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photo 4.言語による混乱
独立はナショナリズムやアイデンティティーの問題に深く関わってきます。東ティモールでは、国の将来の決定に関わる異なるアイデンティティ・グループによる権力争いに、子どもたちが翻弄されています。その混乱が最も象徴的に現われているのが教育現場での言語の問題です。東ティモールには15の主要言語があるといわれていますが、その中で東ティモール人の91%が理解し、58%が読み書きでき、実質的に共通語と見なされているのがテトゥン語です。ところが、東ティモールの独立に際して、現政権は公用語と教育の場での使用言語としてポルトガル語を採用しました。ポルトガル語を話せるのは高齢者の男性、エリート層に偏向しており、実際には住民の約8割がポルトガル語を話すことができません。多くの小学校の教員がポルトガル語を話せない実情の中で、教育言語としてポルトガル語が採用された矛盾に、教育現場では大きな混乱に陥っています。教育政策と言語の問題での政府の混乱は、教育カリキュラムや教科書、教材開発に遅れをもたらしています。こうした混乱の一番の犠牲者はいうまでもなく子どもたちです。実際に訪れたアイリウの小学校の教室では、ポルトガル語を話すことの出来ない教員が、テトゥン語を併用し、苦労しながらも子どもたちに必死に教えている姿が見受けられました。 こうして見ると、東ティモールの教育部門が抱えている問題は、騒乱から独立という一時的な要因の影響はあるものの、根本的な要因は他の開発途上国の抱えている構造的な問題と多くの共通点を有することが分かります。それは貧困であり、人材不足と能力不足の悪循環であり、そして教育に対するコミュニティの理解の低さでもあります。「騒乱」、「独立」というフィルターに加えて、中長期的な視点から問題の所在を見極め、本来のニーズに即した援助活動に重点を移すことが求められています。
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