん:
「なんと……もう100万返しなさい、100万!(笑)」

※取材の模様はこちらをご覧ください

長い一日を終えフジテレビを出ると、台風は関東を通り過ぎ、生ぬるい風が吹いています。取材中、佐藤二朗さんは番組の魅力について聞かれ、こう答えていました。「クイズの猛者たちに敵うわけながないと思っている人でも、自分の得意分野で勝負できる企画」と。

クイズ番組はもっぱら家で見るだけだった自分が、クイズ番組で勝負ができたのも、『99人の壁』のシステムのおかげ。さらにジャンル選びや問題制作にさまざまな企みを仕掛けているからこそ、奇跡が生まれる瞬間に立ち会えたのだと思います。次回、秋の放送でセンターステージに立つのは、あなたかもしれません。

文=井上マサキ

番組情報

『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』

<出演>

MC・佐藤二朗

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