<第1回> <第2回> <第3回>


<第1回> 『15年目のラブレター』
 15年前のクリスマス・イブ、福島県で市会議員一家が惨殺される。12歳の次女だけが奇跡的に無傷で発見された。第一発見者を装った大学生・国府(陣内孝則)が逮捕された。
 現在。蘭専門の植物園で働く大庭実那子(中山美穂)は小学生の時、家族を交通事故で失い、そのショックで当時の記憶が曖昧になっている。実那子にはエリート商社マンの恋人、濱崎輝一郎(仲村トオル)がいる。3カ月後のクリスマスに結婚を控え、幸福を実感していた。
 伊藤直季(木村拓哉)はイベント専門の照明会社に勤めるライティングデザイナー。ある日、直季のもとに幼なじみでフリーライターの中嶋敬太(ユースケ・サンタマリア)から「国府が出所した」という情報が届く。
 直季は4年つきあった恋人・由理(本上まなみ)に突然別れを告げる。訳が分からない由理に冷たい言葉を浴びせる直季。「これから出逢わなきゃいけない女がいるんだ」直季は国府の出所を機に、ある決意を固めていた。
 ある日、実那子が新居への引っ越しに備えて荷物の整理をしていると古いダンボールから幼い字で書かれた差出人不明の手紙が数通出てくる。少女時代、故郷の群馬から東京に引っ越してくる時にもらったラブレターだ。便箋にぎっしり書かれた少年の思い。その中に「15年目の今日、眠れる森で逢いましょう」と謎めいた文章を見つける。手紙の日付を見ると、それは2日後のことだった。確かに思い出の森はある。自分を待つ人間、過去が自分を呼んでいるような気がした。
 約束の日、長い間背を向けてきた故郷へ、過去を辿るように一人旅に出る実那子。輝一郎には内緒だった。懐かしい景色が記憶と共に甦ってくる。野生の森へ、奥へ奥へと樹々を抜けていく。そんな実那子に「待ちくたびれたよ」と声をかける見知らぬ青年。
 青年は「直季」と名乗った。直季はどこか斜に構えた不遜な態度で語りかける。
 驚いたことに、故郷をさった自分がどんな少女時代を送り、今に至ったか、直希はすべて知っていた。「ずっと私を見ていたの?あなたは・・・誰?」。実那子の問いに狂気の笑顔で答える直季だった。


<第2回>  『つきまとう男』
 直季は実那子が働くオーキッド・スクエアにいきなり現れ「あんたは俺の一部なんだから」という言葉を残し去っていく。実那子が後を尾けると、ビルのライティングをテストしている作業現場に出た。近くの機材トラックには「ライトセーバー」と社名ロゴがある。直季の素性を知る実那子。
 一方、直季は、敬太に実那子の婚約者、輝一郎について詳しく調べてほしいと頼む。弱みが見つかったら、結婚を壊すために利用するつもりだった。敬太は仮出所した国府が行方不明になっていることを直季に伝える。「国府が殺し損ねた女の子をどうしてお前が追いかけているんだよ」敬太は尋ねるが、直季は理由を明かさない。
 そのころ実那子は自分の部屋で、輝一郎と鍋を囲んでいた。「親父が君に早く会いたがっているよ」と輝一郎。父親・正輝が最近帰国して、結婚祝いに実那子の肖像画を描きたいと言っているらしい。正輝は海外で高い評価を得ている画家だった。輝一郎はさらに、自分が中学生の時に家出したまま帰らない母親・麻紀子についても話す。7年後に失踪宣告が認められ、法律上、麻紀子は死人になっていた。
 二日後、オーキッド・スクエア。実那子は園長に呼ばれる。大量の蘭を発送したが、注文した覚えはないと言われたと言う。電話で注文を受けたのは実那子だった。
 疲れて家に帰るとアパートの前には消防車が。火元は実那子の部屋からだった。玄関のポストに発火装置が投げ込まれていたと実那子は消防署員から聞く。
 アパートに居づらくなった実那子は輝一郎と相談してとりあえず自分だけ新居のマンションに引っ越すことにするが、引っ越しの当日、マンションの管理人から「これは事実なんですか」とビラを見せられる。なんと、そこには「本日引っ越してくる夫婦はカルト教団の偽装夫婦」とあった。 
 一連の嫌がらせが直季の仕業に違いないと確信した実那子は、その夜、直季の職場にやってくる。直季の上司・芹沢の制止も聞かずに、実那子は直季に近寄ろうと梯子を上り出す。直季の指示で実那子にピンスポットが当てられた瞬間、実那子の脳裏に鮮明な記憶が甦った。
 ――12歳の実那子。自宅の廊下にふるえて突っ立っている実那子の足下には、どす黒い血溜まりが・・・。――
 すくんだ体を直季から支えられて下に降りる実那子。今、脳裏をよぎった記憶が何なのか分からないまま、実那子は直季に「あなたの目的は何なの」と問いただす。「この世で頼りになるのは俺だけだと知ってもらいたくって」とうそぶく直季。「どうして私があなたを頼りにしなくちゃいけないの?あなた異常よ」と言い捨て実那子は去っていく。その後ろ姿を、直季はどこか切ない眼差しで見送るのだった。
 新居のマンションに戻った実那子は、過去に思いを馳せる。12歳の時、実那子は交通事故で家族を失い、奇跡的に一命をとりとめていた。ただ一人血のつながった叔父、大庭善三の養子となった実那子は何不自由なく育つが、短大を卒業する頃、善三も他界し、以来天涯孤独の身になっていた。
 昔のアルバムを見ていた実那子は、おかしなことに気づく。故郷の写真はある。家族の写真はある。しかし故郷の風景の中にいる家族の写真がないのだ。「未来だけでいい」わき上がる疑問を振り払い、これからの新婚生活を思い描こうとする実那子だった。



<第3回> 『記憶が嘘をつく』
 実那子が引越してきた新居のマンション。その向かいのアパートに直季も引越してきた。「こんなところで何をしているの」と問いつめる実那子に「何処に住もうと勝手だろ」と直季。輝一郎に相談せず、自分一人の力で解決することを決意する実那子だった。
 輝一郎は文化事業局、武藤部長に呼ばれる。輝一郎が九条物産の絵画を、会社側にも内密に不正取り引きしている、という内容の中傷記事が週刊誌に掲載されるらしい。さらに武藤は「上司の娘を捨てて純愛を貫いた濱崎輝一郎に拍手を」というファクスを見せた。武藤は自分の娘のことを書かれたファクスが会社中に出回っていることを激怒していた。結婚式が終わった頃、武藤は輝一郎に海外勤務の辞令を言い渡そうとしていた。
 結婚式の招待状リストを作る実那子と輝一郎。実那子は輝一郎が会社の上司を一切招待していないことを心配する。「もしかしたら私たち、みんなに祝福されていないんじゃないかな」輝一郎は会社であったことを実那子に打ち明ける。
 実那子は輝一郎が帰った後、直季のアパートへ。週刊誌に輝一郎のことを密告したのはあなたでしょう、あなたの目的は何?と突きつけると直季は「愛だよ、愛」と答える。直季の真の目的が分からない実那子は憤懣やるかたない思いだ。 
 実那子が帰った直季の部屋に敬太が訪れる。国府の足取りはぷっつり途絶えてしまったようだ。
 翌朝、実那子は通勤の道でまたもや直季に出会う。「薄気味悪いけど引きずられるものを俺に感じているから、婚約者に俺のことを話せないんだろう」と言う直季に「自惚れないで」と足早に去る実那子。
 オーキッドスクエアにまた大量発注があった。いたずらかどうか確かめてきてくれと、実那子は配達員と共に送り出される。
 注文は本当だった。上品な中年の婦人が出てきて、高校で教師をしていたときの教え子が毎年、誕生日にプレゼントを送ってきてくれるのだと言う。そこに突然、直季が現れる。中年の婦人は直季が所属していた陸上部の顧問だった。直季の意外な一面を垣間見る実那子。
 邸宅を後にしようとする実那子と入れ違いにやってきた敬太。実那子はその顔に見覚えがあった。「少女時代、故郷の森で一緒にターザンごっこして遊んだ、あの敬太だ」と実那子は思った。
 帰宅後、実那子は昔の段ボール箱から小学校時代の文集を見つける。「私のことを知っている先生がいるかもしれない」。番号案内で群馬県中之森小学校を調べるが、そんな学校は存在しないという。
 翌日、輝一郎が実那子を車で迎えに来た。東京・銀座で個展を開いている父、正輝に紹介すると言う。正輝は「あなたが実那子さんですか。会いたかった」と気さくな笑顔を実那子に投げかけた。展示されているのは妻、麻紀子の裸像の数々。
 実那子は戸籍謄本を調べ、自分の本籍地が群馬ではなく、福島なのを知る。実那子が故郷だと思っていた土地は、たった数カ月しかすんでいない土地だった。では子供の頃の記憶は果たして現実にあったことなのだろうか。実那子は混乱した頭のまま、直季のアパートを訪れる。


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