数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.24

対談企画 ゲスト:小塚崇彦さん

高度なスケーティングスキルでジュニア時代より活躍し、2016年に現役引退された小塚崇彦さんにお話を伺いました。

最近について

小塚崇彦

引退されてから約1年半が経ちましたが、今は主にどんな活動をされているのですか。

去年引退してから、トヨタ自動車で働く中でスポーツ選手の地域貢献活動をサポートする部署に所属し、「どうやったらスポーツをもっと好きになってもらえるか?」「それぞれのスポーツの間口を広げるためには何ができるのか。」ということを考え、仕事をしていました。
その中で、僕はフィギュアスケートをもっとかみ砕くことができるのではと、考えるようになりました。フィギュアスケートはどうしても氷の上を滑る必要があるので、ケガにつながるイメージがあるのだと思い、それが理由でフィギュアスケートに入ってきにくい人もいるのではと考えました。
そこで僕は、フィギュアスケートをかみ砕いて、だれでも入ってこれるような環境というか、その一歩目を踏み出してもらえる方法はないかと考えるようになりました。そこでフィギュアスケートを大きな枠と考えた場合、ウィンタースポーツですよね。ウィンタースポーツと言えば、「雪」や「氷」があります。地域にもよると思いますが、今の子供たちは外に出ることも少なくなっていると聞きますし、そういった身近にあるウィンタースポーツにつながるものに触れる機会も少なくなっているのではないかと思います。だからこそ身近なところからフィギュアスケートの普及につなげることができないかと考えています。

多くの子供たちが、例えば氷に触れるといった経験も、少ないですよね。

まさにその通りです。僕が主にやっていることは、端的な言葉にしてしまえば「スケート教室」になってしまうのですが、僕ができることは教室を通してフィギュアスケートの間口を広げていくことだと考えました。今のフィギュアスケート人気は、先生方が選手を強く育ててくださっているおかげだと思います。その「選手の強化」は三角形の頂点を引っ張ることですよね。その一方で、その三角形の底辺を広げていくことも今後は大事になってくると思うのですが、今そこだけに注力しているものは、まだまだ少ないのではと思いました。「0」を「1」にすることはとても重要なことで、例えばリンクに来て、興味を持ってもらってもらう。それを「1」とした場合、「スケートって面白いな。」って思ってもらうことが「1」を「2」に、そして「10」にまで引き上げていくことにつながることではないでしょうか。その「10」の先へ行った子供たちを教えてくださるのが先生方です。だから僕はその先生方へ引き渡すまでをやることが、使命だと今は考えています。

それは素晴らしい考えです。

今スケート教室をやっていると、スケーティング技術を学びたいと言ってきてくださる方もいるのですが、あくまでそう言った方々がメインではなく、氷の上に立ってみたい、氷の上で滑ってみたいという方々を増やすことを目的としていきたいです。そうやっていくことが、もしかしたら新しいリンク場が増えるということにもつながっていくのではないかなと思います。

本当にそうなってほしいです。崇ちゃんにはすごくまっすぐなビジョンがあって素晴らしいですね。昔から執念もあるし、努力家ですし、本当に頑張ってほしいです。崇ちゃんのように、選手としてのキャリアがあって、若くて魅力的な方がそうやって間口を広げてくれることは、フィギュアスケート界にとってもこんなに嬉しいことはないと思います。

僕が現役のころの選手たちは、それぞれに個性があって、その個性を発揮して今を生きていると思うんです。大ちゃんですとショーで頑張って、「髙橋大輔のショー」というものを確立していますし、織田君は、テレビでコメンテーター・バラエティ班として確立していますよね。そういった中で僕は自分がどんなことをするのが、自分が一番やりたいことにつながるのかなと思った時に、そういうことかなと思いました。

確かに皆さん、活躍の場は違いますがそれぞれ個性を発揮できる場で活躍していますね。

多分、これは血だと思うんです。僕の祖父は、スケートが本当に好きでスケートを普及するために、人を連れてくるなど色々やってきたんです。そういったところはあるのかなって思います。

本当にそうですね。小塚家の血は代々受け継がれていますね。
今はスケート教室を開くとき、依頼を受けてその場所に赴くことが多いのですか?

依頼を受けて行くこともありますが、僕自身が企画してやることもあります。最初のころは、リンクや自治体などから依頼されて行くことが多かったのですが、先日のスケート教室は、こちら側から企画をして売り込んで、スポンサーさんについてもらい、無料でスケート初体験の方々に来てもらいました。

将来的なビジョンもあるのですか。

はい。今僕がやっていることをしっかりと確立させて、後輩たちにもつないでいければと考えています。将来的には、こういったスケート教室が全国で開催できるシステムができると嬉しいですね。

今後挑戦していきたいこと

今後挑戦してみたいことはありますか?

今現在進行中なのですが、ブレードの開発ですね。実際に作っていて、使ってくれている選手もいます。良いものには間違いないのですが、その良さをどうやって選手たちに伝えていくかを考えています。

具体的にはどういったものになるのですか?

わかりやすいところで言いますと、左右のブレードが一緒なんですよ!

え!そうなんですか!!

はい!今のブレードは左右が違う形状じゃないですか。でも様々開発していく段階で、別に左右違う必要性がないっていう話になったんです。

なるほど!これはすごい発見ですね。全部統計を出しているんですよね。

もちろんそうです。今までの場合は、例えば右のエッジだけが悪くなって変えなければいけない状況になった場合も、左右両方を対で買う必要があったじゃないですか。でも左右が一緒なので、片方が悪くなったら片方だけ買えばいいんですよ。

なるほど、なるほど!素晴らしい!!でもブレードは30年くらいほとんど変わらないじゃないですか。そう考えるとこの発想は、非常に画期的ですよね!

ある大手の会社社長が「ニーズは人からもらえるけれど、そのニーズを越えたところは自分たちで考えなきゃいけない。」とおっしゃっていたんです。だから10年後を考えた上でもそのニーズを越えた先を見ていきたいと思いますし、物づくりということは、そうやって先を先を考えていかないといけないことなんだと思っています。

私自身もすごく勉強になります。今日は本当に、為になるお話ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

長光歌子先生
長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)