オンエア
今から33年前、カナダにある人口1000人ほどの小さな町キプリング。
この日、ガソリンスタンドで働きながら、ひとり娘を育てるシングルマザー、キャンディスはひどい片頭痛に悩まされ、病院を訪れた。
診察をしたのは、ジョン・シュネーベルガー。
キャンディスの主治医であり、彼女の出産にも立ち会った開業医だった。
診察が終わると、キャンディスは…ジョンに相談をもちかけた。
実は、診察に来る少し前に、恋人の浮気が発覚、激しい喧嘩をしていたのだ。
相手が信頼していた医師ということもあり、苦しい胸のうちをすべて打ち明けていた。
すると…ジョンは気分が落ち着くものを処方するといって、キャンディスに注射を打った。
キャンディスは、注射を打たれた後、眠ってしまったのだが、目を覚ました時、ジョンから暴行を受けたのではないかと疑いを持ったという。
だが、ジョンに聞いても、しらを切られてしまったという。
そこでキャンディスは、別の街の病院へ行き、検査を依頼。
すると、彼女の血液から、必要以上に強力な鎮静剤の成分が検出された。
これを受け警察は、当日、彼女が身につけていた衣服を調べた。
するとそこから、暴行をしたと思われる者のDNAが検出されたのだ。
彼女は嘘をついてはいない。
そう思った警察は…ジョンに話を聞くことにした。
だが、ジョンは鎮静剤を投与したことは認めたものの、暴行については否定した。
警察は、病院の看護師たちにも話を聞き、さらに地元で聞き込みも行った。
すると…聞こえてきたのは、ジョンが地域に貢献する医師として、誰からも信頼されているという話ばかりだった。
一方、キャンディスについては…遊び好きで、お金目当てで訴え出たのではないか、そんな噂ばかりが聞こえてきた。
しかし念のため、警察は、DNA鑑定を行うことに。
医師だったジョンは自ら採血を行い、血液を提供した。
その結果は…不一致!
キャンディスの衣服についていたDNAとは、一致しなかったのだ。
こうしてジョンによる暴行の可能性は否定された。
小さな町での出来事。
その噂は瞬く間に人々の間に知れ渡った。
キャンディスには『金目当ての噓つき』などといったレッテルが貼られ、彼女を誹謗中傷する声も日に日に増えていった。
それでも彼女は諦めず、鑑定の結果に納得ができないと、訴え続けた。
そして、事件から2年後、2度目のDNA鑑定を行うために、今度は警察官の立ち会いの元、ジョンの血液が採取された。
だが、再度 行われた鑑定でも、DNAは一致しなかったのである。
これを受け、警察は捜査の打ちきりを決定。
その後キャンディスは、娘を連れ、街を去った。
地域の人たちの非難の声とさげすむ目に耐えられなくなったからである。
そして二度目の鑑定から2年の月日が流れた。
キャンディスは自費で探偵に調査を依頼。
周りから金目当ての嘘つき呼ばわりされたままでいることが、どうしても納得できなかったのだ。
調査を開始した探偵は、ジョンの車から使用済みのリップクリームを入手、民間の機関に送り、DNA鑑定を依頼した。
返ってきた結果は…ティナの衣服についていたDNAとリップクリームに付いていたDNAは…『一致する』というものだった!
この結果に驚いたのが警察。
このままでは過去2回行った自らの鑑定に不備があったと指摘されかねない。
そう考えた彼らはジョンに三度目の鑑定を行いたいと申し出た。
彼は快く応じ、再び採血が行われた。
その結果は…解析不能。
血液の質が悪く、DNAが検出できなかったというのだ。
そんな中、驚くべき事件が…ジョンによる別の暴行事件が発覚したのである。
これを受け、改めて検査の必要性に迫られた警察は、4度目のDNA鑑定を行うことになった。
前回が解析不能という結果だったことから、腕ではなく指先から血液を採取。
さらに、頬の内側から皮膚細胞、毛髪も採取された。
そして3カ所それぞれのDNAが、キャンディスの衣服から検出されたDNAと比較された。
その結果…DNAが一致したのだ!
こうして、事件から7年後、キャンディスの主張はようやく認められ…ジョンは逮捕されることとなった。
それにしても、いったいなぜ、過去に行われたジョンの血液のDNA鑑定は、不一致という結果だったのか?
その後、開かれたジョンの刑事裁判。
そこで彼は驚くべき告白をした!
なんと、これまで、ジョンの腕から採取された血液は、彼自身の血ではなかったというのだ!
供述によれば、ジョンはDNA鑑定を受けることが決まると…両端を塞いだ医療用のチューブに院内で調達した患者の血液を詰めたものを用意し…自ら左腕を切開して埋め込んだのである。
そして、実際に採血される時は…チューブを埋め込んだ際の手術の跡が見えないよう、袖で隠していたのだ。
なお、3度目の鑑定で『解析不能』という結果になったのは、チューブを入れてから3年以上が経過していたため、中の血液が劣化していたことが原因だった。
その後、刑事裁判でジョンには、別の暴行事件と併せ、懲役6年の刑が言い渡され、医師免許は剥奪された。
こうして、ようやく名誉を回復したキャンディスは、その後、病院の介護スタッフの職につき、今は幸せに暮らしているという。