7月4日 オンエア
全米震撼!恐怖の監禁事件
 
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アメリカ・コネチカット州 ハートフォード。 ニューヨークからもほど近く、高級住宅街として知られるこの街で、のちに全米を震撼させる、信じられない事件が起こったのは…今から10年前の七夕の日だった。

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彼女の名前はナンシータイラー、職業は弁護士。 彼女はこの日、裁判所に向かおうとしていた。
だが…駐車場に行ったナンシーは、友人に電話をかけ、すぐに警察に連絡をしてほしいと頼んだ。 「今、彼が目の前にいる。それと彼、銃を持っている。」と言って…。

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結局この日、彼女が裁判所へ向かうことはなかった。 電話を受けていた友人は、すぐさま警察に通報。
ナンシーが言っていた「彼」とは…リチャード・シェンクマン。 その正体はなんと、ナンシーの元夫だという。

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遡ること、さらに16年前…最初は運命の人だと思っていた。 実はナンシーはこの数年前に離婚を経験。 2人の子供を抱えながら、母親と弁護士という多忙な日々を送る中、知人の紹介で出会ったのが、シェンクマンだった。 シェンクマンは当時44歳。 イベントやPRを行う企業の重役を務める、笑顔が印象的な男性だった。

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シェンクマンにも離婚経験があり、2人はすぐに意気投合。 出会ってから1年後、ナンシーはシェンクマンと再婚すると、コネチカット州ハートフォード郊外の高級住宅街にあったシェンクマンの自宅で、結婚生活が始まった。 そして、幸せの絶頂にいた2人は 家族で夏を過ごすため、郊外の海沿いに豪華な別荘も購入。 さらに数年後、ナンシーは、弁護士の仕事を休んで、シェンクマンの会社を手伝うようにもなった。

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2人は、周囲の誰もが羨むような完璧な夫婦に見えた。 だが…本当に幸せだったのは、最初の数年だけだった。 結婚後、シェンクマンは徐々にナンシーを支配するような言動を取り始めたという。 さらに…癇癪(かんしゃく)の矛先はナンシーだけでなく、子供達にも向かって行った。 家族は少しでもシェンクマンの逆鱗に触れないように、まるで薄い氷の上を歩くような状態で生活するようになっていった。

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もちろん ナンシーも離婚は何度も考えた。 だが、小さな子供達のことを思うと、どうしても踏み切れなかった。 シェンクマンは支配的ではあるが、家族に愛情がないわけではなかった。 ナンシーは、『自分さえ我慢すれば上手くいく、それが子供達にとって最良の手段』と言い聞かせながら、日々 耐え続けた。

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だが…結婚から12年、この日もいつものように、癇癪(かんしゃく)を起こしていたシェンクマン。 この日、高校生になっていた息子が初めて父に反抗。 その姿を見たナンシーは、これまで自分が信じ込もうとしていたものが間違いだったことにようやく気付いたという。

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そして、結婚12年目の2005年、ナンシーは子供達と共にシェンクマンの家を出て、同じ州内にある姉の家に引っ越すと、翌年には裁判所にシェンクマンとの離婚を申請。 長年の間 良かれと思い、従い続けていた横暴な夫との完全な決別を選択したのだ。 だが、シェンクマンはナンシーの離婚申請を拒否。 泥沼の離婚調停に発展していった。

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さらに、シェンクマンはナンシーに対し、頻繁に脅迫メールや盗撮した写真を送りつけてきた。 しかし、相手にしてしまったらそれこそシェンクマンの思うツボ。 ナンシーは恐怖を押し殺し、毅然とした態度で無視を続けると、裁判所にメールや写真を証拠として提出。 その結果、接近禁止命令を勝ち取ることに成功した。

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だが、安心したのも束の間。 たがの外れた夫の暴走はとどまることを知らず…別居から2年後、離婚調停の過程で所有権がナンシーに移っていた海沿いの別荘が突然 火事になったというのだ! しかも その時、誰もいないはず家の中から、なぜかシェンクマンが救出されたというのだ。 数日後、シェンクマンは放火の罪で逮捕。

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その後、保釈はされたものの、この一件が大きく影響し、裁判はナンシーの完全勝利で決着。 離婚は成立し、残すは資産の分配に関する手続きのみとなり、2009年7月、遂に最後の法廷出廷日がやってきた。

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ナンシーはこの日の裁判に備え、早朝から出社。 仕事をキリのいいところまで片付け、裁判所に向かうため、自分の車を停めている駐車場へやって来た。 すると…そこに停まっていたのは、シェンクマンの車だった! 恐怖を感じたナンシーは、友人に連絡。 すると、シェンクマンが現れた。

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そして、シェンクマンはナンシーを銃で脅迫し、車を運転させた。 この時、シェンクマンがナンシーに向かわせた先、そこは…4年前まで 家族で暮らしていた、かつての自宅だった。 だが、家の中はかつて自分の住んでいた場所とは大きく変わっていた。 なぜかリビングには大量のモニターがあり、さらに よく見ると部屋の床には無数のケーブルが散乱し、壁にはワイヤーが張り巡らされていた。

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午前11時、その目的もわからないまま監禁されてから およそ1時間後、ナンシーの友人から通報を受けた警察が現場に到着した。 実は、奪い取られたナンシーの携帯電話は、電源が切れておらず、GPS機能は生きていたのだ。 だがなぜか、シェンクマンは慌てることなく、まるでこの時を待っていたかのように自ら警察に電話をかけ始めた。 そして、「今すぐうちの前にいる警察を撤退させろ」と要求。 さらに、外に繋がる全ての出入り口に爆弾をセット、8ヶ月をかけ、自宅を要塞化したと言うのだ。

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まるでゲームを楽しむかのようなシェンクマンの言動に警察も困惑。 交渉人を立て、なんとかシェンクマンの目的を聞き出そうとした。 すると…シェンクマンが警察に要求したのは、ナンシーと再婚するための手続きだった。 午後2時、警察は爆弾があるという情報を受け、家の周囲に特殊部隊SWATを配備。 ナンシー救出の方法を探っていた。

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だがそのまま、膠着状態が続いた。 そして 夜8時過ぎ、ナンシーは地下室へ連れていかれると、手錠で壁に固定された。 いよいよ最後の時が訪れてしまった、そう思ったナンシーは、もはや子供達に祈りを捧げることしかできなかった。 ところが、警察の様子を見に行くため、シェンクマンが 地下室から一旦離れた。
だが、絶望的な状況に変わりはなかった。 手首には壁と固定された手錠…さらに警察もこの10時間大きな動きを見せることはなく、すぐに救出される気配はない。

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だが…ただ待っていても、いずれ殺されてしまうことは明白、ナンシーはこの部屋から脱出するため、固定された手錠をボルトごと外し始めた。 だがもちろん、女性の力で簡単に外れるものではない。 それでも彼女は諦めず、必死でボルトを回そうと力を込め続けた。 すると ついに、壁に固定されていたボルトが回った! そして…数分後、ナンシーは固定されたボルトを外すことに成功。

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シェンクマンはまだ帰ってこない。 だが、ドアノブを握った瞬間、数時間前にシェンクマンが警察に言った言葉が脳裏をよぎった。 そう、シェンクマンはこの日警察の侵入を防ぐため、家と外をつなぐ扉や窓に爆弾を仕掛けていると宣言していた。 爆発すれば、扉を開けた瞬間自分の人生は終了する。 それでも…ナンシーは逃げることを決意し、ドアを開けた。

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そして、ナンシーは外に出て来た! そう、爆弾を仕掛けたというのはただの脅しで、実際には仕掛けられていなかったのだ。 その後、彼女はタンカーに乗せられ、病院へと搬送された。

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人質を失ったシェンクマンは、自暴自棄になり、警察の突入を前に自ら家に火を放ったが、やがて熱さに耐えられなくなったのか、家の外に飛び出して来たところを警察に逮捕された。 こうして、犯罪史上類を見ない、奇妙な誘拐立てこもり事件は幕を閉じた。

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3年間にも及ぶ元妻への異常な執着…シェンクマンは、その後の裁判で、獄中から殺し屋を雇いナンシーを殺害すると宣言したのだ。
結局、シェンクマンには誘拐監禁と放火の罪で、懲役70年の判決が下った。

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ナンシーは事件後、家庭内暴力の被害者ネットワークに従事し、虐待に苦しむ女性のため、自分の体験を役立てようとしている。
最後にナンシーさんは、こう話してくれた。
「私の場合、もっと早い段階で適切な対処をしていれば、彼にあんな犯罪を起こさせずにすんだかもしれないのです。関わる全ての人のためにも、一人で抱え込まないこと、それが一番大切です。」