5月30日 オンエア
戦慄…恐怖の客人!? 家族の決断
 
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熊本県玉名市にある、とある一軒家。 この家を建てたのは、宗教家で冤罪被害者を救う活動を行なっていた、故・古川泰龍(たいりゅう)さん。 現在は息子の龍樹(りゅうじ)さんが管理している。
実は50年以上前、この古川家は、当時 国内を震撼させていたある事件に関わり、大きく報道された。 一家の決断は日本中から賞賛され、彼らは一躍 時の人となったのだ。

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それは今から55年前の正月。 突然鳴り響いた1本の電話から始まった。 東京で弁護士をしている川村という人物からの電話だった。 聞けば、その弁護士はこの家の主人で、冤罪被害者を救う活動を行なっている泰龍さんの支援をするため、東京からわざわざやってきて、近所の旅館に泊まっているという。 そして、川村弁護士が家を訪ねてきた。 だが、この奇妙な訪問をきっかけに…古川家は恐怖のどん底へと突き落とされることになる。

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川村弁護士は泰龍さんの支援者である大学教授や弁護士などとも懇意にしているということで、2人はあっという間に意気投合。 泰龍さんは、前日にあった奇妙な出来事も、これで吹き飛んだと喜んだ。

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実は、古川さん一家は前日の元旦まで旅行に行っていて、家を留守にしていた。 帰宅してポストを見てみると…毎年たくさん送られて来る年賀状がなぜか1枚も入っていなかったのだ。 不思議に思い、郵便局に問い合わせたところ、年賀状は間違いなく配達したという。

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泰龍さんは当時、福岡事件という冤罪の可能性が強く疑われる事件の解決に向け、私財をなげうって奔走していたのだが…事態はあまり進展していなかった。 そんな中、東京のエリート弁護士からの協力の申し出は、事件解決に人生をかけていた泰龍さんにとって、まさに天からの贈り物のような幸運だった。

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ところが…古川家の三女・瑠璃子ちゃんは、川村弁護士を見ると、突然家を飛び出し、どこかに走り出した。 そして…家に戻って来ると、母親に川村弁護士が連続殺人犯の西口彰にそっくりだと訴えた。 西口彰…それはのちに裁判官から「悪魔の申し子」と形容された戦後犯罪史上稀に見る凶悪で残忍な男の名前だった。

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16歳の頃から詐欺や窃盗を繰り返していた西口だったが…この3ヶ月前、ついに越えてはならない一線を越えてしまう。 2人の男性を相次いで殺害。 目的は…金だった。
現場に残された遺留品や目撃証言から、警察は犯人を西口と断定、全国に指名手配した。 しかし、西口はそんな警察をあざ笑うかのように、その逃亡生活の中で新たに3人を殺害。 計5人を手にかけた逃亡犯として、日本中を恐怖に陥れていた。

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その後、長女の愛子さんが手配書を確認、確かに川村と名乗る弁護士は、西口にそっくりだった。 さらに、手配書には、西口は右のおでこと頬に小さなアザがあると書かれていたと言う。 そして、母・美智子さんが男の顔を確認すると…男の顔には、アザがあった!
不安を覚えた美智子さんは、夫に経緯を説明した。 泰龍さん自身も手配書を見に行くと…男が西口だと確信。

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日本中を震え上がらせている連続殺人犯が、突然我が家へやって来た。 勘付かれる危険を考えると、すぐに警察へ向かうこともできなかった。 また、男のいた部屋は窓に囲まれ見晴らしが良かったため、仮に電話で通報し、警察がやってきたとしても、家に近づいてくる段階で気付かれる可能性もあった。 もし気付かれたら、何をしてくるかわからない。 こんな時、あなたならどうする!? 古川家が下した驚きの決断とは?

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なんと泰龍さんは、連続殺人犯かもしれない男を家に泊めると言い出した! この時、泰龍さんは宗教家として、自分や家族の安全よりも、西口にこれ以上の罪を犯させず確実に捕まえることが大事だと考え、連続殺人犯を自宅に泊めるという決断を下したのだ。

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しかし、相手は5人を殺して逃亡中の殺人犯。 泰龍さんは少しでも家族の安全を確保するため、先ずは全員を1つの部屋に集めると、部屋に鍵をつけることにした。 物音に気づかれないように、妻・美智子さんが、その間、西口の話し相手になることになった。

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こうして20分後、ようやく部屋に鍵が取り付けられた。 そして午後11時、男の部屋から明かりが消えたことを確認し、美智子さんと愛子さんはこっそりと家を抜け出し、警察へ向かった。 しかし、この時間に人数を集めるのに時間がかかるため、警察が来るのは翌朝になると言う。 こうして、恐怖の一夜はふけていった。

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当時、西口の目撃情報は、多数寄せられていたため、警察はまともに受け取ってくれていないのではないか? そして何より…西口は今、本当に寝ているのか? 1分1秒が永遠のように感じられた。 そして…午前4時過ぎ、ついに警察が到着した。

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そう、確かに当時 西口の目撃情報は全国から多数寄せられていた。 警察はその全てに対して即座に対応することはできなかったのだが、古川さんの通報をないがしろにしていたわけでもなかった。 今回、男が名乗ったという『川村 覚次(カワムラ カクジ)』という名前の弁護士を調べると…東京に実在するということが分かり、電話で確認。 すると、なんとこの日、本物の川村弁護士は東京の自宅にいたことがわかった。 つまり、今、熊本の古川家にいる人物は、間違いなく『川村覚次』ではない。

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西口の行動パターンから、すぐに犯行に及ばないと判断した警察は、朝になるのを待ち…男を任意同行。 その後、指紋などから西口本人と判明し、連続殺人犯、西口彰は逮捕された。

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逮捕後、西口のバッグの中から、その前日に盗まれた泰龍さん宛ての年賀状が発見された。 泰龍さんと親しい人を調べ、その名前を出すことで信用を得るために、盗み出したものだった。 目的は、泰龍さんの活動資金。 折を見て一家を皆殺しにし、金を奪ったのち、沖縄に逃亡する計画だったという。 お手柄となった古川さん一家は、その後、多くのメディアから引っ張りダコとなり、その勇気と決断を賞賛され一躍時の人となった。

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逮捕された日からおよそ2年後、西口の死刑が確定。 だが…実はその間、泰龍さんはずっと西口の家族と交流を続けていたという。 なんと、泰龍さんは西口の子供の学費を援助していたというのだ。 そして、獄中の西口も…死刑確定から4年後に刑が執行されるまで、幾度となく古川さんへの感謝を口にしていたという。