6月20日 オンエア
実録!神と呼ばれた鑑識官 衝撃の指紋ミステリー
 
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2つとして同じものはない。 そして、一生変わらないと言われているのが…指紋である。 その指紋を武器に、様々な重大事件の犯人を特定してきた男がいる。 塚本宇兵(つかもと うへい)、警視庁鑑識課指紋係で30年に渡って活躍。 『指紋の神様』と呼ばれた、伝説の捜査官である。
現場に残された、動かぬ証拠である指紋を頼りに、確実に犯人を追い詰めていくのだが、塚本が本当に優れていたのは…類まれなる洞察力。 塚本の活躍は、過去に番組でも取り上げた。 しかし 今回は、神と呼ばれた男が遭遇したレアケース。 指紋だけでは解き明かせなかった、衝撃のミステリー事件を取り上げる。

『指紋ミステリー/File.I 無数の指紋から犯人を捜せ』

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1989年(平成元年)夏、都心のホテルで殺人事件が発生した。 殺害されたのは、30歳前後の女性、タオルで首を絞められて亡くなっていた。 従業員の証言によれば…昨夜は男性と一緒に宿泊していたが、チェックアウトの時刻を過ぎても退出しないため、部屋の様子を確認しに行ったところ、遺体を発見したという。 その時には、すでに一緒にいた男性の姿はなかった。

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大衆向けのホテルだったこともあり、宿泊名簿や防犯カメラなどはなく…女性の所持品を調べても、逃げた男性の手がかりとなるようなものはなかった。 そのため、頼れるものは『指紋』だけだった。 ところが、現場は不特定多数の人間が出入りするホテル…部屋の隅々から、指紋が100個以上も検出された。 これを1つずつ照合するとなると、かなりの時間を要する。

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そこで塚本は、この部屋の掃除を担当した清掃係に話を聞くことにした。 事件があった部屋は、その日、シーツの入れ替えをしたほか、水回りを中心に洗面台などを掃除したという。 そこで塚本は、洗面台の指紋に着目した。 なぜなら、ホテルは通常、室内を清掃してから次の客を迎える。 つまり…清掃係が掃除した場所に付着している指紋は、新しい指紋であり、犯人のものである可能性が高いのだ。

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そして…洗面台から、関係者指紋と合致しない指紋が検出された。 その指紋を調べたところ…傷害歴のある男のものと一致。 その後、逮捕された男は犯行を認めた。
動機は痴情のもつれ。 ささいなことで言い合いになり、カッとなった男がタオルで女の首を絞め、殺害したという。 事件を速やかに解決へと導いたのは、塚本の鋭い洞察力だった。

『指紋ミステリー/File.II 指紋なき殺人事件』

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殺害現場に残された動かぬ証拠『指紋』を武器に、数々の難事件を解決してきた 塚本宇平だったが… 中にはその武器が使えないケースもあった。 なぜなら…そこには、犯人の指紋がなかったからである。

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1992年(平成4年)、現場となったのは、東京郊外のベッドタウン。 犯行時刻は正午過ぎ。 被害者はこの家に住む主婦。 鋭利な刃物で刺され、亡くなっていた。
部屋に荒らされた形跡がないことや、湯飲みに茶托が付いていることから、来客があったことが伺えるため、塚本は顔見知りの犯行だと推察した。 被害者の主婦は、招き入れた客人に突然 襲われ、殺害されたのだと思われた。

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塚本は、どちらかの湯飲みから犯人に繋がる指紋が出てくると考えた。 だが…湯飲みからは、被害者の指紋しか検出されなかった。 湯飲みの1つには、拭き取られたのか、指紋が残っていなかったのだ。 しかし…妙な痕が残っていた。 その痕を見た塚本は、犯人がわかったという。

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塚本によれば、犯人はこの家の改築職人で間違いないという。 実は、夫婦は最近まで海外で生活しており、日本に戻ってきたばかりだったという。 そして、しばらく家を空けていたため、痛んでいた部分を改修し、外壁も塗り替えていた。 しかし、それだけでなぜ改築職人が犯人だと言えるのだろうか?

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湯飲みに付着した痕。 それは…『軍手痕』だった。
軍手をして湯飲みに触れると、このように繊維の編み目の痕が付着するのだ。 この推理から間もなく、被害者の家の改装工事に携わっていた職人の男が逮捕された。

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その日、男はリフォーム後のメンテナンスのためにこの家を訪れていた。 リフォーム作業で家に出入りするうちに、主婦に好意を寄せていた男は、その思いが届かないと知るや…主婦を殺害。
男は無期懲役に処された。
驚異の洞察力でモノが語る真実を見抜く…塚本が神と賞される理由がここにある。