9月1日 オンエア
何故!? マサイから届く大量の写真
 
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東京に住む、ある男性の元に怒涛の如く送られてくる、大量の写真! しかも送り主は、何と!ケニアに住む先住民、マサイ! その距離、11000キロ! なぜ、マサイが日本人に大量の写真を送るのか!? その裏にあったのは、ある伝説を作り上げようとした二人の男の国境を超えた友情だった!

今から7年前。 日本で暮らす羽鳥豪は、この日ケニアにいた。 彼の仕事は、世界中の面白いニュースなどを伝えるネットメディア『ロケットニュース24』の編集長兼ライターである。
ケニアの首都ナイロビを出発してから5時間。 辿り着いたのは、アンボセリ地区にある小さな村。 そこに住むのがアフリカ最強部族とも言われるマサイ。

ケニア南部からタンザニア北部一帯の先住民であるマサイは、牛やヤギ等の家畜を育て生活。 村には電気は通っておらず、携帯電話を持っている者もごくわずか。 文明とかけ離れ、原始的な生活を送っている。 そんなマサイの元にやってきた目的は、『最強のマサイを探す』という企画の取材のため。

その時、ガイドを務めてくれたのが、当時28歳のルカ。 この村で一番英語が堪能で、リーダー的存在だった。
実は彼自身、襲いかかってきたライオンを倒した事がある、まさにマサイの戦士! 家族や村人を守るためには、猛獣と戦う事も厭わない。 そんなマサイの戦士の勇敢さに羽鳥は感動!

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こうして無事に取材を終えたが、帰り際、ルカに村唯一の井戸に案内された。 実はこの井戸は壊れてしまって水がくめないため、この村は今、水不足なのだという。 雨が降れば水を溜めておくことは出来るが、そもそもケニアは雨が降ることが少ない。 川や他の村で水を汲もうにも、村から離れていて大量に運べる訳ではなかった。

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ルカは普段から観光客のガイドの仕事をしていたが、客が来るのは月に10組程度。 他の村人も生活費だけで精一杯のため、なかなか井戸を修復出来ないという。 ルカは羽鳥に井戸の修理費を援助してほしいと言うのだ。 すると、羽鳥はルカに「自立しろ!」と喝をいれた。 その時、羽鳥はあることを思いついた。

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それから、数ヶ月後。 羽鳥が編集長を務める『ロケットニュース24』に摩訶不思議な記事がアップされた。
それは、『マサイ通信』第1回 史上初のマサイライター『ルカ』
ルカがいるのは遠く離れたケニア。 もちろん日本語はわからない、一体どうやって日本でライターに?

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実は「カメラを送ってやるからさ、マサイの日常を写真に撮って記事を書いて送ってこい。要は仕事をやるから自分で稼げってことだ。」と言っていた。
羽鳥がこんな事を言った真意は…
「理由付けすれば、諦めてくれるかなって思ったんですね。連絡が来るとは思っていませんでした。これで諦めてくれれば万々歳だと思っていました。」

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ケニアから帰国した羽鳥の元にある日、ルカからメールが届いていた。
「よう、ブラザー。そういえば、カメラはどうなってる? ルカより」
ルカは、わざわざ村から50キロも離れた街まで行き、ネットカフェから、名刺に書かれていたメールアドレスに連絡してきたのだ!

羽鳥は、すぐさまルカにカメラではなく、格安スマホを送った。
携帯の電波は通っているので、撮った写真の送信も、羽鳥とのやり取りも、離れたネットカフェにわざわざ行かずにすむ。 ちゃんと一本あたりの原稿料を決め、書面で業務委託契約も結び、日本初、もしかしたら世界初のマサイのライターが誕生した!

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ルカはスマホで写真を撮りまくり、片っ端から羽鳥に送信! 羽鳥はその中から気になったものを選び、ルカから詳細を聞く。 そして聞いた話を、ルカのキャラクターに合った口調の文章で羽鳥が記事化。 その原稿料がルカに支払われていったのである。
目標は、井戸修復費用の11万円
マサイの平均月収は日本円で1万円程度と言われているが、1本の原稿料はそれよりも安い。 しかもそこから、スマホの通信料や生活費なども補うため、時間が掛かる挑戦だった。

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こうして『マサイ通信』は次々に更新されていった。 すると、全く知らなかった世界に触れられると、日本の読者に大ウケ!
だが、更新されるのは不定期であった。 なぜなら、イマイチ『記事』というものが分かっていないルカは、とりあえず撮影した写真を片っ端から羽鳥に送っていたが…どう記事にすればいいのか悩む事も多く、また羽鳥は編集長でもあり、他の記事も書いていたため、超多忙。

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だがルカにとっては、羽鳥が記事にしてくれないと原稿料が入ってこない。 つまり、「お前が書いてくれないと 井戸が直せないだろぉ〜!!」
そこで彼は、毎日のように羽鳥に連絡を入れる。 それでも返事が来ない時は、羽鳥のSNSを見て、彼の知り合いにかたっぱしからメッセージを送りまくった。 羽鳥もルカの気持ちに応え、出来るだけ月に6本は記事をアップするよう努力。 そして、一本あげるたびに、2人は必ず『井戸を直して伝説を作るぞ』と気合を入れ合ってきた。

また、羽鳥が仕事でケニアへ行った際は、ルカが自宅に招待! さらに、友情の証として手作りブレスレットのプレゼントも! これには、羽鳥も感動し泣きそうになったという。
こうして羽鳥とルカは、超遠距離での共同作業を続けていった。 そして、『マサイ通信』開始から、およそ2年後…なんと99回目の記事で目標金額に到達し、100回目の記事で井戸が修復できた事を報告出来たのだ!

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しかし!二人の挑戦は、ここで終わりではなかった! 羽鳥とルカが初めて会ったあの時…「村の子供達が通う学校も小さくてオンボロだから新しくしてあげたいんだよ。」
実は、ルカの村の学校には250人ほどの生徒が通っていたが、教室が足りていなかった。 そこでルカは、学校もどうにかして欲しいと、羽鳥に要望していたのだ。
教室増築にかかる費用は、井戸修復の3倍に当たる、およそ30万円。 これまで費やした2年より長期的にはなるが、二人はこれをゴールに再設定した。

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しかし、そのわずか1年後…
「『マサイ通信』第171回。学校の再建いよいよ開始!」
井戸の修復よりも短い期間でなぜ二人は目標を達成できたのか?
教室増築を目標に再び伝説への道を歩み始めたその2日後…出版社から『マサイ通信』を書籍化したいという連絡がきたのだ!

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そして、数か月後『マサイ通信』の内容が書籍化された! 書籍化した事で、羽鳥とルカには印税が入ることに。 その額、一人30万円
そう、教室増築に必要な費用とぴったり! さらに、ルカの行動に感銘を受けた地元の有力者たちからの寄付もあり、教室の増築だけにとどまらず、以前より立地の良い場所に校舎を建設し直すことになった。

こうして完成したのが…以前より立派で大きい校舎。 ルカは、校舎の完成をすぐに羽鳥に報告。
すると、興奮気味にこんな返信が…「やったな!うち1つの教室はお前が作ったって事だぞ!」
すると、ルカはこう返信した。 「オレとお前で作ったんだ。」
その後、羽鳥さんが仕事でケニアへ行った際、ルカさんが学校を案内してくれ、二人で感動を分かち合った。 ひょんなきっかけで出会った二人は、破天荒な記事『マサイ通信』を協力して続ける事で、井戸と学校を修復するという伝説を作り上げた。

二人にとって、お互いはどんな存在なのだろうか?
羽鳥さん「戦友ですかね。戦士なので。記事を作るのも戦いだとしたら、一緒に戦った戦友かなって思います。」
ルカさん「ゴーはオレの友人であり、ブラザーであり、そして村みんなの友人だ。」

伝説を達成した後も、『マサイ通信』の連載は続いた。 マサイにもバレンタインという文化はあるということや、村で暮らすかわいいネコの話。 ヤギに栄養補助のため、塩を毎日欠かせずあたえていることや、裕福なマサイの家にあるクリスマスツリーの話など、様々なマサイの日常を紹介していった。
そして、その原稿料で貯めたお金をつかって、ルカさんは村人全員に太陽の力で点灯する
『ソーラーライト』をプレゼント! 電気の通っていない村に灯りがともり、村人はルカ、そして羽鳥や記事の読者に感謝したという。

そして、およそ7年、500回以上にわたり連載、様々な伝説を作り上げていった、羽鳥さんとルカさんの『マサイ通信』は今年の3月最終回を迎えた。 羽鳥さんとルカさんにとって、この7年はどのようなものだったのだろうか?
ルカさん「ゴーと共にライターとして過ごした7年という歳月、その中でアイツはオレの人生だけじゃなく、この村も変えてくれたんだ。オレにとってまるで奇跡のような時間だったよ。」
羽鳥さん「こんなに長く続けられるとは思っていませんでしたし、怒ったりも、喧嘩も、色んな事があったんですけど、本当にいい思い出です。マサイと組んで、こんなに長いこと連載したのって、多分世界中で私しかいないと思うので、いい体験させてもらったなと。ただ、やってる最中はマサイのルカという事を忘れて、一人の人間としてやり取りしてたので、ルカありがとうって思います。」