あらすじ
<第7回> <第8回> <第9回>

<第7回> 「禁じられた遊び」
 小津(田村正和)は、電話で助けを求めてきた別れた妻の静香(余貴美子)から話を聞いた。静香によると、娘の絵理(水川あさみ)が家に寄りつかず、悪い仲間と付き合っている様子だという。だが、小津は「ちゃんと話してみなさい」と言うだけである。静香は「いつも私任せなのね」と言い捨て、その場を去って行った。
 翌日、学校では、また健太(勝地涼)が、同級生3人に金をたかられていた。そのことを聞きつけた2年1組バスケ部の浩二(森山未来)、光(脇知弘)、淳(忍成修吾)は「現場」の屋上へ走った。怪訝に思った加藤(ユースケ・サンタマリア)も後を追った。怒った光は加藤の制止を振り切って、3人を殴り飛ばしてしまった。取り敢えずその場を収拾した加藤。
 一方、職員室では、小津が絵理のことを気にして、みゅー(瀬戸朝香)、一葉(京野ことみ)、まなび(西田尚美)に\"イマドキ\"の少女の生態を聞いている。口を揃えて「外泊」「反抗」と言う若い教師に不安を募らせた小津は、静香に電話し、翌日の5時に、3人で会うことを約束する。
 そのころ佐野(小日向文世)は、光に殴られた1年生から「バスケ部の奴等に意味なく殴られた。部活をやっていれば、えこひいきするのか」と詰め寄られていた。
 加藤は、表沙汰になってしまった暴力さわぎで校長室に呼び出されていた。「あいつら悪くありません」。バスケ部を呼べと言う佐野の要求を無視して、断固子供を守ろうとする加藤を見て、鹿松校長(谷啓)は「小津先生の影響かな・・・・・・」とほほ笑む。
 だが、翌日、殴られた子供たちは顔にばんそう膏を張り親を連れ立って、学校に乗り込んできた。案の定、父母たちは「現場に先生がいたのに、どうなっているんだ! 暴力容認教師を辞めさせろ」と騒ぎ立てる。放課後に、学校としての対応を説明することになった。だが小津は静香と絵理に会わなければならない。
 放課後の職員会議が始まった。もう、静香と絵理は喫茶店で待っている。気が気ではない小津。バスケ部の休部や加藤の休職が議題に上る。小津は「私の一任で隠蔽した。責任は私にある。私が辞める」と立ち上がった。
 待ちくたびれて業を煮やした絵理は危ない感じの若い男と出ていった。絵理は「彼は私の言うことを、そばにいて聞いてくれるの」と静香に言い残し・・・。
 1年生三人とその親に対応を説明する時間になった。小津は加藤とバスケ部員を伴って謝罪を始めた。「二度と人を傷つけないと約束し、頭を下げて謝りなさい」。小津は、浩二たちに指示し、深々と頭を下げた。鹿松校長が親たちに「小津先生が今回の責任を取る」と説明するのを聞き、浩二たちは沈黙し、頭を下げる。
 小津はその足で静香の待つ喫茶店へ向かった。「絵理は、男と出て行ったわ。なぜ来てくれないの。自分の子供より大事なことがあるの?」激昂する静香。小津は答えられない。「あなたは何も変わっていない。幽霊のように一人で生きて行けばいいのよ」。静香はそう吐き捨て喫茶店を出て行くのだった。
 一方、バスケ部のメンバーは憮然として渋谷の街にしゃがんでいた。そこへ剛(EITA)に話し掛ける者がいた。以前の悪仲間・青山(水谷あつし)だった。淳が青山の連れている少女に気付いた。「小津先生の娘じゃないか」。まさにそれは絵理だった。
 加藤一人で寂しく部屋にいると、チャイムが鳴った。出ると、浩二である。「小津先生に伝えといてよ。あんたの子供、ヤバイのと付き合ってるって」
 自分のせいで娘と会うことが出来なかった小津のために、自分が絵理を助けようと決心する加藤。浩二たちバスケ部の連中と青山のいる場所に向かう。そこには絵理がいた。
 「お父さんに会いに行こう」と説得する加藤。だが、絵理は「あの人のお陰でいじめられた。愛しているのは仕事だけよ。あの人は幽霊よ」と拒む。
 そこへ青山が仲間と戻ってきた。「連れて帰ります」と絵理の手を取った加藤を、青山が殴りつける。青山は、睨み返してきた光も殴る。
 「耐えるんだ。小津先生と約束したろう」と加藤。青山たちは調子に乗って、部員全員をなぶり者にした。だが、ぐっと堪える部員たち・・・・・・。
 そのころ、小津は佐野から「あなたが子供側に立つ理由は、銀行での悪さの償いのつもりでしょう」と見抜いたような口調で言われる。
 「償いではありません。私は幽霊と言われた。生きていなかった。今は生きている意味のあることをやろうと思ったんです。利益を求めない生き方を。あの子達に教わったんだ」と小津は呟く。

<第8回> 「小津先生、怒る」
 生徒の暴力事件にからんで休職処分を受けた加藤(ユースケ・サンタマリア)は、同居人の小津(田村正和)の世話を、まるで奥さんのようにかいがいしく焼いている。ただ、「みゅー先生に、カトケンが寂しがってるって、伝えといて」とちゃっかり伝言をお願いするのだった。学校に着くと、小津のもとにやって来たみゅー(瀬戸朝香)が、バスケの新人戦を男子の分まで申し込んだと言う。小津は、思わず知らず笑みがこぼれる。それを悟られまいと、みゅーに加藤の伝言を伝えるが、みゅーは「気合入ったの」と見抜く。
 小津は加藤の代わりに2年1組の英語の授業に向かった。流暢な英語の発音に生徒は困惑し「カトケンの方が分かりやすい」などと言う。そんな中、小津は、浩二(森山未来)、光(脇知弘)、淳(忍成修吾)、剛(EITA)のバスケ部員に小声で「新人戦に出るぞ」と教える。浩二は「授業中」と言って小津を制すが、4人の顔つきはきりりと変わる。
 放課後の部活時間になった。健太(勝地涼)を含んだ5人は、女子部を相手に熱心な練習の真っ最中。小津は彼らにNBAの高度な作戦を伝授する。盛り上がるコート。だが、健太だけは沈んだ表情でその場を離れていくのだった。
 それに気付き健太の後を追った一葉(京野ことみ)は、健太の顔に新しい傷があるのを見つける。「また、誰かにやられたの」という一葉の問いに健太は「転んだ」と言い逃れるのだった。
 その夜、加藤の部屋で、小津、みゅー、一葉によるミニパーティーが開かれた。「これが合コンか」と喜ぶ小津。にぎやかに時は進む。
 そのころ、絵理(水川あさみ)が光司や遙(一戸奈未)を訪ねて話をしていた。絵里の話で、小津が中高とバスケ部で国体にまで出場したこと、それを受験のために親にやめさせられたことが分かる。
 加藤がみゅーを送って出ていったので部屋には、小津と一葉が残った。小津も健太の傷に気付いていた。一葉は、自分の体験に照らし、家人に暴力を振るわれたのではと、推測する。
 その健太は、光の家の門を叩いていた。光の父親は大物政治家で、警官詰め所まである家は、まるで城のようであった。光の部屋では、光がマシンで汗を流し、淳がテレビゲームに興じていた。健太は暗い表情で「泊めて下さい」と言い出すのだった。
 翌日、職員室で、一葉は、自分の考えを佐野(小日向文世)たちにも話した。「ほっとけない」と言う一葉に、佐野は「家庭のことには口をだせない」と諭す。納得できない一葉は、小津に助けを求めるが、小津も「教師はそこまで偉くない」と佐野に乗るのだった。
 と言いながらも、小津は健太を体育館に呼び出し、傷の原因を問いただした。が、健太は頑なに口を閉じるのだった。小津はそのまま、健太の家に向かった。マンションの部屋には母親幸枝だけでなく、リストラされた父親の常雄もいた。常雄はすでに酒を飲んでおり、「息子さんに手をあげてませんか」と直入に訊く小津に、「証拠あんのかよ」と凄むのだった。
 翌日、小津は佐野に呼ばれて校長室へ出向いた。そこには常雄がいた。「プライバシーの侵害だ。出るとこ出るぞ」とわめく常雄。小津は答えず、その場は鹿松校長(谷啓)と佐野がどうにか取り成した。職員室に戻ると佐野が憤然と「家の問題まで解決しようなんて思い上がりだ」と小津に詰め寄る。一葉だけは「家に行ったんですか」と小津への信頼を回復できて喜ぶ。だが、そんな放課後、健太は部活に出ず、そしてまた、常雄に殴られるのだった。
 職員室の先生たちは、佐野を除いて健太の心配をしている。まなび(西田尚美)は佐野に「本当に私たちは何もできないのか」と訊ねた。佐野は言いにくそうに言った。「生徒を見ると震えるんです。気持ちを乗っけたら、今度は殺される」と佐野は言い残し出て行くのだった。佐野が体育館に見回りに行くと、逃げ出した健太が座り込んでいる。佐野は皆がいる職員室に連れてきて、常雄を呼び出した。反対する教師たち。だが、健太は何も言わない。それどころか「いいんです、僕を殴ってせいせいするなら」と常雄を弁護する。口を閉ざさざるを得ない教師たちだった。常雄が迎えに来た。「あんた銀行屋だろ。あんたらのせいでくびになった。金を貸せ」と小津にからみ始めた。「だからといって子供にぶつけていいのか。それほど親は偉くない」と小津。常雄も黙っておらず、「銀行屋が説経するな」と切り返す。常雄は健太の手を乱暴につかみ、「早く行くぞ、叩かなきゃわかんないか」と脅す。そこで声を発したのは佐野だった。
 「警察呼ぶぞこのやろう。お子さんをこれ以上苦しめないでいただきたい」。だまる常雄。「それに、小津先生は銀行屋じゃない。教員だ」と言い放つのだった。職員室は水を打ったように静まり返った。だが、結局、健太は自分で決めた。「お父さんのところへ戻ります」。教師たちは、沈黙して見送るのだった。
 日が変わり、まなびは鹿松校長に呼び出された。鹿松は言う。「新人戦の出場が認められないそうだ」。
 そのころ小津は、頼もしく子供たちの練習を見詰めているのだった。

<第9回> 「小津先生、キレる」
 高校バスケット連盟が光蔭学園に対して新人戦の男子出場を認めないと通告してきた。チームのマナーが悪いからだという。以前の練習試合で、章夫(池田貴尉)が試合中に相手チームのキャプテンの首を絞めたのだ。小津(田村正和)、加藤(ユースケ・サンタマリア)、みゅー(瀬戸朝香)の3人は困惑した。が、加藤が「メンバーに言わないで下さい。おれ、連盟に掛け合ってきます」と飛び出していった。一葉(京野ことみ)に促され、みゅーも後を追った。
 その間、小津と一葉が練習を見守った。練習を終えた遙(一戸奈未)が浩二(森山未来)のもとへ近寄った。「1年生が、先生が話しているのを聞いたんだけど・・・・・・」
 浩二たちは小津を追った。「おれら、出られないのか?」。小津に詰め寄るメンバーたち。諦め顔のメンバーに小津は「カトケンがなんとかする。体育館で待ってろ」と言うのが精一杯だった。
 加藤とみゅーが連盟に行くと、連盟の職員は、実質上の運営を行っている柳沼教諭の高校へ行けと言う。二人がバスケ強豪で有名なその高校へ出向くと、柳沼は、体育館で竹刀を手に厳しい練習を行っていた。
 そんなころ、小津は娘の絵理(水川あさみ)に呼び出され喫茶店へ現れた。絵里と一緒にいたのは島谷(大杉漣)だった。島谷が、小津と出会う機会を、絵里に頼んだのだ。「銀行に戻って来てくれ」。島谷は言う。銀行が金融再建の部署を作り、島谷と小津が呼ばれたのだ。
 「お前がやるべき仕事だ。俺は、俺のすべき場所でやる」。小津は席を立った。
 絵里は理解し、島谷は言葉なく見送るしかなかった。
 加藤とみゅーは柳沼を説得していた。頑固な柳沼を攻略できずにいると、みゅーが「叩いて指導しているんですか?」と訊ねた。「大人が押さえつけてでも正しい道へひっぱる必要がある」と柳沼。怒りに燃えたみゅーは、突然、加藤を引っ張ってその場から出て行くのだった。
 二人は、小津や浩二たちが待っている体育館へ入った。「みんな、明日朝九時集合。道場破りだ」
 翌朝、光蔭学園男子バスケ部は、柳沼の高校へ向かった。
 「マナーが悪いかどうか、試合で確かめて下さい」とみゅー。
 「マナー違反をしたら出場は辞退します」と加藤。
 「10分終わって10点差ついても辞退します」と小津。
 渋々柳沼は認めたが、自校のチームに、浩二たちを挑発するように小声で指示した。試合が始まった。柳沼のチームは、徹底して汚い手を使ったが、浩二たちは。我慢に我慢を重ね、残り3秒で9点差まで詰めたのだ。
 「新人戦でお会いしましょう」。小津は、柳沼に首を掻き切る挑発ポーズを見せ、余裕の表情で立ち去るのだった。
 だが、柳沼は、次の策を練った。小津がいるならば、出場を辞退するというのだ。柳沼に仕切られている連盟の強豪校たちも同調する。これでは新人戦が成り立たない。小津は一人で考え始めた。家へ帰り、加藤に作戦を教え始めた。何か思いを固めたようである。
 翌日、小津は連盟の「新人戦ルール会議」に乗り込んだ。
 「出て行け」と柳沼。
 「私の犯罪と子供たちが何の関係があるのだ。あの子達のためなら学校を辞めましょう。思い出して下さい。私たちも子供だった」。小津は静かにその場を立ち去った。
 小津が、事の顛末を鹿松校長(谷啓)に話していると、校長宛てに連盟から電話が入った。「あなたが辞めるなら、出場を認めるそうです」と鹿松。
 「あの子達に救ってもらったんです。今度は私の番だ」
 小津の目には強い意志が浮かんでいた。


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