アナマガ

塩原恒夫アナウンサーのコラム「私のベストムービー」

2017年01月06日号

【笠井編集長より】
恒例の塩ちゃんの 今年の映画 ベスト10です。今年もなかなかの“塩味”チョイス! 男おばさん(軽部・笠井)の向こうを張って、一言コメントは、今年さらに冴えてます。

2015年末から公開の輪が広がっていったアニメ『ガールズ&パンツァー』を遅ればせながら、出張中の地方都市のシネコンではない劇場で見た。茶道・華道などのような戦車道をきわめんとする女子学生の奮闘に、戦車のキャタピラー音など、映画館ならではの興奮を味わったが、終映後明るくなった場内に正直驚いた。客席数90ほどを埋めた3分の2の観客全員が、男子だったのだ。 自分も単独行ゆえ、他人のことは言えないが、実地リサーチという点では収穫十分の体験となった。  そんな訳で、勝手に今年も“わがまま”ベスト10にお付き合い下さい。

対象は、2015年12月〜2016年11月末、公開作品です。

洋画ベスト10

10位『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

売り切れ必至の初日初回をネットで購入。オープニングから、遅れて入ってきた他人の頭がかぶる悲劇に・・・肝心の中身は、『スタートレックⅢ/ミスター・スポックを探せ!』のよう。ともあれ、“祭”の幕はあがった。

そして、早くも「ローグ・ワン」公開です。

9位『栄光のランナー 1936ベルリン』

ヒトラーを怒らせた男、四冠走者オーエンス(米)の物語。偉人は、理解ある仲間に助けられ、常識・偏見の逆境に立ち向かう。オリンピック・イヤーにふさわしい一本。『ペレ 伝説の誕生』も併せておすすめです。

8位『死霊館 エンフィールド事件』

スピンオフ含めシリーズはや3作目。超常現象研究家という実在する夫婦の活躍談は、過去映画化されたホラー元ネタをうたいつつ、毎回パワーアップしていて怪しい暴走をみせる。日本版なら、林家ペー&パー子さんで!

7位『007/スペクター』

いろいろと原作ファンの心をくすぐりつつ、世界観を広げていこうとする制作チームの頑張りに感謝。次作ニュー・ボンドから、再び宿敵が黒幕となるのだろうが、『ドクター・ノオ』から順にリブートしてもいいかも。

6位『ズートピア』

アイディア、テーマ、キャラクター、そしてもちろんストーリー。娯楽要素をふんだんに、ディズニー・アニメの底力をみせつけられた。見終わっても心はピョーン、ピョーン~我が家の愛犬を勝手にウサギと重ねてしまうのでした。

9・11後のキリスト社会VSイスラム社会の分断を 草食と肉食の動物にたとえて描くなんて、ディズー攻めてました。あっぱれ。

5位『ブリッジ・オブ・スパイ』

スピルバーグが描く冷戦時代のサスペンスは、期待どおりの感動作。実話に基づいたコーエン兄弟の脚本も良かったが、アカデミー助演男優賞受賞ライランスの演技と存在感につきる~ビッグ・フレンドリーとはいかないが。

4位『ハドソン川の奇跡』

86歳の英雄監督は、厳しさと優しい眼差しで“事実”に向き合う。繰り返される着水までの経過が緊張感を高め、感動への伏線となる。自身の名作『スペースカウボーイ』で、トラブルへの対処は経験済みだった。

3位『ニュースの真相』

「うわー、老けたわね」、斜め前の席に座っているシニア女性が、レッドフォードを見た瞬間につぶやいた。いったいこの人は、どのあたりが最後に見た作品なのか気になって・・・『キャプテン・アメリカ』でないのは、間違いない。

同じ報道不祥事実録モノでも、アカデミー賞作品賞の「スポットライト」ではなく、こっちなんだ。

2位『キャロル』

原作は、『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミス。時代を背景に、サスペンスたっぷりに描かれる真実の愛の物語は、じわり染み込む感動を残す。演技派ケイト・ブランシェット相手に、ルーニー・マーラの大健闘が光る!

私も好き。これ。

1位『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』

この作品を見て、ベストセラー「嫌われる勇気」の教えを思い出した。赤狩りの対象となり、仕事が追いつめられていく中で、脚本家として信念を貫きとおす爽快さよ。“俺は、スパルタカスだー”素晴らしい映画に乾杯。

『ザ・ギフト』 贈り物の中身が、こわすぎる。

邦画ベスト10

10位『シン・ゴジラ』

たくさんのキャストが、アニメの吹き替えを担当しているようで、まさに“シン”。フルイ・ゴジラファンのわたしは、予想外の内容・表現に戸惑いを隠せず。

9位『海難1890』

そのときどきで、国としての正しい行動が問われる現代。歴史のめぐり合わせに、思わず目頭をおさえた。早速、トルコライスが食べたくなった。

8位『SCOOP!』

福山カメラマンがカッコいいのはもちろんだが、二階堂助手の存在のリアルと成長が頼もしい。原田真人監督版のオリジナルTV作品が見たい。

7位『日本で一番悪い奴ら』

スタッフ、キャストともにノリまくってる快作。警察組織の闇を笑えるところまでテンション引き上げて描ききった。綾野剛に最優秀主演男優賞だ。

今年は綾野剛 大活躍!!

6位『クリーピー 偽りの隣人』

「これはフィクションですよ、映画なんですよ」という演出にもかかわらず、だからこその恐怖が隙をついてくる。世界のシン・クロサワ万歳。

5位『怒り』

2時間22分の上映時間中、肩に力が入りっぱなし。何度も押し寄せる感情の波は、いつしか信じる・信じたい人間の暖かさにほっとする。

4位『64 ロクヨン 前編/後編』

正直、上映を分けなくてもよかったかなと。面白い話には、何時間でもつきあえるから。俳優陣の交響曲ともいえる、見事な一編でした。

最高のエンタメ。 原作とNHKのドラマを見ていない人なら更に評価が上がる

3位『君の名は。』

興行収入200億円超えの大ヒット作に対して言えるのは、「いまだみてない、君の名は?見終わってどこがおもしろいのと聞く、君の名は?」自由ですけど。

2位『聲の形』

ノイズにこだわった音響演出に、満員の客席が静けさで応える。元を知らなかったので、“やしょう”の意味だけ、鑑賞中にはわからなかった。

「君の名は。」効果で大ヒット!した作品が「君の名は。」越えとは。まさか1位も…

1位『この世界の片隅に』

アニメーションが上位を占める中、このベスト10の片隅・1位が残っていました!ちびまる子ちゃんが、戦争を経験していたら・・・身近に当たり前にある“死”を受け入れ、前を見据えるヒロイン・のん(声)から力をもらった。

でたー!!塩ちゃん史上はじめての、TOP3すべてアニメ!!今年の日本映画を反映してるねえ。

『残穢 住んではいけない部屋』
イキイキ演技が、こわすぎる。

最後に、正月公開中の作品では、全編スマホで撮影という『A.I.love you』が面白かった。斎藤工の声のみの演技に、アナウンサーとして嫉妬しつつ?、ヒロインがスマホ画面にむかっての長時間ワンカット演技に感動~森川葵、注目です。

【笠井編集長】
いかがでしたか?  塩ちゃんのチョイスには、なにか、自分が好き嫌いというだけでなく、映画に対する正しい評価をしようとする、冷静な目と、暖かさが感じられます。見逃した作品は、是非、DVD・ブルーレイでチェックしてみてくださいね。

このページのトップへ