オンエア
今から5年前。
関東地方のとある川で、女性の他殺体が発見された。
数日後、犯人たちは逮捕される。
だが…その中の一人の男は犯人にも関わらず、逮捕された事によってこの事件に隠されていた衝撃の真実を知ることになる。
昔では考えられなかった、まさに、現代を象徴するような驚愕の事件、その全貌に迫る。
近藤直樹(仮名)当時34歳。
彼は離婚したばかりで、新たな女性との出会いを求めていた。
そして…マッチングアプリを通じ、松本沙織(仮名)という、当時30歳の女性と出会った。
しかし、互いに恋愛の対象になることはなく、スマホゲームを一緒に楽しむ、友達としての付き合いが始まった。
そんなある日、直樹は沙織にミサキという女性を紹介してもらった。
写真を一目見て、ミサキを気に入った直樹は、メッセージのやり取りで交流を深めていった。
すると…ミサキからも、直樹に好意を寄せるような言葉が。
離婚した直後で、新たな女性との生活を求めていた直樹は、どんどんミサキに惹かれていった。
すると…ミサキからストカーまがいの嫌がらせを受けて困っていると相談された。
しかも、その相手は…沙織の元カレだという。
直樹と沙織は頻繁に会っていたため、その際に話を聞くことに。
実は、沙織は当時付き合っていた武史の行動に苦しめられていた。
ミサキは間に入って、武史に注意してくれたという。
沙織は武史と別れることになったが、今度はミサキが武史から嫌がらせを受けるようになったというのだ。
直樹は沙織の元カレ、武史に怒りを募らせていた。
そんな、ある日…突如、ミサキの父からメッセージが。
「俺は娘をここまで追い込んだアイツを許さない。警察なんて当てにならない。娘のことを愛しているなら、君の本気を見せて欲しい」
過激なメッセージの内容にミサキの父親がどんな人が聞くと、なんと裏社会に関わっている人物だという。
それから数日後、ミサキの父親から再びメッセージが届いた。
ミサキの父曰く、武史の嫌がらせは、さらにエスカレート。
恐怖を感じたミサキは家に閉じこもるようになり、精神的にどんどん追い詰められているという。
そして、ミサキの父からのメッセージにはこんなことが書かれていた。
「協力してくれたら、仕事も住む場所も保証してやるし、もちろん、娘との結婚も認めてやる。だから娘を守るために、アイツを消してくれ」
直樹は、ミサキを守りたい気持ちは強かったが、殺人を犯す気には到底なれなかった。
それから数日後のことだった。
ミサキの父親は、別の提案をしてきた。
ミサキの父が立てた計画…それはまず、自殺志願者を殺害すること。
その遺体を武史の自宅まで運び、武史に気付かれないよう遺棄。
そして、武史の家に火を付け、警察に遺体を発見させる事で、武史が殺害したと疑わせ逮捕させるというものであった。
それでも計画を断っていた直樹であったが、毎日のように届く、ミサキの父からのメッセージにより…罪を犯していいはずがないという常識とミサキを救いたいという気持ちとの間で揺れ動いていく。
それでも、思い留まっていたが…追い込むようなミサキの父からのメッセージが、直樹にストレスやプレッシャーを与えていく。
さらに、ミサキの父が自分にも危害を加えてくるのではないかという恐怖心も入り混じる。
そして、次第に理性を失っていき…直樹は犯行を決意。
ずっと責任を感じていたという沙織も殺害計画に加わり、ついに実行に移されていく。
まず沙織は、自殺志願者を装い…一緒に自殺してくれる人をSNSで募集。 それに反応したのが…数年前から精神的に不安定な状態にあった、自殺願望のある女性だった。 彼女は、直樹と沙織も自殺志願者だと思い、この場所へやって来た。 しかし二人は、この日、この女性を殺害する計画であった。
犯行に使用する道具などは用意していたが、どこでどのように殺害するかなどは、ミサキの父から逐一 指示が来ることになっていた。 殺害を実行するのは、直樹。 ミサキの父親との連絡係が沙織と、役割だけは決め…ミサキの父の指示により、まずは数十キロ離れたとある山奥の駐車場に移動。 到着した頃には、日付が変わっていた。
ミサキ父「ターゲットを車の外に誘い出し、タイミングを見てバットで殴り殺せ」
女性をバットで殴ったものの、殺すことはできなかった。
そこで、直樹と沙織は自殺志願者の女性を車に押し込み…近くにある橋に移動。
そして…橋の上から落とし、殺害した。
元々の計画は、自殺志願者の遺体を武史の自宅に遺棄し、家に火をつけることで警察に遺体を発見させる、というものであった。
しかし、女性を落とした場所は、高さ30メートルほどもある谷底。
そこまで行き、遺体を回収する事はほぼ不可能。
ミサキの父の新たな指示は、自殺志願女性の身分証やキャッシュカードを武史の家の家に持っていき、彼の家に火をつけるというもの。
焼けた家から女性の身分証などが見つかれば、武史に罪をきせることができるということだった。
そして翌日、二人は武史の家にへ移動した。
直樹はミサキの父親の指示のもと、武史の家に忍び込むと…ガソリンを撒き、放火を試みる。
そして、火がついたと思ったその時…バイクが近付く音が聞こえる。
そのため、火が家にまで燃え移ったかを確認せず、急いで逃走。
なお、この時、武史は不在。
火もあっという間に消えてしまっており、被害はなかった。
その後、直樹と沙織は別の県へと逃亡した。
その3日後…自殺志願女性の遺体は、釣り人によって発見された。
そして…遺体発見の翌日、直樹と沙織は警察官から職務質問を受けた。
その際、直樹は自殺志願女性の身分証やキャッシュカードを所持していた。
そう、直樹は武史の自宅に火を放とうとした際、バイクの音に驚き、武史の自宅に置くのを忘れていたのだ。
これにより、逃げ切れないと悟った直樹は犯行を自供。
2人は逮捕されたのだった。
こうして事件の全貌が明らかとなるのだが…実は、まだ恐るべき真相が隠されていた…!
逮捕後、直樹は自殺志願女性を殺害したことは認めたものの、ミサキとミサキの父親については、その存在を明かさなかった。
それは、ミサキを守りたいという愛情からだったという。
それ故、自分の犯行動機に関しても黙秘を貫いた。
一方、沙織も取り調べを受けたが「自分は何もやっていない」と基本的には一切を否認した。
だが…この事件の首謀者は沙織だったのだ!
実は、直樹と出会う2ヶ月ほど前、沙織は違う男性とマッチングアプリで出会っていた。
それが…武史だった。
2人は付き合ってすぐに同棲生活をスタート。
しかし、1カ月が過ぎた頃、2人の仲は険悪になっていた。
その理由は…沙織が武史のクレジットカードを勝手に利用していたため。
それをきっかけに2人は同棲を解消。
沙織は家を追い出されてしまったのだが…強引に同棲を解消されたことに納得がいかず、武史に対して強い不満と怒りを感じていた。
そう、武史への復讐を望んでいたのは、彼に対し歪んだ感情を抱いた沙織だったのだ。
直樹が恋をしたミサキは、沙織が作り上げた架空の人物だったのだ! 沙織はネットで見つけた女性の写真を直樹に送り、複数のスマホを使って、ミサキ、ミサキの父親という架空の人物になりすましていた。
取調べの中で全てが沙織の計画だと知った直樹は、犯行動機など含め、全面自供。 その中で武史の家に放火しようとし、罪をなすりつけるつもりだったことも明かした。
裁判でも全てを認めた結果、強盗殺人、現住建造物等放火未遂などの罪で懲役27年が言い渡された。
一方、沙織は一貫して容疑を否認し、無罪を主張。
しかし、複数の人物になりすまし、直樹を利用して自殺志願の女性を殺害したことは明らかだった。
そして、今から2年前、無期懲役が確定した。
直樹は、自身の罪が確定した際、このような言葉を残している。
「なぜ、このよう事件を起こしてしまったのか、反省し考える、大事な27年にしたい。」