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アメリカ版 天功埋蔵金 謎解き冒険バトル

近年アメリカでもあった埋蔵金をめぐる騒動! 日本での天功さん同様、アメリカ全土にに宝探し旋風を巻き起こした大富豪がいた!
宝探しの主催者は、この男 フォレスト・フェン。
今から15年前の2010年、フェンが財宝を収めた宝箱をロッキー山脈のある場所に隠したと発表した。 さらに発見者にその財宝を全て与えるという。

フェンが財宝を隠したというロッキー山脈は、アメリカとカナダにまたがり、アメリカ国内だけでも7つの州を貫く、およそ4800キロの広大な山脈。 そんな山脈のどこかに、重さおよそ10キロの財宝を隠したというのだ。 フェンが隠した財宝は、総額で100万ドルから300万ドルと報じられた。 当時のレートで換算するとおよそ1億円から3億円。

億単位の私財を「宝探し」にポンと投じたフェン、彼は一体 何者なのか?
空軍のパイロットだった彼は…退役後、古物商に転身。 独学ながら、その目利きが評判となり、年商は当時の日本円で6億円を超えるほどに!!

しかし、フェンにはもともと 宝探しを行う考えなどなかった。 ニューメキシコ州・サンタフェに豪邸を構え、優雅な生活を続けていたフェンだったが、実は58歳でガンを患った。 発見が遅く、かなり進行していた。
死を覚悟したフェンは、いざというときは財宝を抱えたまま、ロッキー山脈で最期を迎える計画を立てたのだ。 中世に作られた高価な箱に、金貨や金塊、ダイヤモンドやエメラルドなどの宝石類を収めたという。

しかし、懸命な治療の甲斐あって、奇跡的にガンを克服!!
宝箱は、屋敷の中に保管されることになった。

それからおよそ20年、80歳になったフェンは…自分の遺産を整理する時期がきたと考えた。
そこで思いついたのが、あの宝探し! 死ぬ時のために用意していた財宝を使おうと考えたのだ。

その理由について、発案当時、こう語っていた。
フェン「今の時代 多くの人々が仕事を失い、新聞の見出しには絶望的な言葉が書かれています。そこで私は人々に希望を与えたいと思ったのです」
今から17年前、アメリカのみならず、世界を混乱の渦に巻き込んだのが…リーマンショックだ! 未曾有の恐慌によって 失業者が激増! そんな現状を憂いたフェンは、宝探しに夢と希望を託したのだ。
フェン「それと、子供たちに大自然の中で遊ぶ目的を与えたかった。この宝探しをきっかけに家族がキャンプやハイキングを楽しんでくれるようになったら嬉しいです」

当時フェンには、およそ5億3000万円の資産があった。 だが、その多くが 宝探しで他人の手に渡ってしまうことになる。 家族はどう思っていたのか?
フェンのお孫さんに、取材すると…
「祖父は昔から、慈善活動に熱心でした。ガン患者のために募金を集めたり、歴史的価値のある骨董品を地元の博物館に長年寄贈したりしていました。そんな祖父が世の中のためを思って宝を提供しようというのですから、反対する家族はいませんよ」

今から15年前、メディアが一斉にフェンの宝探しを報じると、一気に話題となり、一攫千金を求めて、全米から大勢のチャレンジャーが続々とロッキー山脈を目指したのだ。
だが、人々の心に火をつけたのはその「金額」だけではない、熱狂を生んだ理由が実はもう一つあった!
これは、当時フェンが出版した、自伝「追跡のスリル」
その中に…「私は一人でそこに向かった。誇らしい宝と共に。そこで秘密は守られるだろう。新旧の富の手がかりと共に」と言う出だしで始まる『24行の詩』が掲載されていた。 これはフェンが財宝を隠しに行った時の状況を詩として残したものだという。

当時 フェンは、この詩についてこう話している。
フェン「自伝の中の詩には 9つの手がかりが隠されています。その手がかりを辿っていけば、宝箱を見つけることができるんです」
『温かい水が留まるところから始め、峡谷の中を下る。遠くはないが 歩くには遠すぎる。ブラウンの家の下に入る』
『ここからは臆病者の場所ではない。終わりは刻々と近づいてくる。小川を上るパドルはなく、重荷と水の高さだけ』
『もしあなたが賢く炎を見つけられたなら、すぐに下を見よ 冒険は終わるだろう。宝箱を抱え静かに進め』
『だからよく聞いてほしい。あなたの努力は寒さに耐える価値がある。勇気をもてば 木の中で、その金の権利をあなたに与えよう』
フェン「挑戦者たちよ これを解読してみたまえ、見事 財宝を見つけた者にそのすべてを与えよう!」

ナゾを解いて、一攫千金! まるで映画の主人公のような世界が、人々の冒険心を駆り立てたのだ。
さらに宝探し用のサイトは、謎解きや夢を語り合うなど、大盛り上がり。 宝箱を探しにロッキー山脈へ出かける人が増え続けたことを、フェンは とても喜んでいたという。

しかし、宝を探し当てた者は一向に現れない。
そこで、追加のヒントをカメラの前で語り、発信した! さらに、挑戦者達が墓地などを勝手に掘って迷惑をかけないよう、配慮する意味もあった。
ちなみに、ロッキー山脈には公有地や私有地が混在。 遺跡や文化財を掘ったり、私有地に無断で立ち入ることは禁止されているが、フェンはそれらに抵触しないようにして財宝を隠したとされている。

フェンが財宝を隠してから3年が経ち、5年が経った。 依然として発見者は…現れず。
しかし、その一方で、宝探しへの熱は冷めることなく、挑戦者は増え続けた! 誰も発見できないことをチャンスと考える者が多かったからだ! そして、失敗しても挑戦を繰り返し、宝探しの沼にハマっていく者が多かった。

そしてスタートから、8年が経過した2018年までに、宝探しにチャレンジした者は、実に35万人近くにも上った。 ヒントの考察も出尽くした。 フェンが隠した財宝は…それでも見つからなかった。

そして、この頃から『宝探しゲーム』は思いもよらぬ方向に向かうことになる。 もっと手がかりを教えて欲しいというメールが毎日100通以上も届くようになった。 その中には、フェンを脅迫するようなものもあった。

宝探しの沼にハマった男たちが 次々に破産。
さらにフェンを相手どり、詐欺として訴訟を起こす者まで現れた! まさか 詐欺師よばわりされ、訴えられるとは、フェン自身、予想もしていなかった。

やがて、脅迫の電話がかかってくるようになった。
なんと、財宝が見つからないのは、フェンが自宅に隠しているからに違いないと思い込み、不法侵入する者まで現れた! 同居していた家族が異変に気づき、通報したことで、間一髪 助かった。

しかし、フェンが最も気落ちしたのは、自分が身の危険にさらされたことではなかった。
一部の挑戦者の中に、墓地には隠していないと言ったにもかかわらず、墓地を無断で掘りおこし、逮捕された者が出たのだ。 懲役6ヶ月の刑を宣告されたユタ州出身の男性は「財宝を発見できるかもしれないという興奮に駆られ、間違った判断をしてしまいました」と述べている。

さらに最悪の事態が…宝探しに熱中するあまり、ロッキー山脈の奥深くまで入り込んだ挑戦者が、滑落事故によって命を落としてしまったのだ。 他にも遭難などで少なくとも5人が命を失った。
すると、死亡事故が発生したことを受け、フェンの地元・ニューメキシコ州警察が宝探しの中止を要請したのだ。 孫のシャイロさんによれば、フェンは犠牲者が出たことをひどく悲しみ、数日間 自室にこもっていたという。

1週間ほど 悩んだフェンが出した結論は…宝探しの続行だった。
フェンには持論があった。
フェン「例えば、誰かがプールで溺れ死んだとしてもプールの水を抜くのではなく、泳ぎ方を教えるべきなんです。大きな夢を掴むためには リスクがあるのは当然。そんなことここで中止にしてしまっては、リスクを承知で本気で挑んでいる人たちに申し訳ない」
こう言って、警察を説得した。

これについて家族は…
「みんなお金儲けでしょって言うんですけど、実は祖父は ヒントが書かれた自伝の売り上げを一切 受け取っていないんです。祖父はガンで苦しんだ経験があったので、ガン患者基金へ寄付をしていたんです。そんな思いがあると知っていたので、家族は 彼の決断を誰も止めませんでした」

その後、二度と事故は起こって欲しくないという思いから、「財宝を隠したとき私は 80歳だったんです。80の男が 宝箱を抱えて辿り着けないような危険な場所には、宝は絶対にありませんから!」と、コメントした。
果たして、フェンの宝を見つける者は現れるのか? 不可能を可能にする者は誰なのか?

テキサス州に住む、あるトレジャーハンターは、この宝探しが始まって9年目に参戦。 ロッキー山脈のとある村にを10回も訪れていた。
なぜなら…現地に足を運び続け詩の言葉を解読した結果、この村を流れる川の峡谷こそが、詩に出てくる場所だと確信。

夕陽の中で1本の樹を見つけた。
『もしあなたが賢く炎を見つけられたならすぐに下を見よ 冒険は終わるだろう。勇気をもてば木の中でその金の権利をあなたに与えよう』
この場所がフェンの詩の手がかりと完全に一致すると確信した。 果たして、財宝を手にするのは、このトレジャー・ハンターなのか?

一方、こちらのトレジャーハンターは、探検に挑戦するのは初めてだという、医学生。 友人に教えてもらった宝探しに夢中になっている。
ストゥエフ「詩を謎解きと捉えるなんて間違っている」

なぜ、ヒントが隠されている「詩」を謎解きのように解読しないのか? SNSで彼はこんな発言をしている。
ストゥエフ「多くの人は得た情報を自分に都合良く解釈しがちだ。そこに落とし穴がある」
例えば、フェンの詩に『峡谷の中を下る。ブラウンの家の下に入る』というフレーズがあるが、もしロッキー山脈のとある峡谷の近くで偶然、無関係の茶色い建物を見つけたら、隠し場所のヒントに違いないと決め付け、時間を大きくロスしてしまうからだ。

むしろ大事なのは、フェンの考えをよく知ること。 そう思った彼は、これまでのインタビューなどを徹底的に確認し、フェンの人柄と考えを探った。
『私は死を覚悟したとき、財宝が詰まった箱を抱えたまま山の中で死ぬつもりだった』
ストゥエフ「そう 本来の目的は宝探しでもナゾ解きでもない。元々彼は死に場所を探していたんだ」

そこで医学生は、フェンが死に場所に選びそうな場所所を徹底的に分析。 やがて…ある「炎」に辿り着いたという。
果たしてそこに、宝はあったのか?

その一週間後、事態は急展開を迎える。 ゲーム開始から10年、ついに発見者が現れたというニュースが、全米を駆け巡った。
フェンも自身のブログに「ある東部から来た男性が宝箱を見つけました」と投稿。 「発見者の保護のため、彼の名前は明かさない」と述べ、発見場所も公開しない方針を示した。

このフェンの投稿に、即座にリアクションした男がいた。 それは、あの時、確信に近い感覚を持って、捜索を行なっていたハンターだった。
実は…必死に掘り進めたものの…数時間後、トレジャー・ハンターはようやく気づいた。
「こんな深い穴、80歳の老人が 掘れるわけがない。ここに財宝がないのだとしたら、どこにもあるはずがない」
するとハンターは現場の写真を撮影し、『私はあなたの秘密を知っている。あなたは宝を隠していない』とフェンに送信。
だが、この1週間後に財宝が発見されたという報道が フェンから発表されたのだ!

ハンターがメールで追及した直後に発表された宝の発見! このタイミングの良さに、彼は一層疑いを深めた。
ハンターがその顛末をSNSなどで発信すると…他の多くのトレジャーハンターたちもフェンをバッシング。 その後フェンは、宝が発見されたのが、ワイオミング州であると発表したものの、それで納得したものは少なかった。
そして財宝発見の発表から3ヶ月後、フェンは、90歳で亡くなったのだ。

10年の間に宝探しに挑戦した35万人のモヤモヤが最高潮に達した頃、驚きのニュースが全米を駆け巡った。
「自分が財宝を発見した」という男性が名乗り出たのである!
それは、あの医学生! 詩を謎解きととらえず、フェンの人柄と考え方を徹底的に研究した、宝探し初挑戦の若者である。

空軍のパイロットとしてベトナム戦争に派兵されたフェン。 戦闘の最中、撃墜され、ジャングルを彷徨いながら必死に生き延びた。
そんな過去を鑑み、医学生が目をつけた場所が、ワイオミング州の生い茂った森林、その中にあった草地だった。 そこで宝箱を発見!

箱の中には金や宝石など、1億円を超える宝が収められていたという。 発見したことを直ぐにフェンに連絡し、写真を送信。 確かに自分が隠した財宝であることをフェンは認めた。 発見から間もない頃に、フェンは医学生を家に招待していた。 宝箱に夢と希望を詰め込んだ老人と、必死に探し当てた若者。 二人の積もる話は尽きなかった。

発見当初は 身の安全を考え、名乗り出るつもりはなかったという医学生。 では なぜ突然、発見者であることを公表したのか?
実は名乗り出なければならない、アンビリバボーな状況に陥ったのだ。 フェンが亡くなった後、1人の女性が「財宝を発見できたのは、私のパソコンをハッキングし、私が解読したヒントを盗んだからに違いない!」として、宝の発見者を相手取り、訴訟を起こしたのだ。
これについて、フェンのお孫さんはこう言っている。
「先を越されたのがよほど悔しかったんでしょう。彼女の妄想ですよ」

しかし、裁判所は訴えを受理。 当時、発見者は公表されていなかったため、裁判所はフェンの家族に発見者の身元を照会、医学生は出頭を命じられる事態になった。
そこで彼は、『被告として名前が漏れてしまうことは往々にしてある、だったら堂々と名乗り出よう』 と考えたのだ。

ところが、名前を公表したことで、様々な脅迫が! そこでやむなく、警備員付きの住居へ引っ越しせざるを得なくなった。
「社会に明るい話題を提供したい」とフェンが始めた宝探しは、10年間にわたって、人間の醜い部分をさらけ出す結果にもなったのだ。

その後、証拠不十分で裁判自体は開かれることなく終わったが…最後に一つ疑問が残る。 医学生は、宝箱を見つけた場所を最後まで誰にも明かすことはなかったのだが、それはいったいなぜなのか? 全てを話せば、発見者として疑われずに済むのというのに。
財宝を発見した直後 彼はこう語っている。
「もし場所を明かせば、フェンが死に場所に選んだ大切な場所にファンが押し寄せ、荒らされてしまう。それはどうしても避けたかったんです」
宝探しをした2年間、常にフェンのことを考えて過ごしたため、医学生にとってフェンは特別な存在になっていた。
「誰かが見つけられるように財宝の詰まった宝箱を荒野に置いておくというのは本当に寛大なことです。宝物を発見したのは 私一人ですが世界中の多くの人が希望を持つことが出来た。フェンが人々に与えた宝物ではないでしょうか」

フェンのお孫さんはこう話してくれた。
「祖父は自分の思いを分かってくれて、本当に嬉しかったと言っていましたよ。亡くなる直前も満足そうでした」