11月4日 オンエア
犯人は狡猾なサイコパス 未解決事件に隠された真実とは?
 
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今から20年前のある晩。
一人の少年から警察に通報があった。
彼は、母トレイシーと義理の父マイケルと暮らしていた。
犯罪ジャーナリスト ウィリアム・フェルプス氏は、事件についてこう話してくれた。
「少年からの通報内容は、義理の父の出張中、何者かが家に侵入し、母の首を絞めた。そして、母は抵抗の末 男たちの一人を銃で撃ち、もう一人は逃げて行ったと言うものでした。」
「私は、今まで何百件もの殺人事件を見てきましたが、この事件の犯人は、私が見てきた中でも最も狡猾なサイコパスでした。」

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通報を受け、現場に駆けつけた警察は、母トレイシーを発見。 トレイシーは首を強く絞められていたが、一命を取り留めていた。
そして寝室には…強盗犯と思われる遺体があった。

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トレイシーの証言によると…夜7時ごろ、お風呂の準備をしていた時に突然首を絞められ、意識を失った。 息子の叫び声で目を覚ますと、両手を縛られていたという。
眼鏡がなく、周りがよく見えなかったが、息子を守るため、銃が保管してある寝室に向かった。 そこで、追いかけてきた侵入者に髪や足を引っ張られた。 必死で抵抗したトレイシーは、何度も銃を発砲。 それを見た2人目の侵入者は逃げて行ったと言う。
寝室で発見された遺体は…友人・モナの息子、ダスティンのものだった。

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トレイシーとその友人・モナの両家は仲が良く、休日など、共に教会を訪れることもあった。 さらに、トレイシーの夫マイケルの自宅内オフィスでは、モナが働いていた。 事件の一年前から、マイケルは失業し 困っていたダスティンも雇ってあげていた。
トレイシーとモナの両家は、プライベートでも仕事でも密接な関係にあったのだ。

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トレイシーは、ダスティンが自宅で暴力を振るうことがあると、モナから聞いたことがあったという。
早速、捜査官たちは、もう1人の侵入者について周辺住民に徹底的に聞き込みを行ったが、有力な情報は得られなかった。

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そんな中、ダスティンの車からピンクのノートが発見された。 それは、ダスティンの日記だった。
そこにはトレイシーの元夫・ジョンから、息子の両親の殺害を命じられたと書かれていた。 息子の両親…すなわちトレイシーとマイケル夫妻のことだった!
警察は、ノートの存在は警察内部にだけとどめ、元夫のジョンについて捜査を開始。 トレイシーとの関係を調べた。

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さかのぼる事13年、トレーシーとジョンは2年の交際の末、結婚。 息子にも恵まれ、幸せな生活を送っていたのだが…ジョンはやがて暴力を振るうようになり、トレイシーは離婚を決意。
離婚裁判の結果、息子は母トレイシーの元で生活する事に…医師であるジョンは養育費の支払いに応じ、息子との面会は認められた。

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その後、トレーシーはネットで知り合ったマイケルと再婚。
そんなある日…息子から『ジョンに虐待された』と言われたという。 そのうえジョンは『自分が息子を引き取りたい』と裁判を起こしたと言う。 息子の親権が欲しかったジョンがダスティンを雇いトレイシーとマイケルを殺害しようとしたのだろうか?

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だが、いくら調べても、ジョンとダスティンの接点は全く見つからなかった。
さらに事件の後、ジョンは息子の親権を争うのを、あっさりと取りやめていた。 親権のため殺人を犯そうとしたとは考えにくかった。
その後も、元夫ジョンは全く不審な動きを見せず、彼を犯人とする説は完全に行き詰まった。

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そんな中…近隣住民への聞き込みから、次に容疑者として名前が挙がったのは…トレイシーの現在の夫、マイケルだった。
事件の日、彼自身にはアリバイがあったのだが、ダスティンと接点があり、殺害を指示したのではと考えられたのだ。
同じオフィスで働いていた、モナに話を聞くと…マイケルの会社は事件の1年前から経営が上手くいっておらず、夫婦仲が悪くなっていたという。

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捜査官達は、事件への関与を否定するマイケルを嘘発見器にかけた。 これは被験者に様々な質問をして、その反応から供述の真偽を確かめるもので、今回行われた機械の精度は、9割以上だという。
すると…「あなたは家に侵入したもう一人が誰か知っていますか?」という質問の答えがウソだと判定されたのだ!
だが、いくら捜査をしても決定的な証拠は出てこなかった。

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事件から3年後、トレイシーとマイケルは離婚。
それでも捜査に進展はなく、事件は未解決犯罪、コールドケースとして扱われることとなった。

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事件から7年後…未解決事件専門の捜査員・ヴィレタは、トレイシーが襲われた事件の資料に目を通す中で、一枚の写真に目を止めた。 彼は事件現場の写真に違和感を覚えたのだ。
ヴィレタ捜査官は、有力な容疑者である二番目の夫マイケルの元を訪れた。 そして、嘘発見器に引っかかった時のことを聞いた。

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マイケルと話し終えたヴィレタ捜査官は、スミス検事の元を訪れた。 そして、スミス検事にこう話した。
「犯人の目星がつきました。決定的な証拠が見つかり次第、犯人の逮捕を考えています。」
ヴィレタ捜査官がにらんだ犯人とは一体誰なのか? この後、衝撃の展開が訪れる。

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ヴィレタ捜査官がマイケルの話を聞いた時のこと…マイケルはこう言った。
「本当に、2人目の侵入者なんていたんでしょうか?」
さらに…「心のどこかで『2人目の侵入者など存在しないのでは?』と思ってたんじゃないかと、そんな疑念を持っていたから、嘘だと判定されてしまったのだと思います。」

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ヴィレタ捜査官はスミス検事に現場の写真を見せた。
トレイシーは事件後、こう供述している。
「眼鏡がなく、周りがよく見えませんでした。追いかけてきた侵入者に、髪や足を引っ張られました。私、必死で抵抗して 何度も銃を発砲しました。」
だが、現場の写真を見ると、何も壊されていないうえに、特別錯乱もしていないのだ。
ヴィレタ捜査官は、トレイシーがダスティンを呼び出し、殺したと考えた。 しかし、彼女がダスティンを殺害する理由が全くわからなかった。

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こうして、殺人事件として起訴すべく、調査を開始したスミス検事。 その時、ダスティンの母モナに関する資料を発見した。
2001年 事件直後、彼女は事件の日に何が起こったのか真実を知りたいと訴えていた。 ダスティンは人付き合いが苦手だったが、トレイシーたちについては、「僕にも、友達ができたんだ!」と言っていたという。 モナは、彼らとの関係を大切にしていたダスティンが、トレイシーを殺そうとするはずがないと訴えていた。

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スミス検事は、その後も捜査を続けたが、トレイシーがダスティンを呼び出し、故意に殺したという決定的な証拠はどうしても見つからなかった。
そんな中、プライベートで教会を訪れた時のこと…偶然、トレイシーの友人の夫に出会ったのだ。

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そして、スミス検事は、トレイシーの友人であるメアリーの話を聞くことができた。
メアリーは、マイケルが犯人ではないかと疑っていた。 2人は仲が悪かったのだ。
だが、トレイシーは元夫のジョンが犯人だと言って譲らなかったという。

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だが、メアリーは医師でありお金を持っていたジョンがプロではなく、普通の青年に殺害を依頼するなど考えにくいと思っていた。
そして、こう言ったのだ。
「やっぱり、車にあったやつは、何の証拠にもならなかったんですね。ジョンが事件に関わっているはずないですもんね。」

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メアリーは、トレイシーからダスティンのノートのことを聞いていたという。
だが、警察はノートの存在を公開していない。 そのため、トレイシーもノートの存在は知るはずがないのだ…彼女が自分でノートを用意したのでなければ。
ついに、決定的な証拠が見つかった。 さらなる調査で、ノートはトレイシーが購入したものだと判明。 これで全てがひとつに繋がった。

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捜査官達が10年をかけ、たどり着いた事件の真相はこうだ。
2001年 12月13日 事件当日、その日、トレイシーは夫の出張中にダスティンを家に呼び出し、息子が元夫のジョンに連れて行かれそうなので、助けて欲しいとお願い。

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トレイシーは裁判で息子の親権を争っていた。
事件後ジョンがすぐに手を引いたため、当時の捜査で深く調べられる事はなかったのだが、実は裁判で「ジョンが息子を虐待した」と言う証言は嘘だと判明、トレイシーは親権を取られそうになっていた。 夫・マイケルは、このことを知らなかった。

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そして、言われるがまま日記を綴ったダスティン。
その後、トレイシーはダスティンを射殺。
ノートをダスティンの車の中に置いた後、自らの首をストッキングで締め、部屋に閉じ込めていた息子に侵入者がやって来たと嘘の説明をして、通報させたのだ。
ダスティンが生きていれば、ノートをトレイシーに書かせられたということがバレる可能性がある。 ダスティンはトレイシーの都合だけで殺されたのだ。

事件から10年後の2011年、トレイシーは逮捕。
トレイシーが公表していないノートの存在を知っていた事が決定打となり、第一級殺人で仮釈放なしの終身刑が言い渡された。

犯罪ジャーナリスト ウィリアム・フェルプス氏は事件についてこう話す。
「この事件は、膨大な情報の中から、何が真実かを見分けることが出来なければ、解決には至りませんでした。私たちも、情報が溢れる現代社会において、何が真実で何が嘘なのか、よく考え吟味しなければならないのです。」