あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「ふさわしくない男」
 小津南兵(田村正和)は、光陰高等学園の2年1組の教壇に立っていた。メールを打つ者、携帯で喋る者、いちゃつく者・・・・・・そこは「イマドキ」の10代で埋まっていた。授業を聞く者などいそうもない教室で政経の教科書を開き、小津は、なぜ自分がここにいるのか自問するのだった。
 1年前、小津はニューヨークの銀行のオフィスにいた。外国人相手に、パワフルに仕事をする小津は、自信に満ちている。あるレストランで政治家相手に小切手を切った瞬間、ブラックスーツの男たちに取り囲まれた。FBIであった。小津は贈賄で逮捕されたのだ。
 1ヶ月前、NY刑務所から出所した小津は躊躇せずオフィスに向かった。が、そこに席はなかった。解雇されたのだ。小津はすぐに帰国の途につき、本店へ。同期の島谷(大杉漣)が言う。「お前の椅子はない。当時の役員はみな、椅子を変えた」
 「俺に罪をかぶせたのか? 全力でやるということは、法を超えてでもだ。なぜ、俺だけ・・・・・・俺はまだやれる・・・・・・」
 家に帰ると妻の静香(余貴美子)が、離婚届を持ってきた。小津は笑って「大丈夫だ、すぐに仕事に戻れる」と虚勢を張るが、静香は「あなたは分かっていない。あれ以後いじめられ続ける娘の絵理の将来のためなんです」ときっぱりと言う。
 小津は翌日から、就職活動を始めた。横柄で自信に満ちた口調でセルフ・プロモーションする小津。実績を知る他行の役員は丁寧に応対する。当然の様子で笑みを浮かべる余裕の小津であった。
 そんな夜、小津はホテルのバーで、騒ぎ続ける若者の一団に出くわした。注意すると、顔を覗き込んだ男、加藤賢(ユースケ・サンタマリア)が「こいつ有名人だ。転落の銀行員。脱走したの?」と酔った勢いではしゃぎ始めてしまった。それを殴り飛ばしたのは女性の足利みゅー(瀬戸朝香)だった。「年上をからかうな」。一団はぞろぞろと帰り始めた。「?」の小津であった。
 翌日から、小津には不採用の知らせばかりが届き始めた。そんな折、島谷が現れた。「銀行の就職は俺が潰した。他行に行ってもうちの銀行の迷惑なんだ。銀行から足を洗え」。そう言って涙ぐむ島谷が持ってきたのは高校教師の仕事だった。
 無視して家に帰ると、絵理(水川あさみ)が言う。「ママ、この人、幽霊みたい」。その言葉を聞いた小津は決心した。静香の離婚届に判を押し、島谷の申し出を受けることにしたのだ。
 小津はその学校に行った。「恐喝に来たのか!?」。青ざめた加藤は、鹿松哲郎(谷啓)校長と小津が話す席に乗り込み、「校長、金、払ってやりましょう」と声を荒げる。が、鹿松は「君と一緒に2年生を教えてもらうよ」とニコニコと伝えるだけであった。
 加藤は小津をスポーツバーに誘った。小津は「教員を続ける気はない。銀行へ戻るまでの間だけだ」と言い切る。そこへ、光陰の生徒がやって来た。加藤が顧問をするバスケット部の生徒たちだ。喧嘩を始め、ビールをのむ生徒や、それを止めもしない加藤を見て、違和感が募る小津に、中の一人、井本浩二(森山未來)が言った。「あんた、幽霊みたいだな」。苦し気にビールを呷る小津だった。
 小津はそのまま、加藤の家に転がり込んだ。そこは生活感のまるでない雑誌から抜け出したような整理された空間だった。レアもののコレクションに囲まれ、すべてはリモコンで動く。小津は眠ることができず高校の体育館に入った。バスケットボールを触っていると、女子部の顧問のみゅーがやって来た。「びっくりした。幽霊が出たかと思った」。小津はその言葉を再び噛み締めるのだった。
 教室は無秩序が続いている。勝手に外に出て行く者、メールを打ち続け、携帯を取りあげると襲ってくる者、授業を急かす者・・・・・・。小津は子供たちを睨み付けて言い放った。
 「俺は幽霊なのか?」

<第2回> 「おかしな二人」
 始業時間の光陰高校正門前。みゅー(瀬戸朝香)が、竹刀を持って遅刻生徒ににらみをきかす。そこへタクシーが。悠然と降りてきたのは、シックなスーツに身を固めた小津(田村正和)であった・・・・・・。
 小津の1時限目は2年1組。浩二(森山未來)は空を眺め、光(脇知弘)は居眠りし、章夫(池田貴尉)はメール打ち。淳(忍成修吾)、剛(EITA)未句(中川愛海)に至っては現れていない。経済の教科書を開き授業を始めようとすると、剛と未句がいちゃいちゃしながら教室に入ってきた。注意しても聞く様子もない。うんざりする小津だったが、ほかの教室も似たようなものであった。
 教科書の「銀行」の項目で、理不尽な銀行の仕打ちを思い出した小津は「ウソつきの教科書を書き換えろ」と指示する。生徒が呆気に取られている、その時、淳が現れ「行こう」と光たちを誘って出て行こうとした。小津が「君らのためにやってるんだ」と怒鳴ると、淳たちは「勝手にやってろ」と無視して出ていってしまった。一瞬おし黙った小津は憤然と教室を出てしまった。
 そしてその後「生徒が無銭飲食」の報が入る。どうやらカトケン(ユースケ・サンタマリア)のクラスの生徒らしい。渋谷の焼肉屋で無銭飲食したのは授業中に抜け出した浩二ら4人と1年の健太(勝地涼)。たらふく食べた5人は、迎えに来たカトケンに金を支払わせて、警察沙汰にはならなかった。
 放課後、職員室では5人の処遇で会議が持たれた。「停学」「ほっとけ」「誰が金を払うんだ」・・・・・・。誰も生徒たちのことを考える者はいない。小津が口を開いた。「彼らに言うことあるでしょう。無銭飲食は犯罪だって。言わないから分からないんだ」。一瞬納得する若手教師だったが、主任の佐野(小日向文世)は「そんなことはずっと言い続けましたよ。直らないから処分するんだ」と悟ったような言い方。
 結局、5人が所属するバスケ部を明日の試合を持って休止することで話がまとまった。バスケ部の休止を小津が生徒に伝えると、悲しむどころか「助かった」と大喜びである。浩二は「明日試合が終わったら、カトケンを胴上げだ」と不敵に冷たく笑うのだった。
 夜の職員室で小津は浩二たち5人のことをまなび(西田尚美)に尋ねた。まなびによると、5人はすべて問題を抱えた転校生であること、また、この学校の教師もそれぞれ問題を抱えていることがわかった。
 カトケンはマンションの自室でみゅーを待ち受けていた。「マイケル・ジョーダンのユニフォームをあげる」とみゅーを誘ったのだ。ドアチャイムが鳴る。開けると私服のみゅー。その後ろには小津。みゅーはガードに小津を誘ったのだ。みゅーをエスコートして、ずかずかと上がり込む小津に、カトケンはまたまたペースを乱される。
 その時、再びチャイムが鳴った。訪ねてきたのは浩二だった。浩二は「胴上げ楽しみにな」とだけ言い残して帰って行った。
 翌日、小津は妻の静香(余貴美子)に会い、家などの名義を変更手続きしていた。静香は「あなたはいつも絵里を裏切った。言葉で言わなくても、表情であなたに何かを訴えていたのよ。あなたが見ていなかっただけよ」と諭すのだった。
 体育館でバスケの試合が始まった。みゅーが率いる女子部はいい試合をしている。男子の試合になった。浩二だけが突出してうまいが、点差は開くばかり。前半で100点差付き、試合はコールド負けで終了した。いよいよ男子バスケ部は休止となる。しかし、浩二のプレイに何かを感じた小津は・・・・・・。

<第3回> 「小津先生、走る」
 カトケン(ユースケ・サンタマリア)の部屋へ朝から大量の荷物が届いた。小津(田村正和)の引っ越し荷物である。その量の多さに愕然とするカトケン。同居するならルールを決めようと提案するが、なぜか小津のペースに巻き込まれてしまうカトケン。
 朝の職員室では、小津が、バスケ部の顧問を買って出たことが話題になった。感激するみゅー(瀬戸朝香)、うんざりする一葉(京野ことみ)・・・・・・。が、小津は「勢いでつい言っちゃった」と他人事のようである。
 2年1組で小津の授業が始まった。浩二(森山未來)、光(脇知弘)、章夫(池田貴尉)、淳(忍成修吾)らが小津の態度にいちゃもんを付けはじめた。「放課後、体育館で待っている」と小津。浩二たちは不愉快そうにそのまま教室を出て行くのだった。
 放課後、体育館で待っている小津の携帯に一葉から「5人は代々木公園にいる」と連絡が入った。小津が公園に行くと、5人は楽し気にボールで遊んでいた。じっとそれを見詰める小津だった。
 翌日、小津は浩二に「練習へ出てこい」と誘った。が、浩二は無視して出て行った。小津は健太のところへも行く。丁度、健太は金をたかられていた。「彼はバスケ部で、私は顧問だ。だから今後も見に来る」と、たかっている生徒を追い返し、健太にも練習に出るように誘う。健太も目をそらしてその場を離れて行った。また、章夫はまもなく転校するらしい。
 ある日小津の携帯が鳴った。島谷(大杉漣)からであった。「お前が必要になった。銀行に来てくれ」戸惑う小津だった。
 放課後、小津はまた、体育館で5人を待っていた。鹿松校長(谷啓)がぶらりとやって来て「あなたと彼らはよく似ていますよ。挫折を知っている」と言って、去って行った。
 章夫が現れた。転校の本当の理由は、父親の事業が失敗し、実は高校を辞めさせられるのだと言う。「じゃ、2学期だけでもバスケやろう」と小津が言ったその時、光が割り込んできた。「誘惑するんじゃねぇ」と小津を突き飛ばす。
 「私もきっと君のように刺々しいんだな。章夫君こいつらと離れられてよかったな。私は負けてヘラヘラしてたくはないんだ」と言い放ち、小津はその足で銀行へ向かった。
 島谷によると、興洋銀行で大口の不良債権が発生し、それを小津に隠蔽工作して欲しいのだと言う。小津はすぐさまやり手銀行マンの顔に戻りバリバリと指示を始めた。それを頼もしく見詰める島谷は「戻ってくれ。人事は旨くやる」と小津に懇願する。だが、小津は意外な答を出した・・・・・・。


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