オンエア
近年、迷惑行為から発展して、近隣トラブルとなるニュースは後をたたない。
そして、トラブルの原因となるのは…あからさまな迷惑行為だけとは限らない!
近所で頼りにされている元警察官と…植物が好きな一人暮らしの穏やかな女性。
ごく普通の近所づきあいをしていた2人…それがほんのささいなすれ違いにより、前代未聞の近隣トラブルとして日本中を震撼させることに!
はじまりは今から約15年前、当時50代だった小川が東京都内のある住宅街に引っ越してきたことだった。 彼女の家は道幅2mほどの私道沿いで、コの字型に6軒の家が並んだ路地裏の一角。 一人暮らしの彼女は、趣味の園芸を通じて、すぐに近所とも打ち解けた。
小川の隣人は、50年以上この地で暮らす近所の情報通。
斜め向かいに住む女性と共に、小川の良き相談相手になっていた。
小川の真向かいの家に妻と暮らす武田は、定年間際に警視まで上り詰めた元警察官。
この地域では、頼りにされている存在だった。
小川は近所と良好な関係を築き、穏やかな日々を過ごしていたはずだったのだが…一人暮らしの小川は、寂しさを感じていたらしく、近所の野良猫が癒しの存在になったのか、何かと世話をやくように。 さらに、小川のガーデニングの花が徐々に増えていき、両隣にははみ出してはいなかったものの、幅わずか2mほどの路地に少しではあるがはみ出すほどに。 邪魔になっているわけではないので、このくらいならと…隣人は注意せずにいた。
そんなある日のことだった。
武田はガーデニングの鉢植えが道路にはみ出していて迷惑だと小川に注意した。
小川は、武田の家の木の枝も少しはみ出していると言い返した。
そこで、お互いにはみ出さないよう片付けることになった。
その後、武田は路地にはみ出した枝を整理。
だが、小川宅の鉢植えは何も改善されていないように見えた、これが火種となった。
注意のため近づいた際に誤って、武田は鉢植えを倒してしまった。
武田は謝ろうと思ったものの「何も蹴ることないじゃないですか!」と怒る小川に「あんたがルールを守らんからいかんのだ」と、つい言い返してしまい謝るタイミングを見失った。
実は、小川も武田に言われた後、鉢植えがはみ出さないように気を付けてはいたものの、手入れの際などに時折 ずれてしまい、道路にわずかながらはみ出してしまうことがあった。 たまたまそういったときに、武田に問い詰められてしまったのだという。
一人暮らしの小川にとって、近所付き合いがうまく行かないことがよほどショックだったのか、他の近所の人ともあまり話さなくなった彼女は、やがて 生活が乱れるようになっていったようだった。
ゴミが入ったビニール袋を軒先に放置するようになった。
それは、規律にこだわる武田にとって、とうてい許せることではなく、まるで自分への嫌がらせのようにも思えたのだろう。 武田は虫が湧いてしまわないようにと、殺虫剤を撒いていた。。
小川はネコに殺虫剤がかかってしまったら大変だと、武田を突き飛ばしたのだ! 武田はゴミに虫が湧かないようにという一心から、小川は猫に誤ってかかったり、ネコが殺虫剤のかかった草木を食べたりしないようにという一心からだった。 こうして、2人の気持ちはすれ違っていく一方だった。
武田が庭で真剣を振っているのを近所の人々が目撃していた。
そんな中、小川宅のゴミ袋は、さらに増加していった。
武田は殺虫剤を撒いていると、小川に突き飛ばされた!
2度も押し倒された…それは、武田の元警察官としての尊厳をズタズタにした。
武田は小川に向かってこう言った。
「殺す。お前を殺してやる」
その夜のことだった。 武田の妻が小川の家にやって来て、形だけでよいから夫に謝って欲しいと懇願してきた。 だが、小川は武田の妻を追い返した。 もはや誰にも止められない状況になっていた。
そして…翌朝、武田の家に警察官がやって来て、事情を聞かれた。
彼が殺虫剤を撒いたと小川が110番していたのだ。
武田にとっては、後輩たちの前で侮辱されたも同然だった。
近隣に小川の悲鳴が響き渡った。
武田が真剣で小川を切りつけたのだ!
近所の住民の通報により警察と救急が駆けつけ、小川は病院に搬送されたが、まもなく死亡が確認された。
そして、武田は小川宅に立て籠ったまま出てこなかった。
日本刀を所持していたため、SATも駆けつけ、警察は武田を説得。
だが、返事がないため突入すると…武田は小川宅の玄関で自殺しているのが発見された。
初めからそのつもりだったのか、やってしまった事の重大さを悟り、自らけじめをつけたのか。
今となっては、その真相は知る由もない。
同じ近所に住む者同士、少しでもお互いの心情に想像力を働かせていれば、ここまで事態がエスカレートするのは防げたのかもしれない。
近年、ご近所トラブルの相談件数は増加傾向にあり、およそ30万件もの相談が警察によせられているという。
都市圏では『道路族』という言葉も話題になっている。
道路族とは、住宅街の路地裏など狭い路上で大声で騒いだり、遊んだりして近隣の迷惑になっている子供たちやその保護者のことを指す言葉。
特に隣家との距離が近い都市圏で近年問題になっている。