オンエア

戦慄の国内事件 押入れの中で溺れ死んだ男

2000年4月某日、この日、九州地方のとあるアパートで…悲劇は起きた。 殺害されたのは、2階の部屋に住んでいた…小崎 武(仮名)さん、48歳(当時)。 彼は密室の押入れの中で亡くなっていた。

そして解剖の結果、驚くべき事実が判明する。 首周辺に圧迫された跡があったものの、死因は大量の水を吸い込んだことによる『水死』だった。

さらに、この事件が昏迷を極めたのにはワケがあった。 殺害したと供述する犯人が、なんと、2人も現れたのである。
押入れの中で溺れ死んだ男。 あまりにも不可解な事件、犯人は一体、どちらなのか?

この不可解な殺人事件の捜査を担当したのは捜査一課の刑事たち。 彼らはまず、殺された小崎さんの身辺を探った。
すると、すぐにある人物が浮上した。 2000年5月4日、元スナック従業員、黒川麻理(仮名・20)。

彼女はスナックでホステスとして働いていた。 事件の1年前(1999年春)、客として店を訪れた小崎さんと知り合い意気投合、二人は交際するようになった。
恋人である彼女なら、何か事件について知っているかもしれない。 捜査官たちが事情を聞いてみると…なんと麻理は、すぐに殺害を自供したのである。

事件が起きる1ヶ月前に小崎さんと同棲を始めたという麻理。 しかし、それから間もなく、2人の関係に変化が…麻理に他に好きな男性ができたのだ。 彼女は別れ話を切り出した。 ところが…小崎さんは、それに応じなかった。 やがて他に帰る家がなく、同棲を解消できずにいた彼女に対し、夜遅くなる理由をしつこく問い詰めるようになったという。

そんなある日…好きになった別の男性といるところを目撃された。 その男性との関係を問い詰められた。 このことがきっかけで、小崎さんを疎ましく思う気持ちはさらに強まっていった。

そして、事件は起きる。
この日も彼女は夜遅く、同棲先のアパートへ帰宅したのだが…そこには、ぐったりと横になっている小崎さんがいた。 ゆすっても反応がなかったことから、薬物か何かを飲んで自殺をはかったと思ったという。

小崎さんにはまだかすかに息があったという。 それを見て、ある考えが浮かぶ…『彼との関係を清算するには…このまま殺すしかない』。
そして、とどめを刺すように彼の首を絞めると…浴槽に何度も何度も顔を押し付けて、殺したという。 事件の発見を少しでも遅らせるため、遺体を押し入れに隠して、合鍵でドアを閉め、逃走した。

麻理の自供により事件は一件落着…かと思いきや、思いもよらぬ事態が起こる。
麻理逮捕からおよそ1週間後、この日、取調べを受けていた男の名は、山城 慎一(仮名・37)。 金銭目的で、営業終了後のホームセンターに侵入。設置された自動販売機をこじ開けようとしたことから、建造物侵入と窃盗未遂の容疑で現行犯逮捕されていた。

つまり、小崎さん殺害とはまったく無関係の事件で逮捕されていたのだが…突如、殺害を自供したのだ。 動機は金。
独り身の小崎さんはお金を貯めているのではと思い、犯行に及んだという。 実は、山城は小崎さんの隣の部屋に住んでいたというのだ!

小崎さん殺害事件から約2ヶ月前、山城が小崎さんの隣の部屋に住み始めたのは、事件から2ヶ月ほど前のことだった。 友人名義で部屋を借りていたため、警察は彼が小崎さんの隣人だとはすぐには気づかなかった。 隣同士、顔見知りになっていたが、経済的に困っていた山城は、金銭目的で殺害を計画したという。

事件当日、冷蔵庫を運ぶのを手伝って欲しいと、小崎さんに声をかけたという。 そして、突如、背後から金属バットで殴りつけると…首を絞めて殺害したという。
その後、小崎さんの部屋に遺体を移した。 事件の発見を遅らせるため、押し入れに遺体を隠した。 そして、金目のものを探したものの見つからず、鍵を奪って逃走したという。

しかし、小崎さんの死因は『水死』。 山城の供述とは異なる。
死因とは異なる供述にも関わらず、自分がやったと言い張る山城。
一体、なぜなのか?

もしかしたら、山城は麻理をかばおうとしているのかもしれない。 捜査官たちは、麻理と山城に接点がなかったか、の関係を徹底的に調べることにした。 ところが…二人の接点は見つからなかった。

こうして二人の関係性が否定される中、事件はさらに思いもよらない方向へと動き始める。
小崎さんの体内からは薬物は検出されなかった。 小崎さんは自殺など図っていなかった…ということは、麻理の供述も事実とは異なっている。

そんな中…事件が大きく動き出したのは、捜査開始から約1ヶ月後のことだった。
凶器に使われたと見られる金属バットと、小崎さん宅の鍵が山城が供述した場所から見つかった。 いずれも捨てた場所は犯人しか知り得ない。 発見された金属バットと鍵は、いいかげんな供述を行っていると思われていた山城が、事件に関与していることを裏付ける決定的な証拠だった。

ともに供述に不審な点がある男女、一体 どちらが正しいのか?
捜査官たちは、二人が供述した内容をひとつひとつ確認していった。
そもそも動機は何だったのか?
殺害状況はどうだったのか?
そして殺害後、2人はどうしたのか?

こうして、2人の供述をひとつひとつ確認していった捜査官たち。 すると…ある事実が浮かび上がってきた。
捜査官が辿り着いた衝撃の真相。 殺害された小崎さんの身に起きたこととは?

事件があったあの日…小崎さんを襲ったのは、山城だった。 彼は、小崎さんを自分の部屋へ呼び出し、金属バットで殴ると首を絞め、殺害した。 小崎さんは左側頭部を殴られていたが、小さな内出血程度だったので、警察も当初、これが金属バットによる傷だとは認識できなかったという。 しかし、後の調査で、山城の部屋から小崎さんの血痕が発見され、犯行が裏付けられた。

山城はその後、事件の発覚を遅らせるために遺体を小崎さんの部屋の押入れに隠すと…金目のものを物色。 しかし、見当たらなかったために鍵だけを奪い、部屋を密室にして逃走した。
それが、午後2時40分頃のことだった。

ところが…小崎さんは死んでいなかったのである。 首を絞められたショックで、一時的に脈が止まってしまったが、奇跡的に生きていたのだ。
しかし、バッドで殴られた上に、首を強く締められたことで、体には大きなダメージが残っていた。 そのため、まだ息はあったが、押入れの前で倒れてしまったのだ。

その後、家にやってきたのが…麻理だった。 彼女は力なく倒れている小崎さんを見て、フラれたショックで自殺を謀ったと勘違いした。 そして、彼を疎ましく思っていた麻理は、この状況を見て、殺害を決意。

首を力の限り絞めると…その後、浴槽の中に何度も顔を押し付けた。 これが直接の死因となったのだ。 そして、山城同様、麻理も事件発覚を遅らせるために遺体を押入れの中に隠すと…合鍵で部屋を施錠し、逃走した。
時刻は日付が変わった午前2時30分頃だったという。
つまり…二人とも嘘はついていなかったのだ。

その後、裁判にかけられた2人。 最終的に死に至らしめた麻理は『殺人』の罪に問われ、懲役8年が言い渡された。 そして、殺人のきっかけを作った山城は『強盗殺人未遂』の罪に問われた。

さらに、窃盗などの前科があった山城には、今回の殺人事件後に犯した建造物侵入などの罪も重なり、麻理よりも重い懲役15年の判決が言い渡された。
後に山城は、自ら殺人を自供したことについて、別の女性が犯人にされていて申し訳ないと思ったと弁護士に語っている。