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TOPエコアナ活動中藤村さおりアナの環境問題社内勉強会リポート <2009年の環境問題を考えるキーワード、それは「動的平衡」>
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藤村さおりアナの環境問題社内勉強会リポート
<2009年の環境問題を考えるキーワード、それは「動的平衡」>

[2009年8月28日更新分]


幼い頃の虫好きが高じ「新種の昆虫を探したい!」一心で生物学者になったという福岡伸一先生。フジテレビの情報番組「サキヨミLIVE」のコメンテーターとしてもおなじみです。
今では分子生物学者として、「動的平衡」という独自のキーワードを掲げ、ベストセラー作家としても活躍なさっています。

ん?「動的平衡」って何?私たちに関係がある言葉なの?今回の勉強会では、柔らかいトーンで、深く、しっかり「動的平衡」というキーワードについて教えていただきました。
とにかく大変面白く、興味深い話のオンパレード。大変貴重な社内勉強会となりました。
福岡先生のお話の一部をご紹介しますが、あなたの価値観も変わるかも・・・。

■生命は流れだ!明日の私は別人だ!?

想像してみてください。
昨晩寝た時も、今朝起きた時も、あなたは同じあなたです。
それと同様に、去年の私も今年の私も同じ人物で、何ら“変わりありません”が、実は、食べ物が体内のあらゆる一部に変化して、細胞・分子レベルで見るとものすごい勢いで入れ替わり、本人の本意・不本意に関わらず“別人になろう”としているというのです。

だから久しぶりに誰かと再会した場合、見た目や職業とに関わらず、中身は「お変わりありまくり」なのだと言えるのだそうです。 口内などの早いものでは数時間、血液などの遅いものでも数ヶ月で入れ替わり、カチッとして見える骨や歯も、「中身は入れ替わりまくっている」のだと。

こうしてミクロの世界では激しい変化が行われているにも関わらず、全体をマクロの視野で見ると、案外一定のバランス・恒常性が保たれています。このことこそが「動的平衡」なのだと福岡伸一先生は定義しています。

■地球環境の「動的平衡」とは?
ここからが福岡先生の柔軟性が伺えるところなのですが、この「動的平衡」というワードは生命にだけ言えることではなく、環境問題にも、更には地球全体にも適応できるというのです。

例えば、地球環境について。
「動的平衡」にとって最も大切なのは、循環の流れを塞き止めないこと
高炭素社会の今、「炭素の循環」という見方で捉えればCO2はゴミではなく、循環の一端を担っているもののひとつと考えることができ、地球全体が動的平衡状態にあるならば、CO2もまた次の物に変わっていけると考えられるというのです。
現にそれをやってくれている唯一のものが、植物です。それゆえCO2になってしまった物を、流れに乗ってできるだけ次の形に導いてあげるよう仕向けることが、私たちにとって急務なのだと福岡先生は言います。

■企業成長のカギも「動的平衡」

生物多様性の必要性についても聞いてみました。
「動的平衡」を強靭なものにするためには、構成するメンバーが出来るだけ多様であることが望まれます。何故か?多様であればある程、外からの干渉や作用に対して強靭な回復力を持てるため。

実はこの考え方は、組織や団体などのいわゆる“生物でない物”にも使うことができるというのです!
学校や企業を連想してみましょう。ある人たちは卒業してその集団を去っていきますが、その穴を埋めるように新入生・新入社員が入ってきます。物質レベルでは絶え間なく入れ替わっているのにブランド力としては維持されている。この形態こそ、その集団や組織が動的平衡状態にあるといえるというのです。

■福岡先生は、注目のES細胞をこう考える!
中でも発見の大きかったお話は、最近よく耳にするES細胞についてでした。
そもそも細胞というのは、寄り集まっているからこそ一つの個体として成り立っていられるものだそうですが、前後左右の細胞と切り離されてしまうと、“自分はどこを担うべき細胞になればいいのか!?”身の振り方がわからなくなり、「自分はかくあるべき」という情報をこれまで与えてくれていたまわりの細胞とコミュニケーションが取れないことから、生命活動をやめてしまう=死んでしまうのだそうです。
私たちの体の中で、細胞がまわりの細胞と情報交換して連携しているとは驚きました。


しかし、この大前提を覆すような細胞こそが、ES細胞です。
自分では何者になるのかわからないのに、ひたすら増殖することに没頭するという特性がある細胞。
これだけ聞くと「それがどうしたの?」とあまり不思議に思わないかもしれませんが、この特性は、皆が恐れるガン細胞と非常によく似ているのだそうです。

ガン細胞は一旦は心臓や肺などの細胞になったものの、あるとき無個性で増え続けるだけの細胞になってしまったものゆえ、似た特徴を持ったES細胞を間違ったタイミングで体内に戻すと、ことごとくガン化してしまう傾向にあるというのです。恐ろしいですね。

しかし逆に「君は元々肝臓の細胞じゃないの!」と目を覚ますことが出来たなら、持ち場に戻り、理論上はガン化を止めることが出来るというのです!・・・・・が、そんなに上手く問屋が卸さないというのが現実。
夢のような究極のガン治療法を目指し研究は進んでいるそうですが、まだ細胞に正気を取り戻させることができないでいるという・・・・・。

ES細胞とガン細胞をコインの両面と考えると、ガン細胞をコントロールできないのと同じ様に、ES細胞もそう簡単にはコントロールできない。だから「ES細胞に過度のバラ色の未来を期待するのはかえって危険だ」とさえ福岡先生は考えているそうです。一筋縄ではいかないのですね。

■人間の効率性重視が、新型インフルエンザを!
そして、夏場でも蔓延をつづける新型インフルエンザについてもお話くださいました。
そもそもの原因は、人間が鶏や豚を集約的に大集団で飼い始めたこと。インフルエンザウイルスにとってまるで天国のような“進化の実験場”を与えてしまっているといいます。

インフルエンザウイルスもまた「動的平衡」を繰り返しながら、よりよい宿主を求め、より早く自分をコピーできる場を求めウロつき、常に変化をしているのです。私たちをあざ笑うかのように見えますが、実際は敵も必死といえるのかもしれませんね。このことから、インフルエンザの本当の原因は、ウイルスそのものではなく、効率を求めてきた人間の営みそのものにあると言えるようです。

ではどう対処すればよいのか?だましだましですが、その体質と上手く付き合っていくしかない。だってそれは、「動的平衡なのだから!」と捉えて欲しいということでした。



今回の講演で、「動的平衡」というキーワードの適応力の幅広さに、先生の好奇心いっぱいな表情が、トンボの眼の様だと思い至りました。

先生が昆虫好きだからそう形容する訳ではありませんが、大変視野が広く、瞬時に柔軟な対応ができる眼の持ち主。逆に言うと早々の危険察知もできる眼ともいえると思います。
そのうえ、自分の専門分野に留まらず、時代も文化も斬る事ができる複数の価値観を持った鋭敏な眼。
ミクロの世界からマクロの世界を見ている福岡先生ならではの、哲学のように互いに絡み合う話の展開が、非常に面白い社内勉強会でした。

福岡伸一さんのプロフィール
1959年東京生まれ。京都大学卒。青山学院大学理工学部教授。分子生物学専攻。研究テーマは、狂牛病感染機構、細胞膜タンパク質解析など。専門分野で論文を発表するかたわら一般向け著作・翻訳も手がける。特に、『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)は、2007年サントリー学芸賞、中央公論新書大賞を受賞し、65万部突破のベストセラーに。他の著書に『プリオン説はほんとうか?』(講談社ブルーバックス)『ロハスの思考』(ソトコト新書)『できそこないの男たち』(光文社新書)『動的平衡』(木楽舎)、翻訳に『築地』『エレファントム』(木楽舎)など。最新刊は『世界は分けても分からない』(講談社現代新書)。

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