12月8日 オンエア
穴に落ちたネコを救え! アンビリバボーな救出作戦
 
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東京・世田谷区に住む菅野(かんの)さん一家と飼いネコのサマンサ。 彼らにミステリアスな出来事が起こったのは、およそ9カ月前のことだった。
ネコの鳴き声が聞こえた。 家にはサマンサがいるのだが…寝ている。 気のせいかと思ったが、やはりネコの声が聞こえる。

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菅野さんの家はマンションの2階にある。 ワンフロアに1世帯のみという小さめのマンションだ。 キッチンの壁の向こうにあるのは、階段と小さな踊り場。 しかし、鳴き声は外から聞こえるような音ではなかったという。
鳴き声は壁の中から聞こえる 一体、何が起こっているのか? 恐怖に身を凍らせた。

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その時、夫が帰宅。 壁の中からネコの鳴き声が聞こえることを話した。
実はこの方、お笑い芸人のぽんちゃまさん(本名:菅野総一郎)。
ぽんちゃま「僕自身、ネコはずっと飼っていたので、怖いとか思ったことはないんですけど、まさかプライベートでこんな現象に遭遇するとは、思っても見ませんでした」

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翌日、不動産会社を通じて、マンションのメンテナンスをしている工務店に連絡。 担当者に来てもらうことになった。
工務店の中野さんは、室内の壁を特に確認することもなく、なぜか外に出た! 向かったのは、2階と3階の間の踊り場。

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実際の場所を、ぽんちゃまさんが案内してくれた。
ぽんちゃま「マンションなんかでよくあるガスメーターが格納されている場所なんですけれども、よく見ていただくと右側に30cm×40cmの四角形で、深さ1.5mくらいの穴が空いてまして、そこに工務店の人がカメラを入れて調べてくれたんですよね」

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マンションの踊り場、ガスメーターが格納されている場所に特殊なカメラを入れ中を除いて見たところ…そこには確かにネコがいた。 ガスメーターの格納場所はいびつな空間になっていた。 たまたま扉が開いていたようで、ネコがそのメーターのあるスペースに入り込み、奥にある深さ約1.5mの穴に落ちて出られなくなってしまったと考えられた。 穴の底辺部は閉鎖された空間になっていて、そこがぽんちゃまさん宅のキッチンの壁と接していたのだ。

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現時点ではどうすることもできなかった。 さらに、工務店の中野さんが次に来られるのは明後日になるという。 「とりあえずやれることだけやっておきますので」と言って、工務店の中野さんが持ってきたのは、ごみ置き場で使うカラスよけのゴミネット。 これを穴の下まで垂らして、ネコが自力で這い上がってくれることを期待した。 表の扉も開放し、いつでも出ていけるようにしておいた。

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ネコは、迷い込んでから飲まず食わずのはずだ。 空腹であることに間違いはない。 ぽんちゃまさん夫婦は、まずは水分と食べ物を与えることにした。
皿に水でひたしたウェットフードを載せ、紐でつるす。 そして、それをそっと穴の底に下ろすことに。 翌朝、エサを入れていた皿を引き上げてみると…ネコはエサを食べてくれたようだった。

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だが、ゴミネットを伝って脱出することはできていなかった。 翌日まで工務店の担当者は来られない。 ならば、その前に自分たちで何とかできないかと、夫婦で救出作戦を考えてみた。

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救出作戦その① シーツ
袋状にしたベッドシーツを紐でくくり、真ん中にエサを入れた容器を固定。 それでネコをおびきよせ、シーツの中に入ったところで引き上げようというのである。 苦心して制作すること40分。
しばらく待ってみたが…警戒しているのか、ネコはエサを食べることなく、作戦は失敗に終わった。

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そして翌日、工務店の中野さんが準備してきたのは、塩化ビニルの給水管2本をL字型の部品で連結。 管の中に先端を輪っかにしたワイヤーを通した自作の装置だった。

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救出作戦その② ワイヤー
穴の底は、奥行き80cmほどの空間になっている、ネコはその一番奥に潜んでおり、なかなか動こうとはしなかった。 そこで、給水管をL字型に繋げることで、中を通したワイヤーの先を奥にいるネコのすぐそばまで近づけられるようにした。 さらに中野さんは、先端にカメラを固定した別の給水管も下におろし、その映像をモニターで確認しながらワイヤーを操作、ネコの捕獲を試みるという。

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近づいてくるワイヤーをネコは一瞬気にかけるも…不審に思ったのか、近寄ろうとしない。 だが、試行錯誤を繰り返すこと数十分、ついにワイヤーがネコを捕らえた。 懸命に引っ張るも、ネコは必死に抵抗。 そして…外れた。

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しかし、この作戦で一つ明らかとなったことがあった。 ネコが首輪をしていた。
そう、飼い猫であることが判明したのだ。 ぽんちゃまさんが住んでいるのは、都内の千歳烏山。 自宅周辺で飼われていた猫が逃げ出したと考え、SNSで飼い主探しを始めたのである。

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工務店の中野さんは、集中工事が入っているため、次来られるのは、5日後。 穴の中はコンクリートで囲まれた換気のできない空間。 春先とはいえ、暑い日が続けば、熱が籠り高温になる可能性がある。 時間に猶予はない。 ぽんちゃまさんは仕事の合間を縫い、夫婦で様々な作戦を試すことに…

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救出作戦その③ エコバッグ
次に考案したのは、エサの他に強力なマタタビを入れて、バッグの中までネコをおびき寄せ、引き上げる作戦。 入った瞬間がわかるように、バッグの中に古いスマホをセットした。 スマホの映像をパソコンで見ながら、ネコがエコバッグに入るところが確認できたら、引き上げる。 踊り場で長時間待機するわけにもいかなかったので、2人はリビングでその時を待った。

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すると、次の瞬間!カメラが少し動いた。 慌ててバッグを引き上げる。 だが…失敗。
その後も幾度となくチャレンジ。 実際、カメラが動く様子は度々確認でき、近づいてきた感触はあった。 しかしネコがバッグに入ることはなく…その日は終わった。
ぽんちゃまさん夫婦は考えた。 これまでは、捕まえて引き上げるような仕掛けだったから、ネコも警戒し近寄らなかったのかもしれない。 やはり自分で上に登れるような方法がいいのではないかと。

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救出作戦その④ ハシゴ
新たに試みたのは、ネコが自ら上がってくれることを期待したハシゴ作戦。 空間の構造を考え、ハシゴを折れ曲がるようにした。 だが、そのまま…下に落としてしまい、大失敗!

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あの手この手を試しても、ネコの救出作戦はうまくいかない。 最初に声に気づいてから、1週間。 トイレなど衛生面のことを考えれば、いつ病気になってもおかしくない。

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そして、あのワイヤー作戦の失敗から5日後、再び工務店の中野さんがやってきた。 大家はこの状況を憂慮し、壁の一部を壊してもネコの救出を優先してほしい、修繕にかかる費用は負担するという意向を示してくれた。 2人はとにかく猫が助かること、それだけを考え、大急ぎで壁を破壊するためのスペースを空ける片付けを行った。

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ぽんちゃまさん夫婦が片付けをしている間、工務店の中野さんは、もう一度だけ、ワイヤー作戦を試してみるという。
そして、40分が過ぎた頃…「捕まえました!ネコ、捕まえましたよ!」
工務店の中野さんは、ネコにワイヤーをひっかける作戦に成功、慎重に引き上げようとしていた。 そしてついに…救出に成功!

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3月28日、発見してから1週間が過ぎていた。 家に運び込むと、ネコは興奮して近づく者を威嚇したという。 落ち着いた頃、お風呂に入れるために外に出してみると、体がかなり大きく、飼い猫のサマンサの倍以上あった。
首輪には、飼い主の連絡先が書かれていたので、すぐに連絡してみることに。 だが、電話は繋がらず、ぽんちゃまさん夫婦が飼うことになりそうだった。 そんな気持ちが通じたのか、さっきまで凶暴だったネコが、びっくりするほど人なつっこくなり、夫婦に甘えるようになった。 このまま家族として迎えることができそうだった。
だがこの後、アンビリバボーな事実が判明する。

きっかけとなったのは救出の2日後に届いたメッセージ。 友人の猫ではないかと連絡をくれた人がいた。 引越しの準備をしている時に逃げてしまったという。
すぐに飼い主かもしれない女性に連絡をとり、写真を確認してもらうと…「いま、探している大事な息子のルーくんです」とのこと。 間違いなかった。

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飼い主の大森さんのもとからルー君がいなくなったのは、保護される3週間前のこと。 大森さんによれば、引越しの準備でバタバタしている時にルーくんが逃げ出してしまったのではないかという。
突然いなくなった飼いネコ。 これまで大森さんは、片時もルーくんと離れたことはなく、悲しみに打ちひしがれた。

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それでも必死にルーくんを探した。 彼女は耳が不自由だった。 友人に協力してもらい、近所の人を尋ねたり、チラシを作り動物病院に置いてもらったりした。 しかし、何の情報も得ることができず、ルーくんが自分から戻って来ることもなかった。 結局、ルーくんは見つけられないまま電話も解約、家を引き払う日がやってきた。

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だが、実はここに驚くべき事実がある。
ルーくんが行方不明になった当時、大森さんが住んでいたのは…保護されたぽんちゃまさんの自宅がある、東京世田谷の千歳烏山から直線距離で実に30kmも離れた、千葉県の浦安市だったのである!

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ルーくんが、どのような経路を辿り、この距離を移動したのかは、誰にもわからない。 しかしいなくなってから、ひと月ほど経った今年4月2日。 ついに…ルーくんは、飼い主の大森さんのもとへ戻ることができたのである。

そして今年9月。 ぽんちゃまさんに嬉しい出来事が…大森さんがルーくんを連れ、自宅を訪ねてくれたのだ。 ルーくんとは約半年ぶりの再会。
大森(手話通訳)「ぽんちゃまさんのおかげでルーが今いるってことで、私も嬉しいです。今は安心して生活しています」