5月16日 オンエア
夢を追いかける少女 世界中に勇気を与えた行動とは?
 
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アメリカ・ミズーリ州に住むガビは、バレエに魅せられ、3歳からレッスンに通い始め、誰よりも熱心に練習した。 しかし、今から8年前。 9歳になったガビは、骨肉腫を発症。 骨肉腫とは、骨に悪性の腫瘍ができる病気。 痛みや腫れを伴い、進行すると歩行障害などの症状が現れる。 また 肺などに転移すると、呼吸障害を引き起こし、命に関わる場合もある。

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発育期の骨には、成長軟骨と呼ばれる軟骨層がある。 この軟骨層が伸び、硬くなっていくことで骨は成長するのだが…ガビの場合、軟骨がガンに冒されていたため、今後、骨の成長は見込めない状態だった。

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医師が提示した治療法は2つ。 1つ目は、ガン細胞におかされた成長軟骨を含む、太ももの中間から下を 手術で切断する方法。 2つ目は、足は切断せず、ガン細胞が広がった骨や組織を取り除き、人工関節や人工骨を導入する方法。 見た目は変わらず、日常生活にも支障はないが、膝に大きな負担がかかるスポーツには不向き… どちらにしてもバレエを続けることは不可能だった。

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踊れなくなることにショックを受けるガビ。 そこで、医師は回転形成術を受けてみないかと提案をした。 回転形成術とは、太ももからスネの中間までを切除。 その後、足首だけを180度反転。 神経と血管を保全し、つなぎ合わせる手術方法。 切除するのは、腫瘍部分だけではない。 反転した足の踵が、切断していない側の膝と同じ高さになるよう計算して、切りとる部分が決められる。 これにより 踵を膝として使えるようになるのだ。

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力を入れ 足首を伸ばすと、膝が伸びる。 逆に力を抜くと膝が曲がる。 通常の力の使い方とは逆だが…人工関節に比べ強度もあることから、慣れれば激しい動きも可能になる。 もう一度 バレエを踊れるようになる可能性があった。 しかし、唯一の欠点は、手術後の足の形だ。 見た目が大きく変わってしまうことを嫌って、手術を受けようとしない人や、受けても人前で足を見せなくなる患者も多いという。

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ガビは、もう一度バレエを踊れる可能性のある回転形成術を選んだ。 たとえ見た目が変わらず、ごく普通の生活を送れても…大好きなバレエが出来なければ意味がない。 それが、9歳の少女が出した答えだった。
手術を前に、転移を防ぐための化学療法が始まった。 抗ガン剤による副作用で髪の毛も抜けた。 しかし、ガビはいつも笑顔で耐えた。 もう一度踊るのだという強い意思が小さな体を支えていた。

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そして手術の日を迎えた。 骨・血管・神経、全てを慎重に繋がなくてはならない。 5時間にわたる手術は成功。
ガビの右足・太ももには、短くなった足が180度 逆さまにつけられた。 手術後、はじめて自分の足を見た時…覚悟していたとはいえ、彼女は大きなショックを受けた。 それでも彼女は、踊りたいと思った。

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ガビは すぐにリハビリを開始。 足首をヒザとして使うので、本来なら、義足は足首を伸ばした状態でつけるのだが、まずは 足の裏で支えられるタイプの義足を装着。 ヒザの代わりとなる足首に体重をかける訓練からはじめた。 そして、体重をかけられるようになると、いよいよ 足首を伸ばして入れるタイプの義足を装着。 その状態で歩くことに慣れていき…次は 足首をヒザと同じように使う訓練をはじめた。

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そして手術の翌年、ガビが10歳になった時、彼女は再びバレエの舞台に上がっていた。 車椅子に座り、上半身で踊るだけだったが、仲間たちはそんなガビを快く受け入れた。 ショーのラスト、義足をつけたガビは、みんなと手をつなぎ歩いて見せた。 しかし、それはガビの目指すゴールではなかった。

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踊りたいという、強い想いを胸にリハビリに取り組んだ彼女は、その後、驚異的な回復を見せる。 そして、手術から5年、14歳になった彼女は、新たな一歩を踏み出した。 本格的にバレエを踊るため、トゥシューズ用の義足を作ったのだ。

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夢に向かって邁進するガビ、そんな彼女に小児ガン研究の普及を目指す非営利団体から、広報大使に指名したいという話が舞い込んだ。 就任にあたり彼女は ある決断をする。 実は日本でも この手術を受けている人はいるが、公表していない人も多いという。 彼女も これまで ごく身近な人にしか、義足とソックスを外した姿は見せたことがなかった。

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しかし彼女は、見た目以上に大切なものがあることを訴えるため、自分のすべてを世界に向かってさらけ出し、発信することに決めたのだ。 14歳という多感な時期に、自らの全てを晒してでも彼女が伝えたかった一番大切なこと。 それは…「夢を実現して 絶対にあきらめないで」ということ。

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彼女の前向きな生き方は人々を惹きつけ、この動画は、わずか3日で2000万回という再生回数を記録した。 彼女の行動は、全米のみならず、ヨーロッパなどでも報じられ、多くの人々に勇気を与えた。 手術から8年、まだ 自分の納得のいく美しい踊りはできていないという彼女。 今も夢に向かって、日々 努力を続けている。

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現在 17歳となったガビさんは 高校3年生。 高校ではチアリーダーとして活躍、スクールライフを満喫している。 この日 彼女が自ら車を運転し、向かった先は…子供の頃から通っているダンススタジオ。 現在は 大会に向け創作ダンスの練習中。 母デビーさんも嬉しそうに見つめていた。

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小児がん研究を普及するための非営利団体、その広報大使として今も活動する彼女は、かつての自分と同じようにガンと戦う子供たちと会い、励まし続けている。 そんなガビさんには もう一つ、新たな夢ができたという。
「小児腫瘍科の看護師としてガンと闘う子供達のサポートをしたいです。」