オンエア

事件簿NO.2 男の心を操る「死」のホステス

一昨年の1月14日。 一人の女性死刑囚が拘置所内で死亡した。 これにより、かつての犯行内容が再び注目されることになった。
事件が発覚したのは、今から16年前の4月。 鳥取県北栄町の日本海沖合で、トラック運転手だった47歳の男性の水死体が発見された。
さらに、その半年後の10月。 鳥取市内の河川にて、電器店を経営する57歳の男性の遺体が発見される。

別々の場所で亡くなった2人の男性。 だが、彼らには2つの共通点があった。
種類は違うものの、体内から睡眠導入剤が検出されたこと。 そして、ある女性との金銭トラブル。

警察は詐欺容疑でその女性を逮捕する。
すると、捜査の結果…2件目の被害者の遺体から検出された睡眠導入剤をこの女性が所持していたこと。 さらに、被害者の男性2人は、この女性に多額の金銭を貸しており、亡くなる直前、返金を催促するため、会いに行っていたことなどが判明。
これらにより警察は、この女性が男性2人に睡眠導入剤を飲ませ、殺害したと判断。 2件の殺人容疑で逮捕した。

そして捜査の中で、さらなる疑惑が浮かび上がる。 実は、2人の男性だけではなく、他にも4人の男性を殺害した可能性が出てきたのだ。
最初の疑惑は、新聞記者の男性の死。 2人の男性が亡くなる5年前、列車にはねられ死亡、自殺として処理されていたが、彼は妻子がいるにも関わらず、死の直前まで容疑者の女性と交際し、同棲までしていたのだ。

次の疑惑は、警備員の男性の死。
2人の男性が亡くなる2年前、海で溺死。 事故として処理されていたが…亡くなった、まさにその時、一緒にいたのが容疑者の女性であった。 なお、この男性は泳ぎが苦手だったという。

3つ目は、鳥取県警の刑事の男性の死。
2人の男性が亡くなる1年前、山中で首を吊った状態で発見され、自殺として処理されたが…彼もまた、妻子がいながら、容疑者の女性と交際していた。

そして4つ目は、無職の男性の死。
電器店経営の男性が亡くなった数日後、突然体調不良を訴え、病院に救急搬送されたが死亡。 遺体は司法解剖され、体内から睡眠導入剤が検出されたが、病死として処理された。 なお、この男性が住んでいた家は、容疑者の自宅の目の前であった。

この6人は全員、その女性に多額の金銭を貢いでいたと言われており…6人は、2004年から2009年のわずか6年の間に亡くなっている。 1人目と2人目の間は3年空いているが、最後の2人に至っては、同じ月である。

しかし、この女性はどのように次々と貢がせていったのか?
女性の職業は、スナックのホステス。 亡くなった6人全員が、彼女の店に通い詰めていた。
常連客によると、女性は男を立てるのが上手く、一緒にいて居心地が良かったという。 そして、ターゲットにした男性には、プレゼントやラブレターを送る。 さらに、弁当を職場まで届けることもあったという。

それだけではなく、この女性は過去に2度の結婚と離婚を繰り返し、5人の子供を育てていたのだが…子供たちに男性たちを「パパ」と呼ばせたり、手紙を書かせたりするなど、ターゲットを落とすためには手段を選ばなかったと言われている。
そして、好意を抱かせると、妊娠をしたなどの嘘をつき、金銭を吸い尽くしていったのだという。

鳥取県で発生した連続不審死事件。 その容疑者として逮捕されたのは…上田美由紀、当時35歳。
起訴した2件の殺人以外の不審死は、死亡時には事件性はないと判断され捜査は行われず…また、すでに遺体もないため、証拠不十分として罪には問われなかった。

立件できた2人の男性の死に関して、上田は、合計およそ300万円を借り、返金の催促をされたため、殺害に至ったとみられていたが、彼女は一貫して容疑を否認。 しかし、裁判では…「強固な殺意に基づく計画的で冷酷な犯行。刑事責任は極めて重い」として、今から8年前、死刑判決が確定した。
なお、ホステスの収入だけでは生活が苦しかったため、男性たちから金銭を騙し取っていたのでは…と見られている。
そして、今から2年前の2023年1月。 上田は、拘置所内で食事を喉に詰まらせ、窒息死。 死刑執行を迎えぬまま、この世を去った。