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老舗鶏肉店に突如訪れたピンチ
窮地を救ったアイデアとは!?

京都・東山、駅から程近くにある、古川町商店街。 この商店街にある老舗鶏肉専門店「本かしわ・鳥寿」
ともに80歳を超える西井さんご夫妻が営むこの店。 創業当時から丁寧に下処理した新鮮な鶏肉を提供し、地元の人々から愛されてきた。

50年以上に渡って商売を続けてきた二人。 子供も独立し、気がつくとすっかり高齢者になっていた。 そんな夫婦に2年前(2022年)事件が起こる。
30年間使ってきた冷蔵のショーケースが故障してしまったのだ。 すぐに業者を呼び、修理を依頼したのだが…故障は修理では直らないほどひどく、300万する新しい冷蔵庫を買うほかなかった。 子供たちがすでに独立していたこともあり、以前から店は 自分たちの代までと考えていた。
鳥寿55年の歴史は、幕を閉じようとしていた。

そんな二人の前に、一人の人物が現れる。 彼女は古川町商店街のある、白川エリアを活性化させるため、企画や催しを支援する会社で働く、高瀬さん。
高瀬さん「変な言い方ですけれど(2人が)親戚のおっちゃん おばちゃんみたいな感覚もありましたので、やっぱ急に(店を)やらなくなるというのもすごくショックですし、閉店は困ると思ったのが正直なとこです。」

伝統ある古川町商店街とはいえ、50年以上続く店は多くない。 高瀬さんは、鳥寿は商店街にとってなくてはならない店だと力説したのだが…二人も続けたい気持ちはあるものの、どうしたら良いかわからなかった。
そこで、高瀬さんがあるアイデアを思いつく。

高瀬さん「とりあえず、今なんとかという事でその場しのぎのつもりで、その間にいい解決方法が出てきたらいいなと思っているぐらい(の方法)でした。」
ところが、このその場しのぎのアイデアが大当たり! 閉店の危機を乗り越え、さらに現在もケースが故障したまま営業を続けているという。
窮地からの大逆転を果たしたアイデアとは、一体!?

一体、どうなっているのか?
ショーケースを見てみるとそこには、驚きの光景が!!
そこに並んでいたのは、商品ではなく肉の写真に価格が書かれたパネル!
高瀬さんは臨時の措置として商品の写真を撮り、それを引き伸ばして値段を書き込みショーケースに並べたのだ。 正直、うまくいくとは思えなかったのだが…客は初見ではびっくりするものの、事情を知るとみな、いつもと同じよう買っていく。 売上もそれまでと変わらなかった。

しかもこのアイデアは、想定外の効果も生んでいた。
まず、冷蔵ショーケースの電気代がかからなくなったことで、経費が大幅に減少、店の利益が上がった。 さらに注文を受けたあと冷蔵庫から出し、切り分けるため、以前より鮮度の高い鶏肉を提供し、お客さんに喜んでもらえるようになった。

とはいえなぜ、この常識外れとも言えるアイデアは功を奏したのか?
実は、そこには鳥寿ならではの理由があった。
それは西井さんご夫婦が、これまで誠実な仕事ぶりで培ってきた客との信頼関係に他ならない。 この二人がよくない肉を出すはずがない。 そんな安心感があるからこそ、実物を見なくとも、客は商品を買っていくのだ。

高瀬さんのアイデアと2人が築き上げた信頼で、店は最大のピンチを乗り越えただけでなく、見事、大逆転を果たしたのだ。 そして…今でも高瀬さんは鶏肉を買いに、店をよく訪れているという。
高瀬さん「とりあえずの応急処置で考えて作ったのがこれだけ、お役に立っているというてもらえるのが本当に嬉しいです。」
正治さん「生きがいがバーっと出てきて、まだ現役でやり通そうという思いを持っています。」

という事で正解は「実物の代わりに写真をショーケースに並べる」でした。