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事件簿NO.3 男を魅了し続ける「平成の毒婦」

今から16年前、多くの男性を魅了したのち次々と殺害していった女性が世間を騒然とさせた。 さらに驚くべきことに、逮捕後もその女性は獄中にいるにも関わらず、多くの男を虜にしていた。
彼女の一連の犯行が明るみに出たきっかけは、睡眠薬で眠らせた交際相手の男性を車の中で練炭による自殺に見せかけ、一酸化炭素中毒で殺害するという事件だった。 捜査の中でその女性には複数の交際相手がいた事が分かったのだが、そのうちの2人が同年の1月と5月に不審な死を遂げていたことが判明。 その死因も…練炭による一酸化炭素中毒。

さらに、この3人の男性は亡くなる前にそれぞれ、およそ190万円、470万円、1800万円という大金をその女性に渡していた事も明らかに。
そして今から16年前、その女性を逮捕した。

容疑者の女性は、一体どのように被害者に近付き、金銭を搾取していったのか?
男性たちと出会った場所は…婚活サイト
彼女は30歳前半という年齢は偽らず、音楽を学ぶ大学院生であると嘘をつき、相手を募集。 そして、アプローチしてきた男性たちに「卒業したら、結婚してあなたに尽くします」この決まり文句を使い、高い学費の援助を願い出るなどし、金銭を振り込ませていた。

ちなみにこの女性は、高級車を乗り回し、高級タワーマンションに住み、ブランドバッグなどを頻繁に購入していたことから、男性から巻き上げた金をこれらに充てていたと言われている。
だが、男性たちはなぜ、いとも簡単にお金を振り込んでしまったのか? 我々は、この事件のほぼ全ての裁判を傍聴し、事件について調べていた作家の北原さんに、その女性の人物像を伺った。
北原「男性に対して優しくて、ボロボロの財布を持っていても、『倹約家ですね』と褒めるなど、とにかく肯定するんですよね。なので、寂しいとか自己肯定感が低い男性には、とても刺さったのだと思います。(話の中に)男性が好きな音楽とか料理とか散りばめて、夢を見させてくれるような話をたくさんする女性だったと思います」

そんな彼女は、結婚をごまかすのが段々と難しくなっていくと…男性を睡眠薬で眠らせ、練炭自殺に見せかけ、次々と殺害。 さらに、殺害された3人以外にも、複数の男性に結婚詐欺を働き、多額の金を手にしていたことが判明。
その女性の名は…木嶋佳苗、当時34歳。
木嶋は取調べで、ほぼ全ての容疑を否認したものの、それぞれの被害者と亡くなる直前まで共に行動していたこと、全ての事件の直前に木嶋が練炭を購入していた事などが裏付けられ、詐欺や殺人など、10件の容疑で起訴される。

そして、今から8年前、最高裁で死刑が確定した。
木嶋は最後まで否認したため、なぜ、そこまで金に執着していたのかは不明のままだが、男性から搾取した金銭で、高級マンションに転居していたことなどが判明。 裁判で贅沢な暮らしを維持するための犯行と認められた。

男性たちを騙し、陥れてきたことで、世間から『平成の毒婦』と呼ばれた木嶋。
そんな彼女、驚くべきことに裁判が始まった後も多くの人間を魅了し続けていたのだ!
北原「裁判が進むにつれて、色んな報道が出て『この人どういう人なんだろう』と思った同世代の女性たちが傍聴に集まるようになった。その人たちのことを『佳苗ガールズ』と名付けた」
「媚びる演技はしても実際は男性に媚びていない」「堂々としている」という理由で木嶋に憧れる女性たちが続出。
さらに…
北原(裁判中に木嶋の)服装が毎日変わるんですけど、普通、被告はスリッパを履くんですけど、彼女は可愛いサンダルを履いていたりとか、足を出していたりとか、服装や話し言葉や彼女の目線など色んなことに皆が振り回される劇場型の法廷でした」

興味本位から傍聴していた多くの男性たちも、そんな木嶋の仕草や声などに魅了されたのだという。
その結果、今から10年前、最高裁に上告中、なんと彼女は支援者と獄中結婚したのだ。 だが、わずか1年半で離婚。
その直後、今度は逮捕前からの知人の男性と2度目の獄中結婚。 だが、またしても離婚。

そして、今から7年前、なんと3度目の獄中結婚。 しかも、その相手は…木嶋を担当していた、某有名雑誌のデスク。
無論、刑務所の中では面会中、刑務官が付き添うため、2人きりになることなど出来ない。 もちろん、触れ合う事もできない。 それでも2人は面会や手紙のやり取りを通し、木嶋いわく『ディープな関係』となり、入籍したのだという。

3人目の夫は、以前、雑誌の取材に応じ、こう語っている。
「一度も社会で会ったことがないですし、肌に触れたこともないわけです。言葉のキャッチボールが楽しかったんです。彼女との関係を続けたいという思いがあって、それが募っていったことは事実です。常に気になる存在になっていきました」
逮捕後も支援者が後をたたないという、魔性の女・木嶋佳苗死刑囚。 その魅力が、事件の大きな要因だったのかもしれない。