あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「青春」
 ある葬儀会場。遺影の中の生前の笑顔も悲しく、すすり泣きの声が聞こえている。そんなもの悲しい雰囲気を漂わせる空間に、いきなり一人の男が飛び込んできた!かと思うと、突然遺体を前に大声で泣き始めた。
「センパイっどうしてこんなことになっちゃったんですか!」。
それは、急な展開に驚いている参列者のことなど全く気にも止めることなどない、大の男にしてはあまりに無防備でストレートな感情表現の姿だった。今時、こんな奴がいたのか?と思わせるほどに・・・。
 この男、大西勝男(江口洋介)は、そういう男だ。だからこそ、アメリカンフットボール部部員だった学生時代、ことばでは言い尽くせない程世話になった先輩・淵上(木村東吉)が、自宅の火災で命を落としてしまった不幸をこれほどに悲しみ、誰の目もはばかることなく号泣したのだ。
 だからこそ、火事で父を失い、母は意識不明の重体で入院し、途方に暮れる子供たちを引き取ることを決意したのだ。恩人の子だから、放ってはおけない!と・・・・・・健太(二宮和也)17歳。桃(上戸 彩)14歳。康太(辰巳雄大)11歳。良太(神木隆之介)7歳、一人とか二人でなく、一気に4人の子供たちを。
 「まぁお前たちも辛いだろうけど、今日からオレの“豪邸“を自分のうちだと思ってゆっくりしていいから」と帰る道すがら勝男は子供たちを励ました。だが、35歳の独身で大工の勝男は、目下勤務先でもある村田工務店の二階に間借りの身。しかも、戻ってみると、そこは丁度、親父さんの雄一郎(いかりや長介)、おかみさんの咲子(いしだあゆみ)が口論の真っ最中だった。ケンカの原因というのが、どうやら一人娘・珠美(内田有紀)の出戻りにあるらしかった。
 咲子は、内緒で珠美の引っ越しを手伝ったと雄一郎を責め、高い結婚費用を出したのにと嘆く。そこにまた、ひよっこりとやって来た従業員で勝男の悪友の手塚真太朗(トータス松本)が珠美を見つけて、「誰?誰?紹介して!」などとまくしたてるものだから、ただでさえ勝男に不審感を抱いていた子供たちは、この騒ぎに益々不安を募らせてしまう。
 だが、不安を抱いたのは子供たちばかりではなかった。後先もよく考えず、子供たちを引き取ってきた勝男に対して、雄一郎や咲子は不安を隠せない。
 だが、勝男は「一度やると決めた勝負、引き下がれません!」と体育会スピリットを見せると、子供たちの母・美沙子(岡田奈々)が戻るまで、親代わりとなることを宣言。子供たちも、不器用だが、気合いと根性で面倒を見てくれる勝男を少しずつだが、たよりにし始めるのだった。
 そして、どうしても辛くて寂しくて仕方ない時、面会謝絶のはずの母に、無理して会わせたくれた勝男を、子供たちは信頼もしはじめ、「一緒に頑張っていこう。オレも一緒に応援するから」と指切りも交わすまでになった。ただし、健太だけは、勝男のところにいるのは「行き場所がないだけ」となかなか心を開こうとはしなかった。
 そして、子供たちも少しずつ勝男との暮らしになれてきたある日のことだった。勝男は、納骨に行った先で子供たちとの突然の別れを突き付けられることに・・・。勝男にこれ以上迷惑はかけられないと親族が、それぞれの家に引き取ることにしたいという。自分は大丈夫だと勝男は言った。
 だが、長男の健太は兄弟がバラバラになるのを承知で、この申し出を受け入れるというのだった。

<第2回> 「母さん」
 勝男(江口洋介)と4人の兄弟たちとの共同生活が始まって数日が過ぎた。だが、マイペースで朝シャンをする桃(上戸彩)に、まだおねしょの止まらない良太(神木隆之介)。そして健太(二宮和也)は一緒に食事を取ろうともせず・・・とまだまだ勝男を悩ませる問題は多い。
 雄一郎(いかりや長介)と咲子(いしだあゆみ)夫婦も、給料の前借りを再三頼みにくる勝男のことが心配でならない。
 かと言って、意識不明の美沙子(岡田奈々)が今日明日のうちに回復する見込みはなく・・・勝男はとにかく頑張るしかないのだ。
 そんなある日のこと、健太と同級生だという麻衣(椎名法子)が村田工務店を訪ねてきた。良太曰く、「おにいちゃんの彼女」という麻衣は、火事以来、健太が学校に登校せずゲームゼンターに入り浸ってるらしいと話した。
 その夜、勝男、珠美(内田有紀)、雄一郎、咲子らは村田家の茶の間に全員集合して健太の帰りを待った。
「頭ごなしに怒鳴ってはいかん!」と勝男をたしなめる雄一郎。
 そしてそれを聞いた手塚(トータス松本)が、元ヤンキーだった経験をいかして?まずは健太に事情を聞きにいくことになったが、完璧に勘違いしきってる手塚に健太が心を開くはずもない。
 ついに我慢しきれなくなった勝男は、「ゲーセン行ってるってどういうことだ? 俺はフラフラさせるために学校行かんしてんじゃねぇぞ!」と怒りを爆発させ、健太ととっくみ合いのケンカを始めてしまうのだった。 
 翌日。顔を合わせることもなく学校に行った健太のことが気になった勝男は、仕事場を抜けだし駅前のゲームセンターに向かった。そして健太を見つけると「親を亡くして、お決まりのグレ方してんじゃねぇ!」と一方的に言い放つのだった。その時健太は初めて、学校を辞めてそこで働いていることを打ち明けた。火事で焼けてしまった桃の制服を買うためだということも。「・・・知らなかったろ?」。
 初めて聞かされた桃のこと、そして健太の言葉に勝男は打ちひしがれた。その夜、一人居酒屋で飲みながら、さらに落ち込んだ。
 「ちくしょう・・・あいつら俺の気持ちもしらねぇで!・・・俺がどんな思いで先輩の子ひきとったと・・・」。とその時だった、「気にいらないなぁ・・・ホント恩着せがましいよ」との声・・・やはり一人で飲んでいた珠美だった。
 珠美はいう。良太のおねしょのことだって、気合いと根性、独り善がりな解決法しかとってないのではないかと。もっと子供たちの気持ちを考えることが大切で、そうしなければいつまでたっても子供たちはそっぽをむいたままなのだと。
 その翌日、勝男は、良太と向き合って、お母さんがしてくれてたというおねしょ封じのおまじないをはじめた。そして体を張ってでも健太のゲームセンターのバイトを辞めさせようと行動を開始。
 四六時中携帯を手にしていることに対しても、女とメールしてる暇があれば、他の仕事を探せ!と注意した。
 健太は、バイトのことで体を張ってくれた勝男のことはどこかで認めていた。しかし携帯のことは勝男も知らないある秘密があったのだった。

<第3回> 「母と娘」
 村田工務店の朝。今日も勝男(江口洋介)は、子供たちより早くトイレに駆け込んではガッツポーズ! 桃(上戸彩)のブラジャーを干してるところを憧れのOLに見られたと大騒ぎ!したりして誰よりも元気。
 だが、そんな勝男とは対称的に珠美(内田有紀)の表情は冴えない。実は、夫の弘明(加勢大周)から最終的な話し合いがしたいという手紙が、離婚届と一緒に届いたのだ。「いつかは迎えに来てくれるかもしれない・・・」そんな期待が、この手紙によって絶たたれてしまった。
 一人、部屋で思いにふけっていた珠美は、フッと思いたつとピアノを弾き始めた。そしてそのピアノの音を居間で耳にした桃は、突然涙を浮かべたのだ。「!」。勝男は、今朝のブラジャーの一件で泣いてしまったのかとギクリとした。だが、健太(二宮和也)だけは、桃の涙の理由を知っていた。桃の出場するピアノの発表会が近付いていたのだ。
 見舞いに行った病室。少ししゃべることができるようにまで回復した母の美沙子(岡田奈々)も、そのことを気にしているようだった。だが、桃は、火事の日から練習さえしていないし、そんな余裕もないからと出場はあきらめると健太に言う。それでも何とかしたいと、麻衣(椎名法子)に協力してもらい、桃が練習していた曲の楽譜を手に入れてやる健太。事情を知った勝男も「とにかくやってみなきゃ!」と珠美のピアノで練習して挑戦してみろ!とけしかけるのだが・・・。
 一方、話し合いに出掛けた珠美は、本人でなく代理の弁護士がきたことにショックを受け、そのことを勝男に打ちあける。そして、そうと知っては黙ってられない性分の勝男は、手塚(トータス松本)と一緒になぜか健太まで引き連れて弘明の元へ。珠美のダチだ!と啖呵をきると「会って話しをしてやれ」と言い放つのだった。
 数日後。治療のため、美沙子の長野への一時転院が決まった。その時、桃は珠美のピアノの前で、一心に鍵盤に向かっていた。
勝男は、子供たちがショックを受けることを珠美と気遣いながら、「あの旦那のどこがよくて結婚したんだ?」とさりげなく珠美のことに話しを向けた。そして、「スーツ姿がめずらしかっただけっ・・・」などと返す珠美に、弘明を呼び出したことを伝えるのだった。


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