6月27日 オンエア
メジャーリーガーが驚愕 右腕を失った野球少年
 
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今から2年前、アメリカのSNSに一人の野球少年の動画がアップされた。 すると、それを目にした伝説のメジャーリーガーたちが一斉にその少年を賞賛した。 少年の名はルーク・テリー、ポジションはキャッチャー。

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だが、彼には右腕がない。 左手にはキャッチャーミットをはめているため、捕ってからすぐに投げることは出来ない。 にもかかわらず…彼は驚くべき方法で盗塁を阻止するのだ。 伝説のメジャーリーガーが驚愕したルークのプレー、不可能を可能にした、一人の野球少年の不屈の魂とは?

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今から17年前、アメリカ・テネシー州で生まれたルーク・テリーは、1歳7ヶ月の時、悲劇に見舞われる。 感染症にかかり、右腕が壊死。 手術により肩から先、右腕全てを切断することを余儀なくされた。

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ルークが4歳の時、野球をやりたいと言い出した。 彼の家族は、祖父と父が野球を、母は若い頃ソフトボールをプレーしていた野球一家だった。 だが、ボールをキャッチできない。 やはり無理なのか…そう思った時、「ルーク、決して諦めちゃだめ。諦めなければ、できないことはないのよ。わかった?」と、母に励まされた。

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母・デイナさんは、当時のことをこう話してくれた。
「ルークが野球をやりたいと言った時、私は彼に右腕がないという事を考えないと決めました。以来、自分のしたいことをしなさいと言い続けたんです。」

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こうして、母の支えを得たルークは、小学生になると当然のように野球チームに入った。 ルークは、キャッチがとてもうまく肩も強かったため、入部した頃はセンターやライトといった外野のポジションをやっていた。 しかし、ルークの実力はそれだけにとどまらなかった。 腕の力もあり器用だった彼は、バッティングでもセンスを発揮。 打者でも戦力として認められ、試合への出場も増えていった。

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そんなある日、監督にやってみたいポジションを聞かれると…「キャッチャーがやりたいです」と答えた。 しかしこの時、監督は…捕手はチームの要であり、ボールを触る回数も多いため、ルークには負担が大き過ぎると思ったという。 ところが、ルークはキャッチングのみならず、チームの要としての役割を難なくこなした。 だが、それも小学生の間だけ、中学に進学すればキャッチャーは出来ない、誰もがそう思っていた。

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なぜなら…小学生の試合では盗塁は禁止されているが、中学に進めば盗塁がある。 通常、キャッチャーは、ミットでキャッチしたボールをもう片方の手に持ち替え、素早く送球、盗塁を阻止する。 しかし、右腕を失ったルークの場合、ボールをキャッチし、そこから素早く送球するのは至難の業。 そのため、盗塁がある中学校では、キャッチャーは不可能だと思われた。

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だが…中学生になってもルークは、キャッチャーを続けていた。 そして、驚くべき方法で盗塁を阻止していた!
この時 撮影され、SNSにアップされた映像を偶然目にし、釘付けになった人物がいた。 ボルチモア・オリオールズの現役メジャーリーガー、ケイレブ・ジョセフ。 ジョセフは、自分も同じキャッチャーだからこそ、それがいかに難しいことなのか理解できた。

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実はルークは、10歳の時にこの送球方法を思いついたのだが、実際にやってみると非常に難度が高く、全く成功しなかった。 それでも諦めることなく練習を重ね、4年の時を経て、遂に完成させたのである。

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なんと、ルークはキャッチした球を一度、放り上げ、その間にミットを外して、落ちて来た球を掴み、投げているのだ! その非凡なアイディアと決して諦めない心で、人々を驚かせる奇跡を起こしたのである。

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そして翌年6月、中学生によるテネシー州マーシャル郡の地区大会が行われた。 キャッチャーとしてレギュラーを獲得していたルークは、チームの3番打者として出場。 この年の公式試合の打率は、3割8分5厘。 それだけではなかった…キャッチャーとしても、あの神業プレーで、何度も盗塁を防ぐことに成功。 ルークの打撃、守備の両面での活躍で、チームは勝ち続け、ついに地区優勝を果たしたのだ!

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地区優勝から間もなく、その評判を聞きつけた全米3大ネットワークの一つNBCが、ルークを特集した番組を放送した。 さらに、その年ルークは、マーシャル郡にある中学・高校の中からわずか12名しか選ばれないオールスターメンバーに中学生ながら選出され、テネシー州の大会に出場した。 しかもこの大会で、ルークは5割2部6厘という打率を叩き出し、首位打者を獲得したのである!

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さらにその翌年も、郡のオールスターメンバーに選出され、ついに州大会の決勝トーナメント出場をかけた最終戦を迎えた。 ルークはこの試合でも、2本のヒットを打つなど、大活躍。 チームはリードしていたが、最終回ツーアウト、ランナー1塁、相手チームの攻撃。 その時、相手チームが盗塁を仕掛けてきたが…見事盗塁を阻止! 州大会決勝トーナメント進出を決めた! さらに決勝トーナメントでも勢いは止まらず、ついにチームはテネシー州の頂点に立った。

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そんな彼に、思いもよらない出来事が…なんと、メジャーリーグの公式戦のグラウンドにルークの姿があった。 実は、あのジョセフが、ルークをオリオールズの公式戦の始球式に招待したのだ。 普通、始球式はゲストがピッチャーを努める。 しかし、ルークはピッチャーではなく、キャッチャーとして晴れ舞台にあがったのである。 それは球団側の…リスペクトの証だった。 チーム練習にも参加したルークは、4年かけて完成したあの技を披露した。

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ルークは9月から高校3年生、もちろん野球を続けている。
最後にルークに将来の夢を聞いてみた。
「まず大学に行って、プレーしたい。そこでキャリアを積んで、いつかはメジャーリーグでプレーしたいと思っています。」